国際共同基盤研究に応用する抗酸菌感染症研究の整備

文献情報

文献番号
201104001A
報告書区分
総括
研究課題名
国際共同基盤研究に応用する抗酸菌感染症研究の整備
課題番号
H23-国医・指定-002
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
牧野 正彦(国立感染症研究所 感染制御部)
研究分担者(所属機関)
  • 光山 正雄(京都大学 医学部)
  • 吉開 泰信(九州大学生体防御医学研究所)
  • 後藤 正道(国立療養所星塚敬愛園)
  • 谷口 初美(産業医科大学 医学部)
  • 後藤 義孝(宮崎大学 農学部)
  • 瀧井 猛将(名古屋市立大学 薬学部)
  • 大原 直也(岡山大学 歯学部)
  • 岩本 朋忠(神戸市環境保健研究所)
  • 福富 康夫(国立感染症研究所 感染制御部)
  • 岡田 全司(国立病院機構近畿中央胸部疾患センター)
  • 小出 幸夫(浜松医科大学 医学部)
  • 鈴木 定彦(北海道大学人獣共通感染症リサーチセンター)
  • 長谷 篤(大阪市立環境科学研究所)
  • 竹田 潔(大阪大学 医学部)
  • 向井 徹(国立感染症研究所 感染制御部)
  • 慶長 直人(国立国際医療センター研究所)
  • 田村 敏生(国立感染症研究所 感染制御部)
  • 松本 智成(大阪府立呼吸器・アレルギー医療センター)
  • 松本 壮吉(大阪市立大学 医学部)
  • 杉田 昌彦(京都大学ウイルス研究所)
  • 宮本 友司(国立感染症研究所 感染制御部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 地球規模保健課題推進研究(国際医学協力研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
11,111,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
結核・ハンセン病の2大病原性抗酸菌症の制御を最終目的として、基礎的基盤的研究手法を確立し、診断・治療・予防法の新たな、かつアジア諸国への技術移転可能な戦略を樹立する。
研究方法
培養可能な結核菌では、病原性候補遺伝子ノックアウト株を樹立し病変発症機構を解析した。病変発症に関与する宿主因子の検索は、抗原提示又は免疫反応の増幅に関与する因子あるいはサイトカイン及びサイトカインレセプターを標的とした遺伝子改変マウスを用いて検索した。結核菌潜伏感染者の同定は、結核菌感染者の血清を用いて候補分子に対する抗体を測定した。
結果と考察
結核菌潜伏感染者では活動期結核患者に比し抗MDP-1抗体が上昇しており、結核菌を保有する非活動期結核患者の同定が可能となった。結核に対するワクチン開発においては二つの成果が挙がった。一つには、ワクチンのターゲットとなる分子としてMMP-IIが同定された。ESAT6・CFP10に加え新たな主要抗原が同定されたことからワクチン開発の選択肢が広がった。高齢者の再燃型結核の発症を予防するためにはCD8陽性キラーT細胞の活性化が必須であるが、本T細胞の選択的・効率的活性化には、樹状細胞からのIL-17Fの産生が重要であることが判明した。多剤耐性結核菌は全世界にとって恐怖となっている。しかし、結核濃厚流行地の多くは発展途上国にある。そのため、詳細な分子生物学的技法を用いての診断は容易ではない。そこで、多くの濃厚流行国で実施可能な簡便・迅速診断法を開発した。ハンセン病の起因菌であるらい菌は、試験管内では増殖させることができない培養不能菌である。そのため、種々の遺伝子操作ができず病態生理や発症機構の解明の妨げとなっている。そこで、蛍光色素をコードする遺伝子をらい菌に導入するために必要な分子生物学的技法の開発を行い、らい菌に効率的に遺伝子を導入し、蛍光色素を強く発色するらい菌の作出のための基礎的技法を確立した。本研究班の主要目的の一つに、アジア諸国の医療及び研究レベルの向上を図ることがある。抗酸菌に特化した方策として、免疫不全を呈する環境下で結核菌及びらい菌を適切に取り扱う方策について、直接的にアジアの研究者の技術指導等を行った。
結論
アジア諸国の抗酸菌研究者の診断・治療及び予防技術の開発に係る基本技術の移転を図るとともに、国民が抗酸菌の恐怖から逃れるために必要な応用技術の開発を可能とした。

公開日・更新日

公開日
2012-06-06
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201104001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
結核菌がマクロファージに寄生性感染した際に強く発現されるGuanylate-binding protein (GBP) familyの結核菌に対する自然免疫応答における役割を検討するため、相同性が極めて高い11の分子群を全て欠失させた遺伝子欠損マウスを世界で初めて作出した。抗酸菌細胞壁に存在する抗酸菌固有の脂質・糖脂質群を利用した診断法を開発するため、ヒト脂質特異的免疫応答システムを導入し再構築したマウスの作出に成功した。
臨床的観点からの成果
新しい信頼性の高い抗結核ワクチンを作出するためには、自然免疫及び獲得免疫応答の両者を賦活する免疫原性に富んだ結核菌主要抗原の同定が必須である。現在注目されているESAT6等の分子は、この点不十分である。初めて必要条件を満たす膜蛋白が同定され、結核ワクチンの開発が容易となった。結核は、細胞性免疫応答能が減弱する高齢者では大きな恐怖である。易発症高リスク者は体内に結核菌を保有し潜伏感染の状況にある。今回、血清診断法により生体内に結核を保有する感染者を同定する方法が見出された。
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
アジア地域の抗酸菌研究及び医療技術の向上を目指し、多剤耐性菌感染による難治性結核患者の治療に伴う免疫学的生体防御反応活性化誘導能を測定する技術をベトナムを中心に移転した。
その他のインパクト
マスコミ等で取り上げられたことはなかった。しかし、日米合同会議は日本で開催されたため、日本及びアジア諸国の抗酸菌研究者に一般公開された。凡そ90名の研究者が参加し、熱心な質疑応答が繰り広げられた。

