周産期女性の社会経済的地位(socioeconomic status)と女性の健康および胎児感情との関連について

文献情報

文献番号
201101039A
報告書区分
総括
研究課題名
周産期女性の社会経済的地位(socioeconomic status)と女性の健康および胎児感情との関連について
課題番号
H23-政策・一般-004
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
江守 陽子(筑波大学医学医療系)
研究分担者(所属機関)
  • 小泉仁子(筑波大学医学医療系)
  • 村井文江(筑波大学医学医療系)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
2,340,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
周産期医療の現場では妊娠可能な女性の経済的困窮が、妊婦健康診査の未受診、飛び込み分娩、分娩費用未払い等の現象として少なからず発生していることが指摘され、問題となっている。本研究の目的は、社会経済的地位(socioeconomic status ; SES)と、妊娠中の女性の心理状態や妊娠・分娩状況とが関連しているか否かについて検討し、妊娠・分娩という女性のライフイベントにおける支援の方法を検討することにある。
研究方法
質問票を用いて、妊娠期と産褥期の2回に分けて調査した。調査内容は、妊婦に対し、(1)精神状態:うつ病自己評価表、胎児愛着、人生満足度を調査した、また、分娩終了後に、(2)妊娠・分娩経過と、(3)SESの状況を調査した。妊娠期調査では225部(回収率:85.2%)の質問票を回収した。分娩終了後には192人(実施率は90.1%)が回答に応じた。最終的に分析が可能なデータ数は151件であった。
結果と考察
対象者の学歴は中学校修了者15名(10.0%)、高等学校修了者は60名(40.0%)で、全体に最終学歴が低く、家計のゆとり感は、経済的困難感と世帯収入の印象と相関があった。また、SESは抑うつ傾向と関係があった。
一方、妊娠診断が12週以降であったものは、対象者およびパートナー双方の学歴が低く、妊婦自身が無職であり、抑うつ傾向にあり、経済的困難感を自覚するものが多かった。経済的困窮感や満足感は、年収の金額よりも満足度をよく反映するといわれる。したがって、対象者自身が感じる経済的困窮感やゆとりがないという感覚が、妊娠期の抑うつ傾向を強め、結果として胎児に対する愛着形成を阻害する可能性がある。経済的にゆとりがない、あるいは苦しい、という自覚に注目することは、女性の置かれた生活背景や状況を把握する糸口になり、それによってサポート提供が可能となると考える。
結論
本研究ではSESとEPDSに関連がみられたが、胎児愛着は関連していなかった。これまで、国内では周産期の女性のSESと、心理状態や妊娠・分娩状況との関連をみた研究は見当たらず、本研究により両者の関連を検討したことは大きな意義がある。これらの成果は即効的に行政施策に活用されるものではないが、我が国の妊産婦と乳幼児に対する健康増進と安寧のために立てられるべき保健・医療行政施策の基礎資料となる。

公開日・更新日

公開日
2012-11-29
更新日
-

収支報告書

文献番号
201101039Z