食品の放射性物質に関する規制値についての研究

文献情報

文献番号
201105003A
報告書区分
総括
研究課題名
食品の放射性物質に関する規制値についての研究
課題番号
H23-特別・指定-003
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
明石 真言(独立行政法人 放射線医学総合研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 山口 一郎(独立行政法人 国立保健医療科学院)
  • 高橋 知之(京都大学原子炉実験所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
5,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 東京電力株式会社福島第一原子力発電所災害発生による放射性物質の環境への放出状況や食品中のモニタリング結果を踏まえて、食品中の放射性物質に関する安全性確保に万全を期すため、食品を介した放射性物質による国民の健康に及ぼす影響について、最新の情報等を加味し、食品中における放射性物質に関する基準値案を策定することを目的とした。
研究方法
 食品中の放射性物質に関する規制値を策定するための基礎的データの作成と食品中の放射性物質に関する規制値原案の策定に関する研究を行った。
結果と考察
 食品の放射能濃度のモニタリングと摂取量分布データを用いて、食事摂取に由来した追加線量を推計した。その結果、原発事故後一年間の食事摂取に由来した預託実効線量が1mSvを超えるのは、13-18歳まで集団でも0.1%程度の人口に留まると考えられた。また、食品の放射能濃度のレベルが今後も同じように推移すると仮定した場合でも、食品の新規格基準導入により、同地域の13-18歳まで集団でも99.9%の国民の一年間の食品摂取に伴う追加線量は0.5mSvを下回ると考えられた。
 さらに食品中放射性物質濃度基準値の導出に関する検討を行うために、規制対象核種と基準値の設定を行った。内部被ばく線量に対する影響が大きく、かつ容易に測定可能な放射性セシウム(Cs-134及びCs-137)を対象とし、「規格基準導出の考え方」を設定し、食品への放射性核種の移行評価を行い、移行経路による食品中の放射性セシウムに対する放射性核種の比率を求め、年齢等区分毎の摂取量から、放射性セシウム1Bq当たりの被ばく線量の評価を行った。限度値が最も小さくなるのは、1年目における13-18歳(男)であった。想定外の食品摂取をしても安全が確保できるよう、介入線量に一定の余裕(留保)を持たすため、基準値は安全側に切り下げて100Bq/kgと設定することが妥当とした。また、「乳児用食品」及び「牛乳」については、流通する全ての食品が汚染されていたとしても影響がないよう、安全側に50Bq/kgの基準値を設定することが妥当とした。
結論
 食品中放射性物質濃度基準値の導出を行い、「一般食品」、「乳児用食品」及び「牛乳」について基準値を設定した。この基準の導入による同地域の同集団でも99.9%の国民の一年間の食品摂取に伴う追加線量は0.5mSvを下回ると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2015-06-22
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201105003C

成果

専門的・学術的観点からの成果
 今回の放射性物質の環境への放出状況や食品中のモニタリング結果を踏まえて、適宣リスク管理措置の妥当性を検証するなど、食品中の放射性物質に関する安全性確保に万全を期すため、食品を介した放射性物質による国民の健康に及ぼす影響について、国際放射線防護委員会(ICRP)をはじめとする国際機関等において評価された各種資料とともに最新の情報等を加味し、今後の食品中における放射性物質に関する基準値案を策定するための成果を得た。
臨床的観点からの成果
該当事項なし
ガイドライン等の開発
 厚生労働省薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会放射性物質対策部会(平成23年7月12日、10月31日、11月24日、12月22日、2月24日)における資料に成果は反映された。
その他行政的観点からの成果
 本研究の成果は、厚生労働省薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会放射性物質対策部会において、報告書「食品中の放射性物質に係る規格基準の設定について」を作成するまでの検討資料として、「食品摂取による内部被ばく線量における放射性セシウムの寄与率の考え方」、「別冊 食品の基準値の導入について」や「食品からの放射性物質の一日摂取量の推定」等の作成時に種々の成果を提供し、深く関与している。
その他のインパクト
厚生労働省のウエッブページで「食品中の放射性物質への対応」の記述の基礎となる情報を、「食品に関するリスクコミュニケーション~食品中の放射性物質対策に関する説明会~」で用いられる資料の基礎となる知見を提供した。また薬事・食品衛生審議会や放射線審議会などの行政対応に成果は幅広く活用された。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
12件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
2件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
3件
その他成果(普及・啓発活動)
13件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-06-22
更新日
-

収支報告書

文献番号
201105003Z