文献情報
文献番号
201107008A
報告書区分
総括
研究課題名
トランスクリプトーム解析を利用した医薬品の副作用発症機構の解明と、それに基づいた副作用予測システム、副作用治療法、及び副作用の少ない新薬の開発戦略の確立
課題番号
H23-バイオ・一般-002
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
水島 徹(慶應義塾大学 薬学部)
研究分担者(所属機関)
- 星野 竜也(慶応義塾大学 薬学部)
- 田中 健一郎(熊本大学 大学院生命科学研究部)
- 大塚 雅巳(熊本大学 大学院生命科学研究部)
- 山川 直樹(熊本大学 大学院生命科学研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(創薬バイオマーカー探索研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
24,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究で我々は、ゲフィチニブ(イレッサ)による間質性肺炎副作用の治療法(HSP70誘導薬の併用)を確立したり、副作用の少ないゲフィチニブ誘導体を発見したりする(平成23年度実施)。また他の薬剤による間質性肺炎副作用(平成23-24年度実施)、及び薬疹など他の副作用(平成24-25年度実施)に関しても、トランスクリプトーム解析(トキシコゲノミクス・データベース等を利用)を用いて副作用発症機構を解明し、新薬候補品の副作用を予測するシステム(スクリーニング系)を確立すると共に、副作用の少ない新薬の開発戦略、及び副作用治療法の確立に向けた研究も行う。
研究方法
我々は日本で最もよく使われている胃薬・ゲラニルゲラニルアセトン(GGA、商品名セルベックス)がHSP70を誘導することを報告している。そこで我々が確立した動物モデルを用いて、ゲフィチニブ依存性間質性肺炎治療薬としてのGGAの有効性を検討したところ、GGA投与によりゲフィチニブ依存の肺繊維化、及びHSP70の発現抑制が見られなくなることを見出した。今後臨床研究へ繋げるための準備を行う。
結果と考察
平成23年度我々はこのゲフィチニブによるHSP70減少機構を解析し、ゲフィチニブがある種のmiRNAの発現を誘導し、HSP70の翻訳を抑制するというメカニズムを明らかにした。またHSP70を増やすことが知られている胃薬・ゲラニルゲラニルアセトン(GGA)をマウスに投与したところ、ゲフィチニブ依存の肺線維化、及びHSP70の発現抑制が見られなくなることを見出した(PLoS ONE 2011)。
結論
以上の結果はこれまで未解明であったゲフィチニブによる薬剤性間質性肺炎の発症機構を明らかにしただけでなく、その治療法を示唆して点において重要である。GGAは既に臨床で使われており安全性が担保されている。そこで、比較的容易に臨床研究を行うことが出来るので、今後その準備を行う。
公開日・更新日
公開日
2012-07-02
更新日
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