ウイルス感染症の診断、疫学および予防に関する研究

文献情報

文献番号
201104003A
報告書区分
総括
研究課題名
ウイルス感染症の診断、疫学および予防に関する研究
課題番号
H23-国医・指定-003
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
中込 治(長崎大学 大学院 医歯薬学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 倉根 一郎(国立感染症研究所)
  • 有川 二郎(北海道大学 大学院 医学研究科)
  • 伊藤 直人(岐阜大学 応用生物科学部)
  • 井上 智(国立感染症研究所)
  • 片山 和彦(国立感染症研究所)
  • 苅和 宏明(北海道大学 大学院 獣医学研究科)
  • 小西 英二(大阪大学 微生物病研究所)
  • 小林 宣道(札幌医科大学 医学部)
  • 西條 政幸(国立感染症研究所)
  • 竹上 勉(金沢医科大学 総合医学研究所)
  • 中根 明夫(弘前大学 大学院 医学研究科)
  • 西園 晃(大分大学 医学部)
  • 森田 公一(長崎大学 熱帯医学研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 地球規模保健課題推進研究(国際医学協力研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
11,111,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
アジアにおいて問題となるアルボウイルス感染症、ウイルス性下痢症、ウイルス性出血熱、狂犬病を対象とし、(1)診断法の確立、(2)感染状況の解明、(3)ワクチン開発の基盤の確立、(4)国際的視点での研究体制の確立、を目的とした。
研究方法
研究分担者・研究協力者が、診断法の開発、疫学調査、実験室での解析、学会等にて情報交換を行った。
結果と考察
アルボウイルス感染症研究:ブロッキングELISA法によるウエストナイルウイルス抗体の検出は、特異性が極めて高く日本脳炎との鑑別も可能であり有用であった。蚊から分離した日本脳炎ウイルスの遺伝子解析を行いその変異を解明した。デングウイルス一次感染、二次感染患者の抗体依存性感染増強の保有状況を明らかにした。

ウイルス性出血熱研究:腎症候性出血熱(HFRS)とハンタウイルス肺症候群(HPS)鑑別の診断用ELISA抗原を確立した。エボラ出血熱の血清診断用NP抗原の有用性が確認出来た。

ウイルス性下痢症研究:わが国では、年間3万人のロタウイルス胃腸炎により5歳未満の入院患者が発生し、ワクチンを定期接種に導入している諸外国と同等の疾病負担があることを明らかにした。バングラデッシュのヒトのロタウイルス分離株が動物ロタウイルスとリアソートメントを起こしていたことを明らかにした。GIIノロウイルスと組織血液型抗原であるフコースとの結合様式をウイルスのP領域の構造について解析した。

狂犬病研究:末梢から中枢への遡上能力の低い変異株に、エンベロープに新たな糖鎖付加が生じているが、宿主の免疫から容易に認知される変化であり、治療法開発の糸口になると期待された。狂犬病に対する中和抗体価を迅速・簡便・安価に定性的、半定量的に測定できるイムノクロマト法を開発した。

アジアや米国の研究者との共同研究:ベトナム国立衛生疫学研究所等アジアにある協力機関と共同研究を行った。平成23年6月米国パロアルトにおいて、第45回日米医学ウイルス性疾患専門部会年次会議を開催し、情報交換を行った。本研究における国際的な視点からの感染症研究体制がさらに強化された。
結論
各研究者から集められた情報と成績は、ウイルス感染症の診断や予防対策の立案のための基盤となった。わが国における感染症の発生は、アジアにおける感染症の流行に大きく影響され、感染症の侵入も危惧されている。各国の研究者との情報交換や共同研究をさらに推進させ、有効な予防対策の基盤を確立させる必要がある。

公開日・更新日

公開日
2012-06-06
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201104003C

成果

専門的・学術的観点からの成果
蚊から分離した日本脳炎ウイルスの遺伝子解析を行い変異の様相を解明した。また、デングウイルス一次感染、二次感染患者の抗体依存性感染増強の保有状況を明らかにした。ロタウイルス胃腸炎による5歳未満の疾病負担を明らかにした。さらに、末梢から中枢への遡上能力の低い狂犬病ウイルス変異株に、エンベロープに新たな糖鎖付加が生じていることを発見した。
臨床的観点からの成果
ブロッキングELISA法によるウエストナイルウイルス抗体の検出は、特異性が極めて高く日本脳炎との鑑別も可能であること、腎症候性出血熱(HFRS)とハンタウイルス肺症候群(HPS)鑑別の診断用ELISA抗原を確立したこと、わが国でのロタウイルス胃腸炎の疾病負担を明らかにしたことなど、臨床的に有用である。また、狂犬病ウイルス変異株の解析は、治療法開発の糸口になると期待された。
ガイドライン等の開発
特になし。
その他行政的観点からの成果
4つのウイルス群(アルボウイルス感染症、ウイルス性下痢症、ウイルス性出血熱、狂犬病)を中心に、各研究者から集められた情報と成績は、わが国におけるウイルス感染症の診断や予防対策の立案のための基盤となった。具体的には、公衆衛生政策上必要な、1)腎症候性出血熱(HFRS)とハンタウイルス肺症候群(HPS)流行血清型を全て検出するスクリーニング用抗原と鑑別用ELISA抗原を確立したこと、2)どれだけの児がロタウイルス胃腸炎を発症し、医療機関を受診するかという推定値を得ることができた。
その他のインパクト
急性胃腸炎入院症例の解析結果と、平成22年度の本研究によって行われたブラジルでのワクチンのワクチン有効性調査等の経験は、ワクチンに関して世界に遅れをとっているわが国の医療関係者に還元するため、臨床医に向けた解説記事を発表し、また、小児科医会での講演を行った。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
53件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
44件
学会発表(国際学会等)
54件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計2件
その他成果(特許の取得)
0件
特開2011-50269:狂犬病ウイルスに対するヒト抗体ならびにその医薬組成物。特開2011-72248:狂犬病ウイルスに対するヒト抗体ならびにその組成物。
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Sugiura N, Uda A, Inoue S et al.
Gene expression analysis of host innate immune responses in the central nervous system following lethal CVS-11 infection in mice.
Japanese Journal of Infectious Diseases , 64 (6) , 463-472  (2011)
原著論文2
Kaku Y, Noguchi A, Hotta K et al.
Inhibition of rabies virus propagation in mouse neuroblastoma cells by an intrabody against the viral phosphoprotein.
Antiviral Research , 91 (1) , 64-71  (2011)

公開日・更新日

公開日
2015-05-27
更新日
2016-05-25

収支報告書

文献番号
201104003Z