黄斑変性カニクイザルを用いた補体抑制による加齢黄斑変性の予防薬の開発

文献情報

文献番号
201108001A
報告書区分
総括
研究課題名
黄斑変性カニクイザルを用いた補体抑制による加齢黄斑変性の予防薬の開発
課題番号
H21-政策創薬・一般-002
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
岩田 岳(独立行政法人国立病院機構東京医療センター 臨床研究センター 分子細胞生物学研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 岡田 秀親(株式会社蛋白科学研究所 アレルギー学)
  • 吉川 泰弘(北里大学獣医学部)
  • 村上 晶(順天堂大学医学部眼科学教室 眼科学)
  • 溝田 淳(帝京大学医学部眼科学教室 眼科学)
  • 安川 力(名古屋市立大学大学院医学研究科 眼科学)
  • 臼倉 治郎(名古屋大学エコトピア科学研究所 機能形態学)
  • 阿部 俊明(東北大学医学部系研究科 細胞治療 眼科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(政策創薬総合研究)
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
25,847,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
加齢黄斑変性は加齢、遺伝子、環境等によって発症する多因子性疾患と考えらえている。その直接的な原因として網膜における補体の活性化がある。補体の活性化の原因はまだ詳細には明らかにされていないが、補体の活性化を抑制することにより、加齢黄斑変性の発症を遅延あるいは予防・治療できると考えられる。本研究では補体活性経路のC5aあるいはその下流のC3bの活性化に注目し、2種類の補体抑制薬AcPepAとCompstatinについて、薬効を評価した。モデル動物としては委縮型加齢黄斑変性の初期病態に類似する霊長類医科学研究センターの黄斑変性カニクイザルを用いた。カニクイザルはヒトと同様に黄斑などの高等霊長類にのみ存在する眼球構造を持つ。
研究方法
補体活性経路である古典経路、2次経路、レクチン経路が合流する補体因子C3bを特異的に抑制するコンプスタチンを硝子体投与してドルーゼンの消失が観察された。さらに、C3bの下流に位置し、生体内での分子数がC3bよりも少ないC5aをターゲットとする抑制薬AcPepAを用いた薬効試験が行われた。補体抑制薬は徐放剤の硝子体あるいは強膜への挿入によって行われ、それぞれの効果をドルーゼンの数や形によって判定した。徐放剤はそれぞれの薬に対して異なる徐放剤が考案され、試験された。
結果と考察
本研究によって局所的な補体抑制によって加齢黄斑変性の初期病態を遅延あるいは逆行することを確認することができた(Chi et al, Adv Exp Med Biol 2010)。加齢黄斑変性は高齢者で発症する病気であり、薬によって介入する時間が十分にある。その一方、副作用を抑えるために補体抑制は網膜周辺の局所で行うことが求められ、またこれを長期間にわたって実施する必要性があることから、小型で数年間の徐放効果が期待できる徐放剤の開発が求められる。本研究ではその開発の基礎となる情報が得られたと考えられる。また、今回使用したペプチドの補体抑制薬は分解時間が短く、この問題を解決する必要がある。
結論
平成23年度は2種類の補体抑制薬について、2種類の徐放剤が開発され、加齢黄斑変性の初期病態を遅延あるいは逆行させることが確認された。薬や徐放剤のさらなる改良によって実用化の段階に入ると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2012-07-02
更新日
-

