ヒト組織長期維持SCIDマウスを用いた医薬品等の有効性、安全性評価システムの構築

文献情報

文献番号
201108008A
報告書区分
総括
研究課題名
ヒト組織長期維持SCIDマウスを用いた医薬品等の有効性、安全性評価システムの構築
課題番号
H21-政策創薬・一般-009
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
野村 大成(独立行政法人医薬基盤研究所 難病・疾患資源研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 梁 治子(独立行政法人医薬基盤研究所 難病・疾患資源研究部)
  • 小原 有弘(独立行政法人医薬基盤研究所 難病・疾患資源研究部)
  • 立花 功(大阪大学・医学系研究科)
  • 本行 忠志(大阪大学・医学系研究科)
  • 野々村 祝夫(大阪大学・医学系研究科)
  • 榎本 隆之(大阪大学・医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(政策創薬総合研究)
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
15,671,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、ヒト組織長期維持SCIDマウスを用いた医薬品等の有効性、安全性評価システムの構築によるヒト臨床がん、疾患組織等の継代維持と再生可能な形での凍結保存基盤技術を確立し、ヒトがんと正常組織の総括的ヒト組織維持システムの基盤技術を完成させる。データベース化等への発展を期するものであり、生きたヒト組織での医薬品等の有効性・安全性の研究、環境有害物質の人体影響評価に用いられ、国民の健康と医療・福祉に大きく貢献する。
研究方法
23年度研究計画・方法に従い、1)ヒト臓器・組織長期維持用SCIDマウスの維持・増産、 
2)各臓器に発生した原発腫瘍、転移性腫瘍の移植と継代維持と再生可能な形での凍結保存と形態・機能の変化の調査、特に不足している腎、腎盂、尿管、膀胱腫瘍の重点的移植、
3)血中PSAの微量測定、マイクロサテライト解析法を完成し、ヒト腫瘍の進展と自然遠隔転移を検出、同定、4)ルシフェラーゼ安定標識培養細胞を用いたがん進展のin vivo検出系の確立、5)ヒト正常組織・細胞の長期維持を行い、6)新たに、移植ヒトがん組織中のウィルス検査を追加する。
結果と考察
ヒト臨床がんの特性に応じ適切なSCIDマウスに移植することにより、継代維持、再生可能なかたちでの永久凍結保存を可能にできた。しかも、ヒト腫瘍の浸潤、遠隔転移もマイクロサテライト解析法を用いフォローすることができる。これまで不足していた腎、膀胱等泌尿器系腫瘍の移植もでき、全ての臓器腫瘍において確立するよう前進した。各ヒト腫瘍の持つ病態(形態、分子レベル)を併せることにより、医薬品等の有効性、安全性を評価する基盤となる。一方、正常、疾患組織の継代維持が可能なことから、放射線、環境有害物質の人体影響評価の基盤ともなる。
結論
本研究では、1)ヒト組織長期維持に最適のSCIDマウスの開発・使用、(2)各種ヒト腫瘍組織の再生可能な形での凍結保存、これまで未成功の前立腺がん、GIST等、新たなヒト臨床腫瘍組織の継代維持の成功、(3)ヒトがんの浸潤、遠隔転移の同定と解析、(4)ヒト培養がん細胞のin vivo進展の分析、(5)ヒト正常組織、胎児由来組織の継代維持、(6)移植ヒトがん組織でのウィルス検査について研究し、当初予定を上回る成果を得た。

