主にアジアに蔓延するウイルス性肝疾患の制御に資する為の日米合作的肝炎ウイルス基礎研究

文献情報

文献番号
201104007A
報告書区分
総括
研究課題名
主にアジアに蔓延するウイルス性肝疾患の制御に資する為の日米合作的肝炎ウイルス基礎研究
課題番号
H23-国医・指定-007
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
小池 和彦(東京大学 東京大学医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 脇田隆字(国立感染症研究所ウイルス第二部)
  • アクバルシェイクモハマドファズレ(東芝病院研究部)
  • 茶山一彰(広島大学医歯薬学総合研究科)
  • 金子周一(金沢大学医薬保健研究域医学系)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 地球規模保健課題推進研究(国際医学協力研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
11,111,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
アジア諸国の肝炎・肝癌の制御を目的とする。
研究方法
1.基礎的研究:本研究に参画する班員とその研究協力者が、それぞれの専門領域に於ける基礎研究の深化に努力した。具体的には、HBVとHCVとHEVに関する疫学的、ウイルス学的、免疫学的、分子生物学的研究を行った。
2.米国研究者との研究協力:従来からの日米医学協力研究事業肝炎部会の日米両パネル間の研究協力体制を維持し、先端情報の速やかな相互開示によって、当該領域の知識と技術の増進に努力した。
3.アジア諸国研究者との研究協力:アジア諸国の医師・研究者との間に存在する研究協力体制を更に強化すると同時に、新たな研究協力の可能性をも模索した。
結果と考察
1.肝硬度測定によって肝癌発生のリスクが階層的に予測可能であること、ラジオ波治療によって長期の予後が期待されうること、HBV、HCVの増殖抑制によって肝癌再発の抑制あるいは予後の延長がもたらされることが明らかにされた。
2.HIV感染症においては極めて多彩なHBV遺伝子型による感染が起こっていること、HIV感染症とHBV感染症の治療における耐性ウイルス発生の懸念について示された。アジアに蔓延しつつあるHIV/HBV重複感染の制御において、逆転写酵素阻害薬使用の厳格な管理が必須であることが示唆された。
3.バングラデシュ国内で見られる散発性ならびに流行性急性肝炎の発症に関する疫学的研究と、地域的に特有な危険因子についての評価を、アジアの研究者との共同研究によって行なった。今日ではHEVがバングラデシュ国内で起きる急性肝炎の主因となっていることが明らかとなった。
4.ヒト肝細胞キメラマウスを用いて、肝炎ウイルスの感染はヒト肝細胞内のmRNA発現を大きく変化させるとともに、IFN応答能を低下させることによりIFNによる抗ウイルス作用を回避している可能性を明らかにした。
5.B型慢性肝炎、C型慢性肝炎、関連肝細胞がんにおける発現遺伝子および免疫を包括的に解析し、慢性肝炎および肝細胞がんの病態と発現遺伝子、免疫状態との関連を明らかにした。

結論
アジア諸国の肝炎・肝癌の制御という目的のための個別研究は、予定通りに進捗した。アジアにおけるアジアにおける経口ウイルス肝炎感染症の現状と問題点が明らかになり、対策のポイントを日米両国において今後も継続して確認して行く。