文献情報

文献番号
201108001B
報告書区分
総合
研究課題名
黄斑変性カニクイザルを用いた補体抑制による加齢黄斑変性の予防薬の開発
課題番号
H21-政策創薬・一般-002
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
岩田 岳(独立行政法人国立病院機構東京医療センター 臨床研究センター 分子細胞生物学研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 岡田 秀親(株式会社蛋白科学研究所 アレルギー学)
  • 吉川 泰弘(北里大学獣医学部)
  • 村上 昌(順天堂大学医学部眼科学教室 眼科学)
  • 溝田 淳(帝京大学医学部眼科学教室 眼科学)
  • 安川 力(名古屋市立大学・大学院医学研究科 眼科学)
  • 臼倉 治朗(名古屋大学エコトピア科学研究所 機能形態学)
  • 阿部 俊明(東北大学医学系研究科 細胞治療・眼科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(政策創薬総合研究)
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は加齢黄斑変性の病態初期に類似する世界で唯一の霊長類モデルを用いて補体抑制薬の加齢黄斑変性への予防・治療効果を検証することを目的とする。独立行政法人国立医薬基盤研究所霊長類医科学研究センターで発見された黄斑変性カニクイザルはヒトと同様に網膜での補体活性化が観察された。この炎症反応を抑制することによって加齢黄斑変性の発症を遅延あるいは改善されることが予想される。補体活性経路である古典経路、2次経路、レクチン経路が合流する補体因子C3bを特異的に抑制するコンプスタチンを硝子体投与してドルーゼンの消失が観察された(Chi et al, Adv Exp Med Biol 2010)。さらに、C3bの下流に位置し、生体内での分子数がC3bよりも少ないC5aをターゲットとする抑制薬AcPepAを用いた薬効試験を続いて開始した。
研究方法
補体活性経路である古典経路、2次経路、レクチン経路が合流する補体因子C3bを特異的に抑制するコンプスタチンを硝子体投与してドルーゼンの消失が観察された(Chi et al, Adv Exp Med Biol 2010)。さらに、C3bの下流に位置し、生体内での分子数がC3bよりも少ないC5aをターゲットとする抑制薬AcPepAを用いた薬効試験が行われた。補体抑制薬は静注、硝子体投与、徐放剤の硝子体あるいは強膜への挿入によって行われ、それぞれの効果をドルーゼンの数や形によって判定した。徐放剤はそれぞれの薬に対して異なる徐放剤が開発された。
結果と考察
本研究によって局所的な補体抑制によって加齢黄斑変性の初期病態を遅延あるいは逆行することを確認することができた。加齢黄斑変性は高齢者で発症する病気であり、薬によって介入する時間が十分にある。その一方、副作用を抑えるために補体抑制は網膜周辺の局所で行うことが求められ、またこれを長期間にわたって実施する必要性があることから、小型で数年間の徐放効果が期待できる徐放剤の開発が求められる。本研究ではその開発の基礎となる情報が得られたと考えられる。また、今回使用したペプチドの補体抑制薬は分解時間が短く、この問題を解決する必要がある。
結論
本研究では加齢黄斑変性の予防・治療薬の開発を目的に補体抑制薬の選別、投与方法の検討、さらには徐放剤の開発を行った。2種類の補体抑制薬と2種類の徐放剤によって加齢黄斑変性の初期病態を遅延あるいは逆行させることを確認した。薬や徐放剤のさらなる改良によって補体抑制による加齢黄斑変性の予防・治療は実用化の段階に入ると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2012-07-02
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201108001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
全ゲノム相関解析によって補体関連遺伝子と加齢黄斑変性は強く相関することが明らかになってきた。さらに加齢黄斑変性の患者において、網膜下の補体活性化が観察されている。これらの観察結果から加齢黄斑変性の発症機序に補体が関係すると考えられ、これを抑制することによって、予防や治療効果が得られると考えられる。
臨床的観点からの成果
委縮型加齢黄斑変性に対してこれまで適切な薬が存在しなかったが、今回の霊長類動物モデルの実験によって補体抑制によるドルーゼンの抑制効果が確認された。しかしながら抑制効果は補体活性化経路の初期よりも終期を対象にすることによって、より少量の薬でより効果が得られると考えられる。さらに長期的な徐放も必要であり、薬の改良が求められる。我々が手掛けた薬は米国で第2相の治験が行われている。
ガイドライン等の開発
特になし
その他行政的観点からの成果
特になし
その他のインパクト
国内外の眼科や補体関連の学会・研究会や公開シンポジウムで本研究の成果が発表された。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
2件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
3件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計8件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
3件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Chi Z, Yoshida T, Lambris JD, and Iwata T.
Suppression of drusen formation by compstatin, a peptide inhibitor of complement C3 activation, on Cynomolgus monkey with early-onset macular degeneration.
Adv Exp Med Biol , 703 , 127-135  (2010)
原著論文2
Iwata T
Animal models for eye diseases.
Handbook of Laboratory Animal Science III , 195-217  (2014)
原著論文3
岩田 岳
眼科と補体
補体への招待 , 189-193  (2011)

公開日・更新日

公開日
2015-05-27
更新日
-

収支報告書

文献番号
201108001Z