公開日・更新日

公開日
2012-07-02
更新日
-

文献情報

文献番号
201108008B
報告書区分
総合
研究課題名
ヒト組織長期維持SCIDマウスを用いた医薬品等の有効性、安全性評価システムの構築
課題番号
H21-政策創薬・一般-009
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
野村 大成(独立行政法人医薬基盤研究所 難病・疾患資源研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 梁 治子(独立行政法人医薬基盤研究所 難病・疾患資源研究部)
  • 小原 有弘(独立行政法人医薬基盤研究所 難病・疾患資源研究部)
  • 立花 功(大阪大学・医学系研究科)
  • 本行 忠志(大阪大学・医学系研究科)
  • 野々村 祝夫(大阪大学・医学系研究科)
  • 榎本 隆之(大阪大学・医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(政策創薬総合研究)
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、ヒト組織長期維持SCIDマウスを用いた医薬品等の有効性、安全性評価システムの構築によるヒト臨床がん、疾患組織等の継代維持と再生可能な形での凍結保存基盤技術を確立し、ヒトがんと正常組織の総括的ヒト組織維持システムの基盤技術を完成させ、データベース化への発展を期するものであり、生きたヒト組織での医薬品等の有効性・安全性の研究、環境有害物質の人体影響評価に用いられ、国民の健康と医療・福祉に大きく貢献する。
研究方法
1)ヒト組織長期維持用SCIDマウスの維持・増産、2)各臓器の原発腫瘍、転移性腫瘍の移植、継代維持と再生可能な形での凍結保存、形態・機能の変化の調査、3)未成功の前立腺がん、GIST等、新たなヒト臨床腫瘍組織の継代維持と凍結保存、また、マウス血中PSAの微量測定、マイクロサテライト解析によるがんの浸潤、自然遠隔転移の確認、4)ルシフェラーゼ安定標識細胞を用いたがん進展のin vivo検出系の確立、5)ヒト正常組織・細胞の長期維持を行い、新たに、6)移植ヒトがん組織中のウィルス検査を追加した。
結果と考察
ヒト臨床がんの特性に応じ適切なSCIDマウスに移植、継代維持、再生可能なかたちでの永久凍結保存に成功し、凍結保存、再移植を繰り返しても、組織像、機能、遺伝子発現に変化がないことを確認し、ヒト腫瘍の浸潤、遠隔転移もマイクロサテライト解析によりフォローできた。全ての臓器腫瘍において、その臨床所見、病態(形態、分子レベル)を併せることにより、医薬品等の有効性、安全性評価のデータベース作成の基盤となる。一方、正常、疾患組織の継代維持により、放射線、環境有害物質の人体影響評価の基盤ともなる。
結論
本研究では、1)ヒト組織長期維持に最適のSCIDマウスの開発・使用、2)各種ヒト腫瘍組織の再生可能な形での凍結保存、3)これまで未成功の前立腺がん、GIST等、新たなヒト臨床腫瘍組織の継代維持の成功と凍結保存、さらに、ヒトがんの浸潤、遠隔転移の同定と解析、4)ヒト培養がん細胞のin vivo進展の分析、5)ヒト正常組織、胎児由来組織の継代維持、6)移植ヒトがん組織でのウィルス検査について研究し、生きたヒト組織での医薬品等の有効性・安全性の研究、環境有害物質の人体影響評価システム構築の基盤として、当初予定を超える成果を得た。