公開日・更新日

公開日
2012-06-06
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201104007C

成果

専門的・学術的観点からの成果
アジア諸国の肝炎・肝癌の制御という目的のための個別研究は、予定通りに進捗した。日米医学の枠組みの再検討が行なわれている渦中、米国側のファンドがないため米国において開催される予定であったミーティング(シンポジウム)が中止となった。アジアにおけるアジアにおける経口ウイルス肝炎感染症の現状と問題点が明らかになり、対策のポイントを日米両国において今後も継続して確認して行く。
臨床的観点からの成果
B型肝炎ウイルスに関しては、ヒト肝細胞キメラマウスを用いたIFN感受性の検討、包括的遺伝子発現検索、C型肝炎ウイルスに関しては、ヒト肝細胞キメラマウスを用いたIFN感受性の検討、包括的遺伝子発現検索、感染や粒子形成に重要な表面タンパク質の構造および抗原性に関する研究、バングラデシュにおけるHCV蔓延対策等を、E型肝炎ウイルスについては、バングラデシュにおける実態解明と対策へ向けた試みを行なった。アジアのウイルス性肝疾患の制御に資するため、更なる基礎研究、国際医学協力による肝炎対策を進めていく。
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
なし
その他のインパクト
なし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
40件
その他論文(和文)
41件
その他論文(英文等)
11件
学会発表(国内学会)
20件
学会発表(国際学会等)
11件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Taguwa S, Kambara H, Fujita N, et al.
Dysfunction of autophagy participates in vacuole formation and cell death in cells replicating hepatitis C virus
J Virol , 85 , 13185-13194  (2011)
原著論文2
Kudo Y, Tanaka Y, Tateishi K, et al.
Altered composition of fatty acids exacerbates hepatotumorigenesis during activation of the phosphatidylinositol 3-kinase pathway
J Hepatol , 55 (6) , 1400-1408  (2011)
原著論文3
Yamashiki N, Sugawara Y, Tamura S, et al.
Diagnostic accuracy of α-fetoprotein and des-γ-carboxy prothrombin in screening for hepatocellular carcinoma in liver transplant candidates.
Hepatol Res , 41 (2) , 1199-1207  (2011)
原著論文4
Kojima K, Takata A, Vadnais C, et al,
MicroRNA122 is a key regulator of α-fetoprotein expression and biologically aggressive behavior of hepatocellular carcinoma
Nat Commun , 2 , 338-338  (2011)
原著論文5
Tsukada K, Sugawara Y, Kaneko J, et al.
Living donor liver transplantations in HIV- and hepatitis C virus-coinfected hemophiliacs: Experience in a Single Center
Transplantation , 91 (11) , 1261-1264  (2011)
原著論文6
Miyoshi H, Moriya K, Tsutsumi T, et al.
Pathogenesis of lipid metabolism disorder in hepatitis C: polyunsaturated fatty acids counteract lipid alterations induced by the core protein
J Hepatol , 54 , 432-438  (2011)
原著論文7
Saeed M, Suzuki R, Watanabe N, et al.
Role of the endoplasmic reticulum-associated degradation (ERAD) pathway in degradation of hepatitis C virus envelope proteins and production of virus particles
J Biol Chem , 286 (43) , 37264-37273  (2011)
原著論文8
Okamoto Y, Masaki T, Murayama A, et al.
Development of recombinant hepatitis C virus with NS5A from strains of genotypes 1 and 2
Biochem Biophys Res Commun , 410 (3) , 404-409  (2011)
原著論文9
Yamamoto M, Aizaki H, Fukasawa M, et al.
Structural requirements of virion-associated cholesterol for infectivity, buoyant density and apolipoprotein association of hepatitis C virus
J Gen Virol , 92 (9) , 2082-2087  (2011)
原著論文10
Akazawa D, Morikawa K, Omi N, et al.
Production and characterization of HCV particles from serum-free culture
Vaccine , 29 , 4820-4828  (2011)
原著論文11
Aly HH, Oshiumi H, Shime H, et al.
Development of mouse hepatocyte lines permissive for hepatitis C virus (HCV)
PLoS One , 6 (6) , 21284-21284  (2011)
原著論文12
Tsuge M, Takahashi S, Hiraga N, et al.
Effects of hepatitis B virus infection on the interferon response in immunodeficient human hepatocyte chimeric mice
J Infect Dis , 204 (2) , 224-228  (2011)
原著論文13
Tsuge M, Fujimoto Y, Hiraga N, et al.
Hepatitis C virus response in the liver of the human hepatocyte chimeric mouse
PLoS One , 6 (8) , 23856-23856  (2011)
原著論文14
Miki D, Ochi H, Hayes CN, et al.
Variation in the DEPDC5 locus is associated with progression to hepatocellular carcinoma in chronic hepatitis C virus carriers
Nat Genet , 43 (8) , 797-800  (2011)
原著論文15
Hajime Sunagozaka, Masao Honda, Taro Yamashita, et al.
Identification of a secretory protein c19orf10 activated in hepatocellular carcinoma.
Int J Cancer , 129 (7) , 1576-1585  (2011)
原著論文16
Yoshiko Takata, Yasunari Nakamoto, Akiko Nakada, et al.
Frequency of CD45RO(+) subset in CD4(+)CD25(high) regulatory T cells associated with progression of hepatocellular carcinoma.
Cancer Lett , 307 (2) , 165-173  (2011)
原著論文17
Masao Honda, Kenji Takehana, Akito Sakai, et al.
Interferon Signaling through mTOR and FoxO pathways in Patients with Chronic Hepatitis C
Gastroenterology , 141 (1) , 128-140  (2011)
原著論文18
Eishiro Mizukoshi, Yasunari Nakamoto, Kuniaki Arai,
Comparative analysis of various tumor-associated antigen-specific t-cell responses in patients with hepatocellular carcinoma
Hepatology , 53 (4) , 1206-1216  (2011)

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-

収支報告書

文献番号
201104007Z