安全なヒトiPS細胞を用いたテーラーメイド血液細胞の作成に関する研究

文献情報

文献番号
201108002A
報告書区分
総括
研究課題名
安全なヒトiPS細胞を用いたテーラーメイド血液細胞の作成に関する研究
課題番号
H21-政策創薬・一般-003
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
湯尾 明(独立行政法人 国立国際医療研究センター 研究所 疾患制御研究部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(政策創薬総合研究)
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
3,825,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
血液成分の輸注は現代医療において不可欠であるが、ボランティアからの供給には限りがあり、感染症の媒体となる危険も有る。従って、クリーンな環境で安定して血液細胞成分を生成する技術を開発していくことは極めて重要である。また、骨髄の造血幹細胞から血液細胞成分を増幅する試みは長年研究されてきたが、造血幹細胞は体外では充分に増幅しないことも確認された。これらのことを踏まえて、本研究では無限増殖能を有するヒトiPS細胞から無フィーダー環境において血液細胞産生を試みた。
研究方法
細胞は、京都大学で樹立されたヒトiPS細胞(201B7、253G1)、ならびに、国立成育医療研究センターで樹立されたヒトiPS細胞(#25)を用いた。また、新生児皮膚由来線維芽細胞BJ、HUVEC、ヒト血液細胞から樹立した安全なヒトiPS細胞も用いた。血液細胞分化培養においては、前半の細胞凝集塊(sphere)形成に引き続いて後半の接着平面培養に移行する2段階無フィーダー培養を試みた。
結果と考察
敷石状の細胞の増殖、中心部での嚢状構造物の形成を経て、血液細胞が産生された。産生された血液細胞は比較的分化した骨髄系の細胞で、好中球とマクロファージを多く含んでいた。動物由来成分の排除については無血清培養に成功し、赤芽球誘導条件を加味して赤芽球の誘導にも成功した。さらに、ヒトiPS細胞由来の好中球(マクロファージ)の日和見感染緑膿菌敗血症モデルマウスへの治療効果が見られた。また、センダイウイルスベクターを用いて樹立した安全なヒトiPS細胞も用いて好中球分化に成功した。
結論
様々なヒトiPS細胞を用いて、高効率な2段階無フィーダー血液細胞分化誘導法を確立した。

公開日・更新日

公開日
2012-07-02
更新日
-

文献情報

文献番号
201108002B
報告書区分
総合
研究課題名
安全なヒトiPS細胞を用いたテーラーメイド血液細胞の作成に関する研究
課題番号
H21-政策創薬・一般-003
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
湯尾 明(独立行政法人 国立国際医療研究センター 研究所 疾患制御研究部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(政策創薬総合研究)
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
血液成分の輸注は現代医療において不可欠であるが、ボランティアからの供給には限りがあり、感染症の媒体となる危険も有る。従って、クリーンな環境で安定して血液細胞成分を生成する技術を開発していくことは極めて重要である。また、骨髄の造血幹細胞から血液細胞成分を増幅する試みは長年研究されてきたが、造血幹細胞は体外では充分に増幅しないことも確認された。これらのことを踏まえて、本研究では無限増殖能を有するヒトiPS細胞から無フィーダー環境において血液細胞産生を試みた。
研究方法
細胞は、京都大学で樹立されたヒトES細胞(KhES-3)、ヒトiPS細胞(201B7、253G1)、ならびに、国立成育医療研究センターで樹立されたヒトiPS細胞(#25)を用いた。また、新生児皮膚由来線維芽細胞BJ、HUVEC、ヒト血液細胞から樹立した安全なヒトiPS細胞も用いた。血液細胞分化培養においては、前半の細胞凝集塊(sphere)形成に引き続いて後半の接着平面培養に移行する2段階無フィーダー培養を試みた。
結果と考察
研究開始当初は、ヒトiPS細胞のみではなくヒトES細胞も用いて、3種類の血球分化誘導法の比較と組み合わせを検討して培養条件の至適化を行った。敷石状の細胞の増殖、中心部での嚢状構造物の形成を経て、血液細胞が産生された。産生された血液細胞は比較的分化した骨髄系の細胞で、好中球とマクロファージを多く含んでいた。更に好中球産生を改善するために、低細胞密度分化誘導培養を行い嚢状構造体を経ずに高純度の好中球産生も実現した。動物由来成分の排除については無血清培養に成功し、赤芽球誘導条件を加味して赤芽球の誘導にも成功し、多能性造血幹細胞誘導につながる成果を得た。さらに、ヒトiPS細胞由来の好中球(マクロファージ)の日和見感染緑膿菌敗血症モデルマウスへの治療効果が見られた。また、センダイウイルスベクターを用いて樹立した安全なヒトiPS細胞も用いて好中球分化に成功した。
結論
様々なヒトiPS細胞を用いて、高効率な2段階無フィーダー血液細胞分化誘導法を確立した。

公開日・更新日

公開日
2012-07-02
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201108002C

成果

専門的・学術的観点からの成果
前半のsphere形成浮遊培養と後半の平面接着培養からなる独自の2段階無フィーダー分化誘導法を駆使して、ヒトiPS細胞から好中球分化と(赤芽球系も共存する)多系列血球分化を、達成した。分化培養の量的な効率と誘導された血球の質に関して、ヒトES細胞から分化誘導したものと比べて遜色はなかった。しかしながら、分化培養の量的な効率が低く、これを改善することが依然として困難である。
臨床的観点からの成果
ウイルスベクターフリーの安全なヒトiPS細胞から、動物成分(マウス支持細胞や牛胎児血清)を排除した血液細胞を産生することに成功し、移植材料としての安全性の確保という観点において大きく前進した。
ガイドライン等の開発
本研究での成果は、現時点では基礎的な段階にあり、何らかのガイドライン等の策定につながる行政効果は得られていない。
その他行政的観点からの成果
現時点では、得られていない。
その他のインパクト
現時点では、特記すべきものはない。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Gokoh M, Nakamura N, Matsuyama S, et al.
Early senescence is not an inevitable fate of human induced pluripotent stem-derived cells.
Cellular Reprogramming , 13 , 361-370  (2011)

公開日・更新日

公開日
2015-05-27
更新日
2017-06-20

収支報告書

文献番号
201108002Z