ヒトiPS細胞由来網膜色素上皮細胞移植の実用化研究

文献情報

文献番号
201106004A
報告書区分
総括
研究課題名
ヒトiPS細胞由来網膜色素上皮細胞移植の実用化研究
課題番号
H21-再生・一般-006
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
高橋 政代(財団法人先端医療振興財団 先端医療センター 視覚再生研究グループ)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 再生医療実用化研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
47,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
加齢黄斑変性は日本でも近年増加している疾患であり、大多数の症例は線維性瘢痕の除去とともに網膜色素上皮の再生さらには視細胞の再生を必要とする。我々は世界に先駆けて、ヒトES細胞およびiPS細胞から加齢黄斑変性やその他の網膜色素上皮障害の治療に必要な機能を持つ、網膜色素上皮細胞を分化誘導することに成功しており、すでに患者皮膚細胞から多数のiPS細胞株の樹立にも成功しているが、網膜色素上皮細胞の純化および安全性検証をGMP準拠のCPCにおいて行い、臨床試験のプロトコル、SOPの作成を行うものである。
研究方法
iPS細胞の樹立・維持法、網膜色素上皮細胞の分化誘導法、およびこれらの細胞の培養方法が、「生物由来原料基準」「ヒト(自己)由来細胞・組織加工医薬品等の品質及び安全性の確保に関する指針」「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針」などの規制・指針に適合するよう検討を行った。 また、CPCを使用して臨床試験に使用するのと同じ条件でiPS細胞の樹立、維持、網膜色素上皮細胞の分化誘導、純化、移植細胞の調製を行い、造腫瘍性試験を中心とする非臨床安全性試験を実施した。
結果と考察
培養プロトコル、標準作業手順書の改訂を行うことができ、臨床研究開始に必要な改訂と最適化を行うことが可能となった。また、実際の臨床研究における細胞製造の体制を整えるために、CPC施設の管理・運用の為に必要となる文書の整備、細胞製品の品質及び安全性を確保するための人員の配置、役割の決定などの検討を重ね、CPC施設の24時間稼働を開始するとともに、運用コスト削減のため省エネルギーを図るよう、空調設備の工事を行った。また、空調システムの定期的再バリデーションを実施し、施設・設備が適切に稼働していることを確認した。
結論
これまで基礎研究と行ってきた細胞培養を、細胞製剤の製造として行う準備が整ったことは、臨床応用のためのSOP作成、手技・方法の確立だけでなく、細胞の品質と安全性の確保にもつながり、我々の研究を実際の治療へと橋渡しするものと考える。臨床研究を行う最初の対象疾患として加齢黄斑変性を考えており、iPS細胞を使った研究や研究者を取り巻く環境に配慮するだけでなく、患者(国民)のニーズにあった治療法を確立することが我々の使命であることからも実現に向けて、関係機関との連携・協力は必至であり、臨床試験を推進・支援する体制づくりが急務となっている。