公開日・更新日

公開日
2012-07-02
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201108008C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究では、1)ヒト組織長期維持に最適のSCIDマウスの開発、2)これまで移植不能とされたヒト組織の移植、継代維持、3)各種ヒト腫瘍組織の再生可能な凍結保存、4)凍結、再移植による組織像、機能、遺伝子発現に変化がないことの実証、5)ヒト正常組織、胎児由来組織の継代維持の成功により生きたヒト組織での医薬品等の有効性・安全性の研究のための人体影響評価システム構築に貢献した。H27年度までにPDX200件を樹立し、移植組織1433例のマイクロサテライト解析、PDX100件のがん遺伝子変異を解析した。
臨床的観点からの成果
これまで未成功の前立腺がん、GIST等の継代維持に成功し、マウス体内でのヒトがんの浸潤、遠隔転移の同定と解析を可能にし、安全な前臨床試験のためウィルス検査も行った。これにより、患者の臨床所見、経過、病態(形態、分子レベル)を併せデータベース化を計る、最先端の創薬研究の基盤技術を完成させる。27年度もがん、正常組織を新たに移植を行い、27年度までに200症例の臨床がんPDX作成に成功している。
ガイドライン等の開発
現在のところ審議会等で参考にされたかどうか確認できていない。
医薬品開発のための有効かつエラーのない前臨床試験の最終兵器として患者由来組織移植SCIDマウス(Patient-derived xenograft-SCID; PDX)の重要性を提唱し、国際的に認識されている。
その他行政的観点からの成果
培養細胞等を用いた前臨床試験では有効であっても、臨床試験では無効なことが多々あり、単に、開発費等の人的、時間的、経済的損失のみならず、結果として、不要な治験(人体実験)を避け、人体組織そのものにより近いPDXの使用は倫理上の問題点を解決することができる。
その他のインパクト
1) NHK国際ニュース;「放射線の遺伝的影響研究」 2012年8月6日, 他12件
2)「きぼうでマウス飼育」、日経新聞。2012年11月26日
3)テレビ朝日報道ステーション;「被爆二世の願い、そして未来」、2013年8月8日
4)「安全の哲学」。Voice of Russia-モスクワ、2013年10月28日
5) フランス国営テレビ「福島の未来」日本語版2014年12月
6)日露2国間交流事業国際シンポジウム 2015年6月12日

発表件数

原著論文(和文)
20件
原著論文(英文等)
141件
2009-2011年度内になされた本課題の研究に対して、厚労科研による旨論文中に明記するよう分担研究者にあらためて指示した。
その他論文(和文)
2件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
32件
学会発表(国際学会等)
31件
厚労科研によることを記載したもの9件
その他成果(特許の出願)
3件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

特許の名称
チロシナーゼ誘導抑制剤及びメラニン合成抑制剤
詳細情報
分類:
特許番号: 特願2012-249917
発明者名: 竹森 洋、熊谷 彩子、森田 純子、渕野 裕之、川原 信夫、飯田 修、杉村 康司、志賀 幸生、鎌田 文広、香月 茂樹、河原 秀久、長岡 康夫
権利者名: 株式会社桃谷順天館
出願年月日: 20121114
特許の名称
カスパーゼ1活性化阻害剤、抗炎症剤、鎮痒剤、及びカスパーゼ1活性化阻害剤の評価方法
詳細情報
分類:
特許番号: 特願2013-094995
発明者名: 竹森 洋、佐野坂真人、伊東祐美、渕野裕之、川原信夫
特許の名称
プテロシン誘導体を含む軟骨変性、および/または軟骨菲薄疾患治療剤
詳細情報
分類:
特許番号: 特願2013-135040
発明者名: 妻木範行、竹森 洋、渕野裕之、川原信夫

