精神・神経疾患関連バイオマーカー探索による創薬基盤研究

文献情報

文献番号
201107003A
報告書区分
総括
研究課題名
精神・神経疾患関連バイオマーカー探索による創薬基盤研究
課題番号
H20-バイオ・一般-010
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
後藤 雄一(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター 神経研究所疾病研究第二部)
研究分担者(所属機関)
  • 高坂 新一(独立行政法人国立精神・神経医療研究セン ター 神経研究所)
  • 功刀 浩(独立行政法人国立精神・神経医療研究セン ター 神経研究所疾病研究第三部)
  • 山村 隆(独立行政法人国立精神・神経医療研究セン ター 神経研究所免疫研究部)
  • 和田 圭司(独立行政法人国立精神・神経医療研究セン ター 神経研究所疾病研究第四部)
  • 有馬 邦正(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター 病院第一精神診療部)
  • 村田 美穂(独立行政法人国立精神・神経医療研究セン ター 病院神経内科診療部)
  • 吉田 寿美子(独立行政法人国立精神・神経医療研究セン ター 病院臨床検査部)
  • 大槻 泰介(独立行政法人国立精神・神経医療研究セン ター 病院脳神経外科診療部)
  • 中川 栄二(独立行政法人国立精神・神経医療研究セン ター 病院小児神経診療部)
  • 林 由起子(独立行政法人国立精神・神経医療研究セン ター 神経研究所疾病研究第一部)
  • 金子 勲(大正製薬株式会社 研究企画部)
  • 小紫 俊(大正製薬株式会社 薬理機能研究所)
  • 茶木 茂之(大正製薬株式会社 薬理機能研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(創薬バイオマーカー探索研究)
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
23,760,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
精神・神経疾患はその病因、病態の複雑さのために、治療薬開発が最も遅れている分野である。網羅的なゲノム解析手法で疾患関連遺伝子及びその産物が同定されてきているが、それらが病態にどう関わるかについて理解し、さらに創薬に結びつけるには、「たんぱく質レベル」の動態の把握が必要である。血液を用いた解析に比べ、髄液を用いた解析では、数多くの神経特異的たんぱく質の同定が可能で、中枢神経の状態を直接的に反映していることが実証された。その手法を最大限活用し、各種の精神・神経疾患患者から採取した髄液のプロテオーム解析を出発点として疾患特異的に変動するたんぱく質を見いだし、診断、病勢、薬効を判定する際に有効なバイオマーカーを同定し、さらにはそのたんぱく質及び関連するたんぱく質の機能解析を行うことで創薬に結びつけることが本研究の目的である。
研究方法
(A)髄液等の患者試料と情報の収集、(B)プロテオーム解析、(C)疾患特異的バイオマーカー同定に向けた研究、(D)臨床応用と創薬研究という研究内容の区分がある。そのうち、本年度は(A)については、 分担研究者のいる診療科及び臨床検査部と連携して、髄液採取のシステムを構築して多数例の髄液を確保する。(B)及び(C)については、患者髄液2mLからの解析法を用いて、統合失調症や気分障害の症例と健常対照者と比較して、バイオマーカーの候補となるタンパク質を見いだす。
結果と考察
(A)疾患患者髄液の登録については、約1年間で270例の髄液を収集し、総計で370症例 (420検体)を登録した。(B)(C)については、統合失調症の男性患者10名のプロテオーム解析を行い、健常者での結果を比較検討した。のべ680個のタンパク質が同定されたもののうち、統合失調症群で上昇している、もしくは、低下しているタンパク質は、P<0.05のものが37個、P<0.01のものが19個存在した。また、気分障害症例9例と健常対照者13例の測定結果をみると、同定できた550個のタンパク質において、変動が2倍以上のタンパク質が44個(そのうち低下したものは34種類)、変動が1.67倍以上のタンパク質が93種類(そのうち低下したものは82種類)であった。これは、うつ病で変動するタンパク質の種類が多いことを示しており、特に低下するものが圧倒的に多いことが判明した。
結論
統合失調症及び気分障害における疾患特異的バイオマーカー同定に向けた研究が推進できた。今後は見いだされたバイオマーカー候補のバリデーションを行うことで、その意義を確実にする。

公開日・更新日

公開日
2012-07-02
更新日
-

収支報告書

文献番号
201107003Z