肥満関連疾患のアジアと米国における遺伝疫学的検討とその対策に関する研究

文献情報

文献番号
201104005A
報告書区分
総括
研究課題名
肥満関連疾患のアジアと米国における遺伝疫学的検討とその対策に関する研究
課題番号
H23-国医・指定-005
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
川上 正舒(自治医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 齋藤 康(千葉大学)
  • 松澤 佑次(財団法人 住友病院)
  • 渡邊 昌(独立行政法人 国立健康・栄養研究所)
  • 大内 尉義(東京大学 医学部)
  • 稲垣 暢也(京都大学 医学部)
  • 武城 英明(千葉大学 医学部)
  • 山本 茂(十文字学園女子大学 人間生活学研究科)
  • 山下 静也(大阪大学 医学部)
  • 島野 仁(筑波大学 医学部)
  • 船橋 徹(大阪大学 医学部)
  • 石川 鎮清(自治医科大学 医学部)
  • 豊島 秀男(自治医科大学 医学部)
  • 河野 幹彦(自治医科大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 地球規模保健課題推進研究(国際医学協力研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
11,111,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
肥満関連疾患は世界における保健衛生政策の中でも最重要課題である。本研究は、日米及び東南アジアにおける栄養代謝に関わる諸問題を調査研究し、問題解決の方策を立てることを目的とする。
研究方法
栄養疫学的調査研究および臨床病態学的研究を中心として行い、これに分子遺伝学、細胞生物学的手法による検討を多施設(11施設)による分担で行った。倫理面へは適切に配慮した。
結果と考察
1)ベトナムにおいては都市部で農村部、山岳部、沿岸部に比べメタボリックシンドローム(MS)構成要素数が明らかに多く、地域差が認められた。
2)閉経後ベトナム女性においてはいくつかの肥満関連遺伝子が過体重や肥満と関連していた。
3)韓国人肥満者においても、世界の既報と同様に内臓脂肪蓄積が低アディポネクチン血症に関わることが示された。
4)内因性インスリン分泌能とインスリン投与は基礎エネルギー代謝量を抑制する独立した因子で、インスリン過剰と肥満との関連が示唆された。
5)骨格筋細胞内脂肪蓄積量はインスリン抵抗性指数と正相関し、BMI、体脂肪量増加と関連した。
6)高齢者糖尿病患者のMS予防には食事よりも身体活動度の増加が重要であった。
7)糖尿病発症にはインスリン分泌不全が先行し、インスリン抵抗性が加わることで危険率が上昇した。
結論
日米、東南アジアで肥満関連疾患が急速に増加しているが、その発症には栄養学的問題に加え遺伝子の影響も認められ、国家独自の予防対策を講じる必要がある。

公開日・更新日

公開日
2012-06-06
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201104005C

成果

専門的・学術的観点からの成果
ベトナム4地域におけるメタボリックシンドローム(MS)構成要素数の検討、ベトナム女性における肥満関連遺伝子の検討、韓国人肥満者おけるアディポネクチンと内臓脂肪蓄積との関連、基礎エネルギー代謝量を抑制する因子の解明、異所性脂肪蓄積とインスリン抵抗性との関連、高齢者糖尿病患者のMS予防に対する身体活動度、アディポネクチンの血圧に対する影響、遺伝子導入を目指した新規治療法の開発などの研究を行い、国際学会及び国際医学雑誌に多数発表し、肥満関連疾患研究の発展及び保健衛生施策に貢献した。
臨床的観点からの成果
ベトナムでは都市部でべメタボリックシンドローム(MS)構成要素数が多いこと、ベトナム女性ではいくつかの肥満関連遺伝子が過体重と関連すること、韓国人肥満者でもアディポネクチンが内臓脂肪蓄積と関連すること、内因性インスリン分泌能やインスリン投与が基礎エネルギー代謝量の抑制因子であること、異所性脂肪蓄積がインスリン抵抗性に関与すること、高齢者糖尿病患者のMS予防に身体活動が重要であること、アディポネクチンが血圧を好影響を与えること、などが明らかとなった。
ガイドライン等の開発
メタボリックシンドロームについては、アジア系人種とコーカシア系人種を含めた他の民族とは環境因子及び遺伝因子が大きくことなり、その診断基準が異なることは容易に推察されるが、東南アジア内においても意見の一致が見られていない。本研究により推進されている東南アジアにおける疫学調査の成果は、この地域での診断基準設定に寄与することが期待される。
その他行政的観点からの成果
肥満関連疾患に対する厚生行施策は東南アジアを含めた多くの国の最重要課題の一つである。ベトナム国立栄養研究所などとのベトナム各地における共同研究事業の成果はベトナム国の厚生状況を把握するとともに、ベトナム国の保健衛生の向上に大きく貢献した。今後は、ベトナムにおいては介入研究を、カンボジアなどとは共同研究事業を推進する予定であり、さらなる国際貢献が期待される。
その他のインパクト
本年度は日本のマスコミへの情報提供はなかった。また、公開シンポジウムも開催しなかった。

