レチノイド関連化合物の消化管免疫疾患への治療応用

文献情報

文献番号
201108006A
報告書区分
総括
研究課題名
レチノイド関連化合物の消化管免疫疾患への治療応用
課題番号
H21-政策創薬・一般-007
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
土肥 多惠子(独立行政法人 国立国際医療研究センター 研究所 肝炎免疫研究センター 消化器疾患研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 首藤紘一(財団法人乙卯研究所)
  • 日比 紀文(慶應義塾大学医学部内科学(消化器))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(政策創薬総合研究)
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
10,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
レチノイドとはビタミンAと同等の活性を持つ化合物群、あるいは レチノイン酸受容体(RAR)に結合する化合物を示す。本研究はAm80をはじめとする合成レチノイドを炎症性腸疾患をはじめとする免疫疾患への応用を促進することを目的としている。
研究方法
Am80および新規合成レチノイド化合物、低分子化合物ライブラリーから探索した化合物の、特にマクロファージケモタキシスへの作用を試験しその抗炎症効果について検証した。さらに、AM80連続投与後の効果の持続性についてもマウスを用いて検証を行った。さらに化合物を用いて腹腔内炎症モデル、大腸炎モデルの抑制能についても試験を行った。計画していたAm80のクローン病での臨床試験は厚労省からの指示により中止となった。
結果と考察
合成レチノイド化合物を含む6種の低分子化合物でケモタキシス阻害効果が見られ、腹腔内炎症や大腸炎モデルなどin vivo炎症モデルにおいても、Am80をしのぐ炎症抑制効果をもつ化合物が得られた。また、Am80は連続投与によって強い免疫修飾効果(Th1応答抑制)が得られ、投与終了後も遷延効果の見られることが明らかとなった。Am80に勝る新規構造のレチノイドとして、タミバロテンのプロドラッグM700を合成し、その体内動態をラットで試験した。M700は十分にタミバロテンに代替のできる新規化合物であり、自己免疫疾患及びそのほかの難治性疾患の治療薬として更なる研究開発の意義があると考える。また、Am80のクローン病の新規治療薬としての可能性を樹状細胞の機能制御の面から検討した。健常人由来の末梢血中単球をAm80存在下で分化させると、IL-12低産生の樹状細胞が誘導され、さらにナイーブT細胞をTh1へ誘導する能力も低下していた。
結論
これらの成績は、Am80が自然免疫・獲得免疫の両面から免疫能に影響を与え、クローン病の病態の中心をなすTh1反応を抑制する効果を持つことを示すものと考えられる。またAm80以外にもin vitro, in vivo Am80と同等あるいは優位性を持つ、抗炎症作用を持つ合成レチノイド・プロドラッグ、低分子化合物がえられた。

