円滑な脳死下臓器提供に資するための科学的分析に関する研究

文献情報

文献番号
201105007A
報告書区分
総括
研究課題名
円滑な脳死下臓器提供に資するための科学的分析に関する研究
課題番号
H23-特別・指定-013
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
横田 裕行(日本医科大学大学院医学研究科救急医学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 有賀  徹(昭和大学医学部救急医学)
  • 木下 順弘(熊本大学侵襲制御医学)
  • 坂本 哲也(帝京大学医学部救急医学・蘇生学)
  • 荒木  尚(足利赤十字病院救命救急センター)
  • 芦刈 淳太郎(社団法人日本臓器移植ネットワーク)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
2,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
臓器移植専門委員会及び検証会議にて検証が行われた102例の検証事例の結果の概要が厚生労働省から公表された。同概要と日本臓器移植ネットワークの資料から現行の法的脳死判定や脳死下臓器提供にどのような課題が存在するかを検討し、その解決に向けての方向性を提示することを目的とした。
研究方法
臓器移植専門委員会及び検証会議にて検証が行われた102例の検証事例の結果の概要と日本臓器移植ネットワーク(JOT)の脳死下臓器提供に関する資料(1997年10月16日から2012年3月31日までの脳死下臓器提供事例169例)を対象として、脳死診断時のバイタルサイン変化や脳死下臓器提供にかかわる時間的経過を収集分析した。
結果と考察
上記の目的と方法から以下の結論を得た。1)無呼吸テストでのPaCO2上昇率は男性(56例) 4.7±1.6 mmHg/min、女性(44例) 4.6±2.1 mmHg/minである。2)改正臓器移植法施行後の脳死下臓器提供が、脳死とされうる状態と診断されてから、摘出手術が終了し臓器提供者が手術室を退出するまでの経過時間において、改正臓器移植法施行前と比較して平均16時間あまり長くなった。3)麻酔薬、筋弛緩薬、あるいは鎮静・鎮痛薬で脳死判定に影響を与えうる薬物が投与の投与状況を検討した結果、23種類の薬剤が使用されていた。その結果、最終投与時間から脳死とされ得る時間は最短5時間、最長491時間であった。4)法的脳死判定前の脳死とされ得る状態と判断した前後において脳循環が8例で測定されていたが、いずれも脳循環は確認されなかった。5)法的脳死判定マニュアルの内容から逸脱した事項や検証会議で指摘された内容を確認したところ、最終的に脳死判定の妥当性に影響を与えたと判断されたものは見られなかった。
結論
検証102例と日本臓器移植ネットワーク(169例)の検討結果から、現在までの法的脳死判定に関連する標準的な指標(バイタルサイン、血液ガス所見など)を示すことができた。この結果に則って今後法的脳死判定に際記録用紙やチェックシートの工夫が必要であると考えられた。また、法的脳死判定の際に平均的バイタルサインや血液ガス所見を示す際には、脳死下臓器提供施設が後日受ける事後検証の手続きは簡略化すべきと考えられた。

公開日・更新日

公開日
2012-06-26
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201105007C

成果

専門的・学術的観点からの成果
法的脳死判定が行われ臓器移植専門委員会、及び検証会議にて検証が行われた102例、および日本臓器移植ネットワークの資料169例を対象として法的脳死判定時のバイタルサイン変化、使用薬剤、血液ガス分析の変化等を検討した。その結果、標準的法的脳死判定時のバイタルサインの変化や血液ガス分析のデータ、脳死判定に影響を与える可能性の薬剤の使用実態を把握することができた。その結果、今後の法的脳死判定の際に円滑な脳死下臓器提供と臓器提供施設の負担軽減に大きく資すると考えられた。
臨床的観点からの成果
法的脳死判定の無呼吸テストでPaCO2上昇率は男性(56例) 4.7±1.6 mmHg/min、女性(44例) 4.6±2.1 mmHg/minであった。また、脳死判定に影響を与えうる薬物の投与は23種類で、最終投与時間から脳死とされ得る時間は最短5時間、最長491時間であった、また、脳循環が8例で測定されていたが、いずれも脳循環は確認されなかった。脳循環が脳死判定の補助検査として考慮されるべきと考えられ、臨床的にも極めて大きな成果が認められた。
ガイドライン等の開発
今回の研究で得られた実績から、より記載しやすく臓器提供施設に負担のかからない検証手続きを提言した。現在使用している検証フォーマットを再検討する試みもなされるべきと考えられた。現在、脳死下臓器提供後の事後検証フォーマットは従前より記載し易くなっているが、臓器提供施設にとっては未だ負担感が払拭できない。このような視点と今回102例の事後検証症例の詳細を検討した結果からフォーマット形式を再検討し、平均的法的脳死判定がなされた場合では検証方法もより簡略化可能であると考えられた。
その他行政的観点からの成果
今回得られた法的脳死判定に関連する検討結果を、脳死下臓器提供を行った後に臓器提供施設が受ける厚生労働省の検証をより簡略化することに使用すべきと考えた。すなわち、今後法的脳死判定を行った際に、今回の結果で得られた平均的バイタルサインや血液ガス所見を示す際は事後検証の簡略化を図り、例えば記録報告のみとするような対応が可能と考えた。このような対応を行うことで、過去102例の検証事例が有意義に活用されるたことにもなり、かつ臓器提供施設の負担軽減にも大きく貢献すると考える。
その他のインパクト
本研究の成果の一部は平成24年5月18日に開催された日本脳死・脳蘇生学会で発表し、また本年9月22日に開催予定である日本移植学会に発表予定である。さらに、同10月13日?15日に開催される日本救急医学会で発表予定である。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
14件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
42件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-06-10
更新日
-

収支報告書

文献番号
201105007Z