発表件数

原著論文(和文)
8件
原著論文(英文等)
65件
その他論文(和文)
7件
その他論文(英文等)
70件
学会発表(国内学会)
68件
学会発表(国際学会等)
37件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
ベトナム国保健衛生施策
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Kioshita N, Kakehashi A, Dobashi Y, et al.
Effects of topical nipradilol on early diabetic retinopathy in SDT rats.
The Open Diabetes Journal , 4 , 114-118  (2011)
原著論文2
Binh PNT., Soda K, Kawakami M.
Mediterranean diet and polyamine intake: possible contribution of increased polyamine intake to inhibition of age-associated disease.
Nutrition and Dietary Supplements , 3 , 1-7  (2011)
原著論文3
Kuroda M, Bujo H, Aso, et al.
Adipocyte as a vehicle for ex vivo gene therapy: Novel replacement therapy for diabetes and other metabolic diseases.
J Diabet Invest , 2 (5) , 333-340  (2011)
原著論文4
Asada S, Kuroda M, Aoyagi Y, et al.
Ceiling culture-derived proliferative adipocytes retain high adipogenic potential suitable for use asa a vehcle for gene transduction therapy
Am J Physiol-Cell Physioi , 301 (1) , 181-185  (2011)
原著論文5
Ryo M, Nakamura T, Funahashi T, et al.
Health education "Hokenshido" program reduced metabolic syndrome in the Amagasaki Visceral Fat Study.Three-year follow-up study of 3,174 Japanese employees.
Intern Med , 50 (16) , 1643-1648  (2011)
原著論文6
Matsuzawa Y, Funahashi T, Nakamura T.
THe concept of metabolic syndrome: contribution of visceral fat accumulation and its molecular mechanism.
J Atheroscl Thromb , 18 (8) , 629-639  (2011)
原著論文7
Hosokawa Y, Yamada Y, Obata Y, et al.
Clinical significance of serum adiponectin in Japanese diabetic patients.
Diabetol Int , 2 , 65-71  (2011)
原著論文8
Tanaka T, Morita A, Kato M, et al.
Cogener-specific polychlorinated biphenyls and the prevalence of diabetes in the Saku Control Obesity Program(SCOP).
Endocrine J , 58 (7) , 589-596  (2011)
原著論文9
Miyake R, Ohkawara K, Ishikawa-Tanaka K, et al.
Obese Japanese adults with type 2 diabetes have higher basal metabolic rates than non-diabetic adults.
J Nutr Sci Vitaminol , 57 , 348-354  (2011)
原著論文10
Iijima K, Iimuro S, Shinozaki T, et al.
Lower physical activity is a strong predictor of cardiovascular events in elderly patients with type 2 diabetes mellitus beyond traditional risk factors: the Tapanese elderly diabetes intervention trial.
Geriatr Gerontol Int , 12 (1) , 77-87  (2012)
原著論文11
Iijima K, Iimuro S, Ohashi Y, et al.
Lower physical activity, but not excessive calorie intake, is associated with metabolic syndrome in elderly with type 2 diabetes mellitus: the Tapanese elderly diabetes intervention trial.
Geriatr Gerontol Int , 12 (1) , 68-76  (2012)
原著論文12
Harada N, Hamasaki A, Yamane S, et al.
Plasma gastric inhibitory polypeptide and glucagon-like peptide-1 levels after glucose loading are associated with different factors in Japanese subjects.
J Diabetes Invest , 2 (3) , 193-199  (2011)
原著論文13
Yamane S, Harada N, Hamasaki A, et al.
Effects of glucose and meal ingestion on incretin secretion in Japanese subjects with normal glucose tolerance.
J Diabetes Invest , 3 (1) , 80-85  (2012)
原著論文14
Binh TQ, Nakahori Y, Hien VT, et al.
Corelations between genetic variance and adiposity measures, and gene x gene interactions for obesity in postmenopausal Vietnamese women.
J Genet , 90 (1) , 1-9  (2011)
原著論文15
Binh PNT, Abe Y, Tien PG, et al.
Plasma NOx concentrations in glucose intolerance and type 2 diabetes: a case-control study in a Vietnamese population.
J Atheroscl Thromb , 18 (4) , 305-311  (2011)
原著論文16
Heianza Y, Hara S, Arase Y, et al.
HbA1c 5.7-6.4% and impaired plasma glucose for diagnosis of prediabetes and risk of progression to diabetes in Japan (TOPICS3): a longitudinal cohort study.l
Lancet , 378 , 147-155  (2011)
原著論文17
Masuda D, Sakai N, Sugimoto T, et al.
Fasting serum apolipoprotein B-48 can be a marker of postprandial hyperlipidemia.
J Atheroscl Thromb , 18 (12) , 1062-1070  (2011)
原著論文18
Nakatani K, Sugimoto T, Masuda D, et al.
Serum apolipoprotein B-48 levels are correlated with carotid intima-media thickness in subjects with normal serum triglycerides levels.
Atherosclerosis , 218 (1) , 226-232  (2011)
原著論文19
Kishida K, Kim KK, Funahashi T, et al.
Relationships between circulating adiponectin levels and fat distribution
J Atheroscl Thromb , 18 (7) , 592-595  (2011)
原著論文20
Shibata Y, Hayasaka S, Yamada T, et al.
Physical activity and risk of fatal or non-fatal cardiovascular disease among CVD survivors: the JMS cohort study.
Circ J , 75 , 1368-1372  (2011)

公開日・更新日

公開日
2015-05-27
更新日
-

収支報告書

文献番号
201104005Z