発表件数

原著論文(和文)
7件
原著論文(英文等)
25件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
50件
学会発表(国際学会等)
57件
その他成果(特許の出願)
3件
「出願」「取得」計3件
その他成果(特許の取得)
3件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Y. Tsukamoto, M. Endoh, T. Mukai,et al
Immunostimulatory activity of major membrane protein II from Mycobacterium tuberculosis
Clin. Vaccine Immunol. , 18 , 235-242  (2011)
原著論文2
N. Nakata, M. Kai, M. Makino.
Mutation analysis of the Mycobacterium leprae folP1 gene and Dapsone resistance.
Antimicrobial Agents and Chemotherapy , 55 , 762-766  (2011)
原著論文3
S. Seto, K. Tsujimura, Y. Koide
Rab GTPases regulating phagosome maturation are differentially recruited to mycobacterial phagosomes
Traffic , 12 , 407-420  (2011)
原著論文4
K. Sugaya, S. Seto, K. Tsujimura, et al
Mobility of late endosomal and lysosomal markers on phagosomes analyzed by fluorescence recovery after photobleaching
Biochem Biophys Res Commun , 410 , 371-375  (2011)
原著論文5
M. Okada, Y. Kita, T. Nakajima, et al
Novel prophylactic vaccine using a prime-boost method andhemagglutinating virus of Japan-envelope against tuberculosis
Clin. Dev. Immunol , 2011  (2011)
原著論文6
N. Pitabut. S. Mahasirimongkol, H. Yanai, et al
Decreased plasma granulysin and increased interferon-gamma concentrations in patients with newly diagnosed and relapsed tuberculosis
Microbiol. Immunol. , 55 , 565-573  (2011)
原著論文7
H. Saiga, Y. Shimada, K. Takeda
Innate immune effectors in mycobacterial infection
Clin. Dev. Immunol , 2011  (2011)
原著論文8
M. Takatsuka, M. Osada-Oka, E. F. Satoh, et al
A Histone-Like Protein of Mycobacteria Possesses Ferritin Superfamily Protein-Like Activity and Protects against DNA Damage by Fenton Reaction
PLoS. One , 6  (2011)
原著論文9
Y. Ozeki, Y. Hirayama, T. Takii, et al
Loss of anti-mycobacterial efficacy in mice over time following vaccination with Mycobacterium bovis bacillus Calmette-Guerin
Vaccine , 29 , 6881-6887  (2011)
原著論文10
A. Takeuchi, T. Dejima, H. Yamada, et al
IL-17 production by γδ T cells is important for the antitumor effect of Mycobacterium bovis bacillus Calmette-Guérin treatment against bladder cancer
Eur. J. Immunol. , 41 , 246-251  (2011)
原著論文11
K. Shibata, H. Yamada, T. Sato, et al
Notch-Hes1 pathway is required for the development of IL-17-producing γδ T cells.
Blood , 118 , 586-593  (2011)
原著論文12
T. Komori, T. Nakamura, I. Matsunaga, et al
A microbial glycolipid functions as a new class of target antigen for delayed-type hypersensitivity
J. Biol. Chem. , 286 , 16800-16806  (2011)
原著論文13
S. Daim, I. Kawamura, K. Tsuchiya, et al
Expression of the Mycobacterium tuberculosis PPE37 protein in Mycobacterium smegmatis induces low tumour necrosis factor alpha and interleukin 6 production in murine macrophages
J. Med. Microbiol. , 60 , 582-591  (2011)
原著論文14
H. Kim, C. Nakajima, K. Yokoyama, et al
Impact of the E540V amino acid substitution in GyrB of Mycobacterium tuberculosison Quinolone Resistance
Antimicrob. Agents Chemother. , 55 , 3661-3667  (2011)
原著論文15
M. B. Hang’ombe, C. Nakajima, A. Ishii, et al
Rapid detection of Mycobacterium tuberculosis complex in Cattle and Lechwe (Kobus leche kafuensis) at the slaughter house
Vet. Sci. Dev. , 1  (2011)
原著論文16
J. Wang, C. L. Zhang, L. Z. Zhang, et al
Genotypes and characteristics of clustering and drug-susceptibility of Mycobacterium tuberculosis isolates in Heilongjiang Province, China
J. Clin. Microbiol. , 49 , 1354-1362  (2011)
原著論文17
Y. Fukutomi, Y. Maeda, M. Makino.
Apoptosis-inducing activity of clofazimine in macrophages
Antimicrob Agents Chemother. , 55 , 4000-4005  (2011)
原著論文18
Y. Horita, T. Takii, R. Kuroishi, et al
Synthesis and evaluation of anti-tubercular activity of new dithiocarbamate sugar derivatives
Bioorg. Med. Chem. Lett. , 21 , 899-903  (2011)
原著論文19
T. Tabuchi, T. Takatorige, Y. Hirayama, et al
Tuberculosis infection among homeless persons and caregivers in a high-tuberculosis-prevalence area in Japan: a cross-sectional study
BMC Infectious Diseases , 11 , 22-  (2011)
原著論文20
N. T. Hang, L. T. Lien, N. Kobayashi, et al
Analysis of factors lowering sensitivity of interferon-gamma release assay for tuberculosis
PLoS One , 6  (2011)

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
2016-05-30

収支報告書

文献番号
201104001Z