公開日・更新日

公開日
2012-06-27
更新日
-

文献情報

文献番号
201106004B
報告書区分
総合
研究課題名
ヒトiPS細胞由来網膜色素上皮細胞移植の実用化研究
課題番号
H21-再生・一般-006
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
高橋 政代(財団法人先端医療振興財団 先端医療センター 視覚再生研究グループ)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 再生医療実用化研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
加齢黄斑変性は日本でも近年増加している疾患であり、大多数の症例は線維性瘢痕の除去とともに網膜色素上皮の再生さらには視細胞の再生を必要とする。我々は世界に先駆けて、ヒトES細胞およびiPS細胞から加齢黄斑変性やその他の網膜色素上皮障害の治療に必要な機能を持つ、網膜色素上皮細胞を分化誘導することに成功しており、すでに患者皮膚細胞から多数のiPS細胞株の樹立にも成功しているが、網膜色素上皮細胞の純化および安全性検証をGMP準拠のCPCにおいて行い、臨床試験のプロトコル、SOPの作成を行うものである。
研究方法
iPS細胞の樹立・維持法、網膜色素上皮細胞の分化誘導法およびこれらの細胞の培養方法が、「生物由来原料基準」「ヒト(自己)由来細胞・組織加工医薬品等の品質及び安全性の確保に関する指針」「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針」などの規制・指針に適合するよう検討を行った。 また、CPCを使用して臨床試験と同じ条件でiPS細胞の樹立、維持、網膜色素上皮細胞の分化誘導、純化、移植細胞の調製を行い、造腫瘍性試験を中心とする非臨床安全性試験を実施した。
結果と考察
実際にCPCを使用し、具体的な手順を確認しながら標準作業手順書を作成。各工程を繰り返し、培養プロトコル・標準作業手順書の改訂を行い、臨床研究開始に必要な改訂と最適化を行うことができた。また、実際の臨床研究における細胞製造の体制を整えるために、CPC施設の管理・運用の為に必要となる文書の整備、細胞製品の品質及び安全性を確保するための人員の配置、役割の決定などの検討を重ね、施設管理・運用に関する文書に基づき、ヒトiPS細胞由来網膜色素上皮細胞を製造するためのGMP準拠CPCの本格的な運用を開始することが可能となった。
結論
これまで基礎研究と行ってきた細胞培養を細胞製剤の製造として行う準備が整ったことは、臨床応用のためのSOP作成、手技・方法の確立だけでなく、細胞の品質と安全性の確保にもつながり、我々の研究を実際の治療へと橋渡しするものと考える。臨床研究を行う最初の対象疾患として加齢黄斑変性を考えており、iPS細胞を使った研究や研究者を取り巻く環境に配慮するだけでなく、患者(国民)のニーズにあった治療法を確立することが我々の使命であることからも実現に向けて、関係機関との連携・協力は必至であり、臨床試験を推進・支援する体制づくりが急務となっている。

公開日・更新日

公開日
2012-06-27
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201106004C

成果

専門的・学術的観点からの成果
網膜色素上皮細胞の純化および安全性検証をGMP準拠のCPCにおいて行い、臨床試験のプロトコル、SOPを作成。施設管理・運用に関する文書に基づき、ヒトiPS細胞由来網膜色素上皮細胞を製造するためのGMP準拠CPCの本格的な運用を開始することが可能となった。この研究成果が再生医療のモデルケースとなり、全国の医療・研究機関や網膜変性患者だけでなく、広く一般に認知・理解される細胞移植治療となり、再生医療全般の発展に寄与するものと考える。
臨床的観点からの成果
我々が計画している患者本人のiPS細胞由来網膜色素上皮細胞移植による臨床研究の実施は、加齢黄斑変性やその他の網膜色素上皮障害に対する新しい概念の画期的な治療が誕生するだけでなく、世界に先駆けて行われるiPS細胞の臨床応用が成されたという点で意義が大きいと考える。加齢黄斑変性は高齢者の視力低下の大きな原因の一つであるが治療薬が3剤しか存在しないというunmet needsの大きな疾患であり、認可された薬剤についても視力低下の原因の一部を解決するに留まるため、細胞移植による治療法の開発が期待される。
ガイドライン等の開発
本研究においては臨床研究における細胞製造の体制を整える為、CPC施設の管理・運用の為に必要となる文書を整備し、細胞製品の品質及び安全性を確保する為の人員の配置、役割の決定等の検討を重ねた。これらの研究成果は今後の再生医療研究開発における「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針」及び薬事法との整合性を図る必要がある場合に参考になると考える。本研究に関連し、次世代医療機器評価指標作成事業再生医療審査WGにより、自己(H24)/同種(H25)iPS細胞由来網膜色素上皮細胞に関する評価指標が作成された。
その他行政的観点からの成果
iPS細胞を用いた初めての応用例なので、常に様々な審議会などで参考として議論される。アイセンターへの発展も含め、神戸の医療産業都市行政のひとつの核となっている。
その他のインパクト
我々のiPS細胞を使った研究や治療法の開発は常に注目されており、たびたび新聞・テレビ等でも紹介されている。また、世界初の1例目の成功は世界中で取り上げられた。対象疾患である加齢黄斑変性については、高齢者の視力低下の大きな原因の一つであり、60歳以上の1%近くという患者数がいることから、一般の方の関心も高く公開シンポジウムなど多数行っている。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-05-27
更新日
2017-06-20

収支報告書

文献番号
201106004Z