水供給分野の国際協力における総合援助手法に関する研究

文献情報

文献番号
201103002A
報告書区分
総括
研究課題名
水供給分野の国際協力における総合援助手法に関する研究
課題番号
H21-地球規模・一般-003
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
国包 章一(静岡県立大学 環境科学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 浅見 真理(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
  • 北脇 秀敏(東洋大学 国際地域学部)
  • 橋爪 真弘(長崎大学 熱帯医学研究所)
  • 戸敷 浩介(静岡県立大学 環境科学研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 地球規模保健課題推進研究(地球規模保健課題推進研究)
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
4,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
開発途上国の水道等飲料水供給施設の整備に関する国際協力においては、自立発展性や持続可能性の確保が重要である。本研究の目的は、水供給施設の整備と村落開発における井戸の掘削や生活改善指導、保健指導等との連携を深め、財政的な面においても自立し得る、総合援助手法としての効果的な国際協力のあり方を明らかにすることである。
研究方法
昨年度に引き続き、水供給分野の総合援助手法等に関する基礎情報を収集・整理するとともに、水道等水供給施設の整備や生活改善にかかる国際協力につき、文献調査、現地調査等を行い、水供給と地域保健の効果的な連携方法を検討した。
結果と考察
水と衛生に関しては、水管理のガバナンスの向上やアセットマネジメント等が先進国、途上国を通じて重要な課題であり、日本による技術的なサポート、知見の提供、協力等が求められている。最近の話題として、2011年のタイの洪水による衛生状態の悪化や下痢症の増加傾向につき明らかにした。別の事例研究として、ダッカにおけるデング熱の流行につきデータ解析し、河川水位の上昇、低下の両方に関連する要因によってデング熱入院患者が増加していることを実証した。水道のない世帯では、洪水により家屋内で水の貯め置きをすることにより水瓶で媒介蚊が繁殖し、デング熱罹患リスクが高まると考えられた。バングラデシュ村落部の地下水砒素汚染地域における安全な水供給手法については、深井戸のように初期投資額が高価でも多数世帯で共同利用すれば、1世帯当りの支出額は負担可能な範囲に十分に収まることを示した。また、カンボジア村落部における地下水砒素汚染については、バングラデシュにおける過去の経緯と対比しつつ、現状とその改善に向けた取り組みの状況等につき最新の情報を整理した。最後に、3年間にわたる研究の全成果を踏まえて、水供給プロジェクトにおける自立性及び持続性確保のための条件として、1) 住民の意識啓発・組織化とプロジェクトへの主体的参画、2) 適正技術の採用と住民及びその他関係者の能力開発、3) 財政的な自立性の確保、4) 行政などによる外部からの運営面及び技術面での支援体制の確立、及び5) 他セクターとの連携・協働の5つを取りまとめるとともに、それぞれにつき考察を加えた。
結論
水と衛生は依然として重要な課題である。MDGsの目標年度2015年は間近に迫っているが、問題はまだ山積しており、今後より強力な取り組みが必要とされている。

公開日・更新日

公開日
2012-06-19
更新日
-

文献情報

文献番号
201103002B
報告書区分
総合
研究課題名
水供給分野の国際協力における総合援助手法に関する研究
課題番号
H21-地球規模・一般-003
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
国包 章一(静岡県立大学 環境科学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 浅見 真理(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
  • 北脇 秀敏(東洋大学 国際地域学部)
  • 橋爪 真弘(長崎大学 熱帯医学研究所)
  • 戸敷 浩介(静岡県立大学 環境科学研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 地球規模保健課題推進研究(地球規模保健課題推進研究)
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
開発途上国の水道等飲料水供給施設の整備に関する国際協力においては、自立発展性や持続可能性の確保が重要である。本研究の目的は、水供給施設の整備と村落開発における井戸の掘削や生活改善指導、保健指導等との連携を深め、財政的な面においても自立し得る、総合援助手法としての効果的な国際協力のあり方を明らかにすることである。
研究方法
昨年度に引き続き、水供給分野の総合援助手法等に関する基礎情報を収集・整理するとともに、水道等水供給施設の整備や生活改善にかかる国際協力につき、文献調査、現地調査等を行い、水供給と地域保健の効果的な連携方法を検討した。
結果と考察
水道分野の総合援助手法に関する情報を収集整理し、人間開発型アプローチ、社会制度構築、援助の効率的実施、オーナーシップ強化、分野間連携等の重要性を確認した。開発途上国の水供給・水環境と感染症リスクにつき2つの事例研究を行い、洪水による浸水集落では非浸水集落に比べ洪水期間中の下痢発症率が有意に高いこと、河川水位の上昇、低下の両方に関連する要因によってデング熱入院患者が増加していることを実証した。地下水砒素汚染問題が顕在化しつつあるカンボジアでは、バングラデシュと同様な事態が時間遅れで進行していることを明らかにした。また、バングラデシュにおける代替案の経済的妥当性の検討から、深井戸のように初期投資額が高価でも多数世帯で共同利用すれば、1世帯当りの支出額は負担可能な範囲に十分に収まることを示した。このほかバングラデシュで、わが国の援助で総合的アプローチにより行われた砒素汚染対策プロジェクトとその後のフォローアップ・成果普及活動が、大きな成果を上げていることを明らかにした。以上の研究成果を踏まえて、水供給プロジェクトにおける自立性及び持続性確保のための条件として、1) 住民の意識啓発・組織化とプロジェクトへの主体的参画、2) 適正技術の採用と住民及びその他関係者の能力開発、3) 財政的な自立性の確保、4) 行政などによる外部からの運営面及び技術面での支援体制の確立、及び5) 他セクターとの連携・協働の5つを取りまとめるとともに、それぞれにつき考察を加えた。
結論
水と衛生は依然として重要な課題である。MDGsの目標年度2015年は間近に迫っているが、問題はまだ山積しており、今後より強力な取り組みが必要とされている。

