文献情報
文献番号
201101014A
報告書区分
総括
研究課題名
所得水準と健康水準の関係の実態解明とそれを踏まえた医療・介護保障制度・所得保障制度のあり方に関する研究
課題番号
H22-政策・一般-008
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
泉田 信行(国立社会保障・人口問題研究所 社会保障応用分析研究部)
研究分担者(所属機関)
- 山田 篤裕(慶應義塾大学経済学部)
- 中村 さやか(名古屋大学大学院経済学研究科)
- 野田 寿恵(国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所)
- 近藤 尚己(山梨大学大学院医学工学総合研究部)
- 府川 哲夫(田園調布学園大学人間福祉学部)
- 川越 雅弘(国立社会保障・人口問題研究所企画部)
- 野口 晴子(国立社会保障・人口問題研究所社会保障基礎理論研究部)
- 小島 克久(国立社会保障・人口問題研究所国際関係部)
- 菊池 潤(国立社会保障・人口問題研究所社会保障応用分析研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
4,664,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究の目的は個人属性を踏まえた所得と健康の関係を明らかにすることにより、所得保障のあり方を踏まえた医療保障制度のあり方を具体的に示すこと。
研究方法
公的統計やレセプトデータおよび独自調査、インタビュー調査を用いて、健康と所得およびその他の社会経済変数との間の関係について統計的に分析する。その結果について、学際的な観点から検討する。
結果と考察
研究実施により得られた成果について抜粋すると次のとおり。
①国民生活基礎調査を用いて、健康と所得の同時決定性を踏まえて推定を行うと、貧困状態・就労状態と主観的健康の間に有意な関係は観察されなかったが、精神的健康に有意な負の効果を与えることが観察された。②うつ病の事例においては、発症前に最大月間超過勤務が80時間以上となる者が、6割を超えていた。うつ病発症によって所得が低下する群の特徴は、男性、精神科主診断が反復性うつ病性障害、精神科入院歴であった。また、ルーチンワークをこなす仕事の者が多かった。③三大疾病の発症は中高齢者の無職確率の約52-83%ポイントの上昇,労働市場からの退出確率の約57%ポイントの上昇,週当たり労働時間の約17時間の短縮をもたらしていた。④自治体データでは乳幼児医療費助成制度が特定の診療科への通院について影響を与える可能性が示唆されたが、公的統計では明確な結果を得られなかった。⑤市町村国保データの分析から、医療費に対する世帯所得の効果は、加入資格の取得・喪失をコントロールすると大幅に減少することが観察された。また、健康状態の悪い若年・中年層が、国民健康保険と被用者保険との間を往来している実態を示唆する結果が得られた。
就労が精神的健康に対して負の影響を与えることと、多くのうつ病発症ケースで発症前の最大月間超過勤務が80時間以上であることは極めて整合的であると考えられた。うつ病での所得低下群には就労条件の変更が難しい者が多かった。生活習慣病罹患の場合、無職・退職確率の増大等により所得が顕著に低下していると考えられた。
①国民生活基礎調査を用いて、健康と所得の同時決定性を踏まえて推定を行うと、貧困状態・就労状態と主観的健康の間に有意な関係は観察されなかったが、精神的健康に有意な負の効果を与えることが観察された。②うつ病の事例においては、発症前に最大月間超過勤務が80時間以上となる者が、6割を超えていた。うつ病発症によって所得が低下する群の特徴は、男性、精神科主診断が反復性うつ病性障害、精神科入院歴であった。また、ルーチンワークをこなす仕事の者が多かった。③三大疾病の発症は中高齢者の無職確率の約52-83%ポイントの上昇,労働市場からの退出確率の約57%ポイントの上昇,週当たり労働時間の約17時間の短縮をもたらしていた。④自治体データでは乳幼児医療費助成制度が特定の診療科への通院について影響を与える可能性が示唆されたが、公的統計では明確な結果を得られなかった。⑤市町村国保データの分析から、医療費に対する世帯所得の効果は、加入資格の取得・喪失をコントロールすると大幅に減少することが観察された。また、健康状態の悪い若年・中年層が、国民健康保険と被用者保険との間を往来している実態を示唆する結果が得られた。
就労が精神的健康に対して負の影響を与えることと、多くのうつ病発症ケースで発症前の最大月間超過勤務が80時間以上であることは極めて整合的であると考えられた。うつ病での所得低下群には就労条件の変更が難しい者が多かった。生活習慣病罹患の場合、無職・退職確率の増大等により所得が顕著に低下していると考えられた。
結論
疾病罹患(健康水準の低下)から所得低下となるケースが見られたが、これを防ぐためには、適切な働き方の確保や生活習慣病の予防が一義的に重要であるが、疾病に罹患しても働き続けられる仕組みの構築も重要であると考えられた。子どもの医療機関受診について乳幼児医療費助成制度を含めてより深く検討する必要があると考えられた。
公開日・更新日
公開日
2012-11-02
更新日
-