公開日・更新日

公開日
2012-07-02
更新日
-

文献情報

文献番号
201108006B
報告書区分
総合
研究課題名
レチノイド関連化合物の消化管免疫疾患への治療応用
課題番号
H21-政策創薬・一般-007
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
土肥 多惠子(独立行政法人 国立国際医療研究センター 研究所 肝炎免疫研究センター 消化器疾患研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 首藤 紘一(財団法人乙卯研究所)
  • 日比 紀文(慶應義塾大学医学部内科学(消化器))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(政策創薬総合研究)
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
レチノイドとはビタミンAと同等の活性を持つ化合物群、あるいは レチノイン酸受容体(RAR)に結合する化合物を示す。本研究はRARアゴニストであるAm80をはじめとする合成レチノイドを炎症性腸疾患をはじめとする免疫疾患への応用を促進することを目的としている。
研究方法
Am80の他にも受容体選択性の高い新規合成レチノイドを合成し、さらに低分子化合物ライブラリーからスクリーニングを行って抗炎症作用を持つ化合物を探索した。これらの化合物の、免疫系への作用をマウスおよびクローン病患者を含むヒト由来の細胞で試験を行った。In vitroでの試験に加えて、マウス腹腔内炎症モデル、大腸炎モデルの抑制能についても試験を行った。計画していたAm80のクローン病での臨床試験は厚労省からの指示により中止となった。
結果と考察
合成レチノイド化合物を含む低分子化合物で、マクロファージからの炎症性サイトカイン産生抑制活性を持つもの、ケモタキシス阻害効果をもつものが得られ、in vivo炎症モデルにおいても、Am80をしのぐ炎症抑制効果をもつ化合物が得られた。また、Am80は連続投与によって強い免疫修飾効果(Th1応答抑制)が得られ、投与終了後も遷延効果の見られることが明らかとなった。また、Am80に勝る新規構造のレチノイドとして、Am80のプロドラッグM700を合成し、その体内動態などを試験しAm80と同等の活性があると考えられた。Am80のクローン病の新規治療薬としての可能性を樹状細胞の機能制御の面から検討し、健常人由来の末梢血中単球をAm80存在下で分化させると、IL-12低産生の樹状細胞が誘導され、さらにナイーブT細胞をTh1へ誘導する能力も低下していた。
結論
本研究で得られた成績は、Am80が自然免疫・獲得免疫の両面から免疫能に影響を与え、クローン病の病態の中心をなすTh1反応を抑制する効果を持つことを示すものと考えられる。また、本研究成果として新たに得られたM700はじめ、新規合成レチノイド、およびスクリーニングで得られた化合物も十分にAm80に代替のできる新規化合物であり、自己免疫疾患及びそのほかの難治性疾患の治療薬として更なる研究開発の意義があると考えている。

公開日・更新日

公開日
2012-07-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2013-02-18
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201108006C

