健康と医療の地域格差とその収斂に関する経済分析と政策評価

文献情報

文献番号
201101017A
報告書区分
総括
研究課題名
健康と医療の地域格差とその収斂に関する経済分析と政策評価
課題番号
H22-政策・一般-011
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
姉川 知史(慶應義塾大学 大学院経営管理研究科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
1,416,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 健康と医療に関しては大きな地域格差が存在し,医療資本のようなインプットについては地域格差が大きいのに対して,そのアウトプットである平均余命の地域格差は小さいことを説明する必要がある。また,健康水準は性別,年齢,所得,職業,その他の個人属性等の社会的要因によって個人間で異なることが知られているが,必ずしも明快な答えがなく,これを明らかにする必要がある。厚生労働省の『国民生活基礎調査』はこのような目的に包括的データを提供する。さらに,健康と医療の地域格差が長期的収斂の有無,収斂の速度を明らかにする。
研究方法
この研究では,第1に主観的健康水準を表す健康指標に注目して,その指標としての性質を検討した。第2に,医療に関する地域間格差の収斂を検討した。また,主観的健康指標として,国民生活基礎調査の「ストレス」に関係する質問項目を平均した「ストレス指標」を作成し,その傾向を明らかにし,さらに決定要因を検討した。
結果と考察
 健康意識と密接に関連する主観的健康指標として「悩み・ストレス」の要因の重要性が示された。ここで,国民生活基礎調査の個票を使用した健康の決定要因の研究を実施したが,被説明変数と説明変数の内生性の問題が回避できなかった。さらに,長期収斂の理論モデルを検討し,都道府県データを用いたモデルを修正し,さらに市町村データに拡張した。市町村データを使用する場合,平成の市町村合併によって,1995年以降,2006年の間に市町村数は半減したという問題,あるいは政策主体としての市町村と,医療の地域単位が必ずしも一致しないため,医療費,医療サービスの収斂の原因として政策の影響が曖昧になった。国民生活基礎調査には,主観的健康度に関する包括的調査であり,主観的健康指標と客観的健康指標を組み合わせる研究が可能である。
結論
 本研究によって,主観的健康水準を表示する健康度指標を利用した研究が可能であることが示された。国民生活基礎調査は,この主観的健康指標の他に,性別,年齢,世帯構成,婚姻,生活様式,就業,所得,貯蓄といった個人属性,悩み・ストレスとその原因,有訴とその症状,入院と通院の有無,通院の原因となる傷病等のデータがあり,それらの個票データを用いた統計的分析を行うことは有望であることが示された。このとき,年齢,性別,地域等の属性の影響の大きさが示された。また,医療の地域格差については,市町村データを用いた研究が可能であることを示せたが,市町村データの制約,ならびに市町村合併の影響で,都道府県ほど明確な結論は示されなかった。

公開日・更新日

公開日
2012-11-27
更新日
-

文献情報

文献番号
201101017B
報告書区分
総合
研究課題名
健康と医療の地域格差とその収斂に関する経済分析と政策評価
課題番号
H22-政策・一般-011
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
姉川 知史(慶應義塾大学 大学院経営管理研究科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 医療費等の地域格差に関する既存研究ではいくつかの疑問が残されている。第1は,医療の成果である健康状態の地域格差について十分な検討がなされていない点である。第2は,健康水準が,性別,年齢,所得,職業その他の個人属性等の社会的要因によってどのように決定されるかである。第3は,医療費等の地域格差の長期的に収斂の有無,収斂の速度である。これらの疑問を検討するために,この研究では地域格差について次の研究を行った。第1に,主観的健康水準を表す健康指標に注目して,その指標としての性質を検討した。第2に,主観的健康水準の社会的決定要因を分析した。第3に,医療に関する地域間格差の収斂を検討した。

研究方法
 この研究は2年計画で実施した。第1に,厚生労働省大臣官房統計情報部『平成19年国民生活基礎調査,第2巻全国編(健康,介護)』の集計表データを使用して,各種の指標のパターンを検討した。第2に,「健康意識」と「悩み・ストレス」の決定要因分析を,『平成19年国民生活基礎調査』の個票の使用申請をして,世帯票,所得票,健康票の3つを結合したデータ・セットを作成し,統計的分析を行った。第3に,経済成長論の「収斂理論(convergence theory)理論を採用し,地域格差の水準と収斂に関する統計分析を行った。
結果と考察
 第1に,健康意識と他の変数の関係については,健康意識は年齢とともに低下し,女性の健康意識は男性を下回る等のパターンが得られた。健康意識に関連する代替的健康指標として「悩み・ストレス」の要因の重要性が示された。例えば健康意識が低く,健康状態が低い個人は,収入・家計・借金等による悩み・ストレスが大きくなる傾向があった。
 第2に,国民生活基礎調査の個票を使用した主観的健康意識の決定要因分析では,既存研究と同様の結果が得られたが,推定方法の重要な制約が残った。なかでも内生性の問題を回避する方法を検討した。
 第3に,長期収斂の理論モデルを検討した。研究担当者が開発した,都道府県データを用いたモデルを修正し,市町村データを使用する方法を検討し,収斂と収斂の速度を示した。
結論
 主観的健康意識の重要性,ならびにその決定要因,地域格差健康水準の地域格差の収斂が示された。しかし,主観的健康水準の決定要因については内生性の問題を回避するには至らなかった。また,効果的な政策を実施するには,国民生活基礎調査のようなデータに対する研究者のアクセスを容易にすることが必要である。

公開日・更新日

公開日
2012-11-27
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201101017C

成果

専門的・学術的観点からの成果
 国民生活基礎調査を用いて,主観的健康指標の他に,性別,年齢,世帯構成,婚姻,生活様式,就業,所得,貯蓄といった個人属性,悩み・ストレスとその原因,有訴とその症状,入院と通院の有無,通院の原因となる傷病等のデータを個票データとして用いた統計的分析の可能性を示した。医療の地域格差については,都道府県データを用いた研究によって,地域格差とその収斂の理論的可能性を示したが,市町村データではその制約,ならびに市町村合併の影響で,都道府県ほど明確な結論は示されなかった。

臨床的観点からの成果
該当せず。
ガイドライン等の開発
該当せず。
その他行政的観点からの成果
なし。
その他のインパクト
なし。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
1件
Anegawa Tomofumi, “Geographical Convergence of Medical Services and Social Capital,”
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
1件
Anegawa T. Geographical Variance and Convergence of Medical Services and Social Capital,日本経済学会 2010
学会発表(国際学会等)
2件
Anegawa T. Geographical Convergence of Medical Services and Social Capital, ECHE 2010
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2016-06-13
更新日
-

収支報告書

文献番号
201101017Z