文献情報
文献番号
201106019A
報告書区分
総括
研究課題名
工学的アプローチに基づく細胞シート培養器具の開発
課題番号
H23-再生・若手-002
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
福田 淳二(国立大学法人 筑波大学 数理物質系)
研究分担者(所属機関)
- 蛯沢克己(国立大学法人 名古屋大学 医学部)
- 伊藤大知(国立大学法人 東京大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 再生医療実用化研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
4,930,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究では、電気化学的原理に基づき、電位印加のみで培養表面から素早く細胞を脱離する独自技術を提案している。特に、ナノ孔を有するメンブラン上へこの技術を応用することで、物質移動を促進した厚みのある細胞シートの形成、および加圧流通培養による血管構造導入などにより、従来にない高度な組織形成を実現するのが目標である。
研究方法
当該細胞脱離のメカニズムには、金-チオール結合によって培養表面に結合させたオリゴペプチドが、負電位の印加により還元され脱離する現象を利用している。すなわち、ペプチドを介して金蒸着メンブラン上で細胞シートを形成・高度化し、ペプチドの還元脱離とともに回収するものである。研究1年目である平成23年度は、静電力によって自己組織化し、密な分子層を形成するオリゴペプチドを設計した。そして、この技術をナノ孔を持つメンブランへ応用し、厚みのある細胞シートを作製した。さらに、これを電気化学細胞脱離を繰り返すことで順次重ね、積層化細胞シートを作製した。
結果と考察
新しく設計したオリゴペプチドの吸着および電気化学的な脱離を定量的に示した。そして、このペプチドを介して線維芽細胞を金コート表面に接着させたところ、約2分間の電圧印加でほぼ100%の細胞が脱離可能であることを示した。つまり、これまでに得られていた脱離時間5分間をさらに半分以下に短縮することができた。次に、多孔質メンブランに金をコートし、ペプチドを修飾した上で細胞を培養したところ、通常の培養ディッシュ表面と比較して、より素早くかつ厚みのある細胞シートが形成された。そして、これを電気化学細胞脱離を繰り返すことで順次重ね、5枚積層化することで厚みが200 µm程度の細胞シートを素早く作製した。作製したシートはピンセットで操作できるほどの機械的な強度を有していることを示した。
結論
静電的な相互作用で密な分子層を形成するオリゴペプチドを新しく設計し、この分子が電気化学的な細胞脱離において有用であることを示した。そして、この手法を多孔質メンブランに用いることで、厚みのある多層化細胞シートを短時間に作製できる技術を確立した。
公開日・更新日
公開日
2012-06-29
更新日
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