成果

専門的・学術的観点からの成果
合成レチノイドAm80の免疫系における作用について、ヒト樹上細胞に対する作用、炎症細胞のケモタキシスおよびサイトカイン産生の抑制効果などの基礎的な新規知見に加え、連続投与後の効果の遷延性についても初めて明らかにした。また、受容体選択制の高い合成レチノイド、プロドラッグの合成に成功し、さらに低分子化合物ライブラリーのスクリーニングによってあらたな創薬シーズを提供した点が、専門的・学術的観点からの成果である。
臨床的観点からの成果
Am80の作用機転について、新たな知見を加え、さらに連続投与後の効果の遷延性についても初めて明らかにしたことは、投与方法の決定に際して重要な成果である。
ガイドライン等の開発
該当無し
その他行政的観点からの成果
該当無し
その他のインパクト
低分子化合物の抗炎症効果についての発表が、アメリカ消化器病学会(DDW2011)にて 上位 10パーセントの演題に与えられるPoster of Distinctionに選ばれた。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
26件
その他論文(和文)
6件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
5件
学会発表(国際学会等)
4件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Sujino T, Kanai T, Ono Y, et al.
Regulatory T Cells Suppress Development of Colitis, Blocking Differentiation of T-Helper 17 Into Alternative T-Helper 1 Cells.
Gastroenterology  (2011)
原著論文2
Ichikawa R, Takayama T, Yoneno K, et al.
Bile acids induce monocyte differentiation toward IL-12 hypo-producing dendritic cells via a TGR5-dependent pathway.
Immunology  (2012)
原著論文3
H.Matsushita, M.Hijioka, A.Hisatsune, et al.
Natural and synthetic retinoids afford therapeutic effects on intracerebral hemorrhage in mice.
Eur. J. Pharmacol  (2012)
原著論文4
Kawashima R, Kawamura YI, Oshio T, et al.
Interleukin-13 Damages Intestinal Mucosa via TWEAK and Fn14 in Mice-A Pathway Associated With Ulcerative Colitis
Gastroenterology  (2011)
原著論文5
Kamada N, Hisamatsu T, Honda H, et al.
Human CD14+ macrophages in intestinal lamina propria exhibit potent antigen-presenting ability.
J Immunol.  (2009)
原著論文6
Takayama T, Kamada N, Chinen H, et al.
Imbalance of NKp44(+)NKp46(-) and NKp44(-)NKp46(+) natural killer cells in the intestinal mucosa of patients with Crohn's disease. 
Gastroenterology  (2010)
原著論文7
Naruse H, Hisamatsu T, Yamauchi Y, et al.
Intracellular bacteria recognition contributes to maximal interleukin (IL)-12 production by IL-10-deficient macrophages.
Clin Exp Immunol.  (2011)
原著論文8
Kurauchi Y, Hisatsune A, Isohama Y, et al.
Midbrain dopaminergic neurons utilize nitric oxide/cyclic GMP signaling to recruit ERK that links retinoic acid r eceptor stimulation to up-regulation of BDNF.
J Neurochem.  (2011)
原著論文9
H. Matsushita, M.Hijioka, A.Hisatsune, et al.
A retinoic acid receptor agonist Am80 rescues neurons, attenuates inflammatory reactions and improves behabioral recovery after intracerevral hemorrhage in mice
J.Cerebral Blood Flow & Metabolism  (2010)
原著論文10
Suzuki H, Utsunomiya I, Shudo K
Synthesis and application of [1,2,5]triazepane and [1,2,5]oxadiazepane as versatile structural units for drug discovery
Chem Pharm Bull (Tokyo).  (2010)
原著論文11
Oshio T, Kawashima R, Kawamura YI, Hagiwara T
Chemokine Receptor CCR8 Is Required for Lipopolysaccharide-Triggered Cytokine Production in Mouse Peritoneal Macrophages.
PLOS ONE  (2014)
原著論文12
Wada Y, Hisamatsu T, Kamada N, et al.
Retinoic acid contributes to the induction of IL-12-hypoproducing dendritic cells.
Inflamm Bowel Dis  (2009)
原著論文13
Sakuraba A, Sato T, Kamada N, et al.
Th1/Th17 immune response is induced by mesenteric lymph node dendritic cells in Crohn's disease.
Gastroenterology  (2009)
原著論文14
Kamada N, Hisamatsu T, Honda H, et al.
TL1A produced by lamina propria macrophages induces Th1 and Th17 immune responses in cooperation with IL-23 in patients with Crohn's disease.
Inflamm Bowel Dis.  (2010)
原著論文15
Takada Y, Hisamatsu T, Kamada N, et al.
Monocyte chemoattractant protein-1 contributes to gut homeostasis and intestinal inflammation by composition of IL-10-producing regulatory macrophage subset.
J Immunol.  (2010)
原著論文16
Miwako I, Shudo K.
Oral administration of synthetic retinoid Am80 inhibits the development of type 1 diabetes in non-obese diabetic (NOD) mice
Biol Pharm Bull.  (2009)
原著論文17
Klemann C, Raveney BJ, Klemann AK, et al.
Synthetic retinoid AM80 inhibits Th17 cells and ameliorates experimental autoimmune encephalomyelitis.
Am J Pathol.  (2009)
原著論文18
Katsuki H, Kurimoto E, Takemori S, et al.
Retinoic acid receptor stimulation protects midbrain dopaminergic neurons from inflammatory degeneration via BDNF-mediated signaling.
J Neurochem.  (2009)
原著論文19
Kawahara K, Nishi K, Suenobu M, et al.
Oral administration of synthetic retinoid Am80 (Tamibarotene) decreases brain beta-amyloid peptides in APP23 mice.
Biol Pharm Bull.  (2009)
原著論文20
Dohi T, Borodovsky A, Wu P, et al.
TWEAK/Fn14 Pathway: a nonredundant role in intestinal damage in mice through a TWEAK/ intestinal epithelial cell axis
Gastroenterology  (2009)

公開日・更新日

公開日
2015-06-16
更新日
2017-06-20

収支報告書

文献番号
201108006Z