大規模災害後の震災関連のうつ病の早期発見と予防介入手法の開発に向けた予備的研究

文献情報

文献番号
201105016A
報告書区分
総括
研究課題名
大規模災害後の震災関連のうつ病の早期発見と予防介入手法の開発に向けた予備的研究
課題番号
H23-特別・指定-015
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
朝田 隆(筑波大学 医学医療系)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
8,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
東日本大震災の被災地では、今後、震災関連のうつ病の発症が増加すると予測される。しかし大規模災害後のうつ病の一次予防やメンタルヘルス維持を目的とした地域介入研究の成果は知られていない。
本研究は、健診と並行して心身の健康つくりのための介入プログラムを定期的・継続的に実施する。健診では、一般身体面のチェックとともに、同意を得られた対象者についてメンタルヘルスの側面を詳細に評価する。介入プログラムは、体操などの健康つくりのみならず、仕事を失った対象者の雇用促進に役立つと考えられるパソコンの技術習得などのプログラムを提供し、その効果を検討する。
研究方法
本研究のデザインは、大規模介入研究の実施に向けた予備的調査研究である。対象は、同意能力のある北茨城市の成年住民とし、参加者の性別や職業は問わない。
本研究は、一般健診、メンタル健診、栄養健診と予防介入からなる。調査開始時点における一般健診では基本属性、ライフスタイル調査などを実施する。メンタル健診は、精神症状やレジリエンス(心の回復度)の検査などを行う。栄養健診で栄養状態や食生活の実態を把握する。
介入プログラムは運動、栄養/パソコン教室などを候補としている。うつ病等が疑われる場合には、本研究と並行して行われる同市への精神科診療支援での診察を促す。
結果と考察
1)健康調査事業
 2月17日時点で約190名の健診を終了した。健診者の平均年齢は58.2歳(22歳?94歳)で、ほぼ60歳代を中心に健診に参加していた。今後、雇用促進住宅などに避難中の被災者を重点的に健診を行う必要がある。
2)予防介入
運動については本学体育学系との連携で平成24年6月から実施予定である。またパソコン教室は、現在地元住民と話し合い準備中である。
3)診療支援
 平成23年11月から北茨城市立総合病院に「震災こころのケア外来」を設置した。対象は震災後に精神的不調を訴えるようになった被災者に限定した。平成24年3月時点で初診は計21名、再診はのべ16名である。疾患は不安性障害が多いが、うつ病や統合失調症も数例来院している。
 本活動は、精神科病院が一つしかない同市で重要な支援になっていると考えられる。
結論
本研究に必要なシステムづくりは大きな問題もなく実施された。両業務の標準化はほぼ達成されたと考えられる。したがって、本研究の遂行に必要な基礎的準備は達成され、本格的に実施可能な状況にある。

公開日・更新日

公開日
2015-05-29
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201105016C

成果

専門的・学術的観点からの成果
現在、健診事業によって収集したデータを適宜、解析中である。健診者数が目標数(1000名程度)に達成した後に、震災後に発生したうつやPTSDの発生率、それらの発症と関連する因子、たとえば被災状況や収入変化などの生活要因、さらには元来の性格傾向、レジリエンス、栄養状態、また画像所見などについて検討してゆく。また、運動や就労支援としてのパソコン教室も開始準備をすすめており、これらのうつへの予防効果についての学術的成果を、今後逐次発表してゆく予定である。
臨床的観点からの成果
本研究の一環として北茨城市立総合病院において週一度の定期的な診療活動を行った。必要があれば、筑波大学附属病院などで入院治療も実施する予定であるが、現在のところ該当者はいない。開設当初、ほとんど受診者はいなかったが健診が開始されてから徐々に初診数は増えてきている。すでに他院で受診中の患者や震災前から精神的不調を訴えていたものなどの受診については「セカンド・オピニオン」という立場から診察を行っている。
ガイドライン等の開発
本研究の最大の目標は、従来からある被災時に「外からいかに救援するか」というガイドラインではなく、被災当事者を中心にしたガイドラインの策定である。現時点では現地における健診事業や外来支援などのマニュアルは作成した。これに加え、被災直後の精神科患者の避難方法、被災直後のロジスティックスやコマンド・コントロールの問題についても検討する。一方、長期的には精神障害発生の予防としての就労支援や生活の立て直しへの介入なども必要であり、これらを取り込んだ有効なガイドライン策定を進めていく。
その他行政的観点からの成果
本研究は、まだ予備的段階であり、その成果も具体的なものではない。あくまでシステム構築を主としていることから、北茨城市の施策に具体的に反映はされていない。しかし、健診事業自体が北茨城保健センターとの共同事業で、さらに被災者を対象にした講演やレクリエーションを検討中であり、これらは同センターの保健事業施策の重要な一環となっている。今後、同市からの要望なども取り入れつつ、同市の施策に本研究の実施や成果が反映されるべく、本研究をすすめてゆく。
その他のインパクト
NHK(日本放送協会)が健診事業について取材にきて、今後も追跡的に取材を行うとのことだった。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-05-29
更新日
-

収支報告書

文献番号
201105016Z