ヒト幹細胞を用いた臨床研究のエビデンス創出から高度医療制度による実用化を目指した研究

文献情報

文献番号
201106010A
報告書区分
総括
研究課題名
ヒト幹細胞を用いた臨床研究のエビデンス創出から高度医療制度による実用化を目指した研究
課題番号
H22-再生・一般-002
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
坪田 一男(慶應義塾大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 榛村 重人(慶應義塾大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 再生医療実用化研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
18,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
角膜上皮幹細胞不全を伴う重症眼表面疾患において、新規に開発した手法による培養角膜上皮シート移植の治療効果及び安全性を検討する。本研究の意義は、幹細胞不全による失明者の社会復帰を実現するために、従来の培養上皮シートで必要とされていた異種細胞や羊膜を用いない、より安全な再生技術を確立することである。平成23年度においては、東日本大震災及び計画停電予定の影響もあり、最新の知見に基づいた培養法の再検討を行った。
研究方法
 まずROCK阻害剤がヒト角膜輪部上皮細胞に効果を与えるか、伝統的なコロニー形成率を用いて評価した。効果が認められた後、臨床用と同様の培養法を用いて上皮シートを培養し、その質を分化マーカーおよび未分化マーカーの発現を用いて評価した。引き続いて、EGFのKGFによる代替がヒト角膜輪部上皮細胞に効果を与えるかを、伝統的なコロニー形成率を用いて評価した。またこの際、ROCK阻害剤の併用が相加的な効果をもたらすかも検討した。ROCK阻害剤検討時と同様、コロニー形成に効果が認められた後に上皮シートの培養および評価を行った。
結果と考察
ROCK阻害剤の添加により、上皮細胞の播種効率が有意に上昇した。また、上皮シート培養時における繊維芽細胞の出現が抑制された。EGFに変えてKGFを添加することにより、分化および未分化マーカーの発現が上昇し、より組織化された上皮が形成された。またこの上皮は強固であり、かつ鑷子で簡単に剥離可能であるため、より移植しやすいと思われた。加えて、4週間維持した上皮においても未分化細胞マーカーの発現およびコロニー形成可能な細胞が維持されており、これは上皮幹細胞がシート内に培養4週にわたって維持されていることを示す。この4週の時点でも分化マーカーの発現とシートの剥離しやすさおよび丈夫さも保たれているため、培養シートを移植予定の3週では有用な上皮シートとなっていると考えられる。
結論
培養法の再検討によって、これまでに比べてより移植に適すると思われる上皮シートの培養法を確立できた。現在CPC内のテストランを終了し、今後は慶應大医学部倫理委員会およびヒト幹細胞指針にSOP改定を申請の予定である。

公開日・更新日

公開日
2012-06-29
更新日
-

収支報告書

文献番号
201106010Z