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Shigeki Adachi, Haruko Ryo, Taisei Nomura, et al.
Effects of fission neutrons on human thyroid tissues maintained in SCID mice.
Mutation Research , 696 , 107-113  (2010)
原著論文2
Taisei Nomura
Biological consequences and health concerns from low-dose and low-dose-rate radiation in mice and humans
Health Physics. , 100 , 266-268  (2011)
原著論文3
Sumiyo Mimura, Akihiro Kohara, Miho K. Furue, et al.
Growth factor-defined culture medium for human mesenchymal stem cells.
Int. J. Dev. Biol. , 55 (2) , 181-187  (2011)
原著論文4
Kazuya Nakajo, Takayuki Enomoto, Jun Hatazawa, et al.
Diagnostic performance of fluorodeoxyglucose positron emission tomography/magnetic resonance imaging fussion iamges of gynecological malignant tumors: comparison with positron emission tomography/computed tomography.
Jpn. J. Radiol. , 28 , 95-100  (2010)
原著論文5
Dillip Kumar Parida, Koji Wakame, Taisei Nomura.
Integrating Complimentaly and Alternative Medicine in Form of Active Hexose Co-Related Compound (AHCC) in the Management of Head & Neck Cancer Patients.
International Journal of Clinical Medicine , 2 , 588-592  (2011)
原著論文6
Yogo A., Maeda T., Murakami M., Nomura T., et al
Measurement of relative biological effectiveness of protons in human cancer cells using a laser-driven quasimonoenergetic proton beamline.
APPLIED PHYSICS LETTERS , 98 , 053701-  (2011)
原著論文7
菅三佳、小原有弘、古江-楠田美保、他
ヒト多能性幹細胞の命名法の国際統一規格案について
再生医療 , 11 (1) , 2-8  (2011)
原著論文8
Iwamori M, Adachi S, Nomura T., et al
Excretion into feces of asialo GM1 in the murine digestive tract and Lactobacillus johnsonii exhibiting binding ability toward asialo GM1. A possible role of epithelial glycolipids in the discharge of intestinal bacteria.
Glycoconj J. , 28 , 21-30  (2011)
原著論文9
野村大成、足立成基、梁治子、他 
宇宙環境の人体影響評価と防護に関する研究;放射線晩発影響の防護
Space Util. Res. , 28 (1) , 126-129  (2012)
原著論文10
Koji Hatano, Norio Nonomura, Yasufumi Kaneda, et al.
Androgen-Regulated Transcriptional Control of Sialyltransferases in prostate Cancer Cells.
PLoS ONE , 7 (2) , 1-13  (2012)
原著論文11
Tamaki Y, Yoshidome K, et al
Routine clinical use of the one-step nucleic acid amplication assay for detection of sentinel lymph node metastases in breast cancer patients: results of a multicenter study in Japan; Japanese One-Step Nucleic Acid Amplication Study Group.
Cancer , 15 , 3477-3483  (2012)
原著論文12
Iwamori M, Adachi S, Nomura T, et al
Bacterial species-characteristic profiles of molecular species, and the antigenicity of phospholipids and glycolipids in symbiotic Lactobacillus, Staphylococcus and Streptococcus species
Glycoconj J , 29 (4) , 199-209  (2012)
原著論文13
野村大成
安全の哲学【良心・良識】
環 , 49 , 175-179  (2012)
原著論文14
野村大成
がんの予防シリーズ(4)「人の放射線発がんの予防」
安田記念医学財団  (2013)
原著論文15
野村大成
孫以降の世代にもガンを起こす。
食品と暮らしの安全 , 281 , 7-12  (2012)
原著論文16
Masao Iwamori, Shigeki Adachi, Taisei Nomura et al
Enhanced expression of fucosyl GA1 in the digestive tract of immune-deficient scid, nude and IgR (-/-) mice.
J. Biochem , 154 (6) , 541-549  (2013)
原著論文17
Masao Iwamori, Shigeki Adachi, Taisei Nomura. et al.
Changes in bacterial glycolipids as an index of intestinal lactobacilli and epithelial glycolipids in the digestive tracts of mice after administration of penicillin and streptomycin
Glycoconj J , 30 (9) , 889-897  (2013)
原著論文18
Ayako Kumagai, Haruko Ryo, Taisei Nomura, et a.
Altered Actions of Memantine and NMDA-Induced Currents in a New Grid2-Deleted Mouse Line.
Genes. , 5 (4) , 1095-1114  (2014)
10.3390/genes5041095
原著論文19
Akira Tsujimura, Norio Nonomura, Shigeki Adachi, Yoriko Tokita, Taisei Nomura, et al.
Histological Evaluation of Human Benign Prostatic Hyperplasia Treated by Dutasteride: A Study by Xenograft Model with Improved Severe Combined Immunodeficient (Super-SCID) Mice.
Urology , 85 , 274-282  (2015)
原著論文20
Iwamori M, Tanaka K, Adachi S, Aoki D, Nomura
Absence of lactobacilli containing glycolipids with the α-galactose epitope and the enhanced fucosylation of a receptor glycolipid GA1 in the digestive tracts of immune-deficient scid mice.
J. Biochem. J , 87 (4) , 491-494  (2015)

公開日・更新日

公開日
2015-05-27
更新日
2017-06-20

収支報告書

文献番号
201108008Z