公開日・更新日

公開日
2012-06-19
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201103002C

成果

専門的・学術的観点からの成果
開発途上国においては、水供給や水環境が水系感染症などのリスクと深く関わっていることが考えられる。本研究では、バングラデシュのダッカを対象に、洪水と下痢発症率及び河川水位とデング熱患者数の関係について疫学的な観点からデータ解析を行い、いずれについても有意な結果を得ている。これらの成果については、学術雑誌に研究論文をすでに発表しているかあるいは現在投稿中である。このほか、開発途上国での家庭用浄水器による処理が下痢症予防に対する効果について文献調査したが、エビデンスが不十分であるとの結果を得ている。
臨床的観点からの成果
本研究では、バングラデシュ及びカンボジアにおける地下水砒素汚染問題に焦点を当てて、それぞれ数回にわたる現地調査などを実施した。これらを通して、現地における地下水の砒素汚染の現状、慢性砒素中毒による健康被害の実態、わが国の国際協力機構を始めとする援助機関やNGOなどによる取り組みとその成果、現状における問題点と今後の課題、さらには地域住民自らの費用負担による代替水供給施設整備の可能性など、様々な面について実証的に明らかにした。
ガイドライン等の開発
本研究の全体的な成果を踏まえて、開発途上国に対する国際援助としての水供給プロジェクトにおいて自立性及び持続性確保のための条件について検討した結果、一般に、(1) 住民の意識啓発・組織化とプロジェクトへの主体的参画、(2) 適正技術の採用と住民及びその他関係者の能力開発、(3) 財政的な自立性の確保、(4) 行政などによる外部からの運営面及び技術面での支援体制の確立、及び、(5) 他セクターとの連携・協働が重要であることを明らかにした。今後、この知見の活用が大いに期待される。
その他行政的観点からの成果
本研究では、バングラデシュにおいてアジア砒素ネットワークが国際協力機構のもとで実施した一連の砒素汚染対策プロジェクトの経緯と実績について詳細に検討し、総合的アプローチによる援助の実践事例としてこれを高く評価した。このことを受けて、国際厚生事業団による「MDGs達成に向けた分野間連携に関する検討報告書」(平成24年3月、厚生労働省委託事業)では、これらのプロジェクトが、水供給分野を中心とした分野間連携の注目すべき好事例として大きく取り上げられた。
その他のインパクト
本研究の成果について、平成21年度厚生労働科学研究費地球規模保健課題推進研究事業国際シンポジウム「MDG4・5達成に向けての地球規模保健課題への対応」(2010年3月30日、東京)、平成22年度静岡県立大学公開講座「生命と環境」(2010年11月27日、沼津)、静岡県立大学・フエ大学学術交流セミナー(2011年1月26日、ベトナム・フエ)などにおいて発表した。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
3件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
4件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
眞子岳、北脇秀敏、モハメド・マフィズル・ラーマン
バングラデシュ農村部における経済的に妥当な代替水の選択に関する研究
農村計画学会誌 , 30 , 213-218  (2011)
原著論文2
Milojevic A, Armstrong B, Hashizume M, et al.
Health effects of flooding in rural Bangladesh
Epidemiology , 23 , 107-115  (2012)

公開日・更新日

公開日
2015-05-28
更新日
-

収支報告書

文献番号
201103002Z