DV対策など、女性支援施策の効果的展開に関する調査研究

文献情報

文献番号
201101005A
報告書区分
総括
研究課題名
DV対策など、女性支援施策の効果的展開に関する調査研究
課題番号
H21-政策・一般-011
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
戒能 民江(お茶の水女子大学 ジェンダー研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 湯澤 直美(立教大学コミュニティ福祉学部)
  • 堀 千鶴子(城西国際大学福祉総合学部)
  • 吉田 容子(立命館大学法科大学院)
  • 齋藤 百合子(明治学院大学国際学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
5,513,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、DVなど女性に対する暴力を中心に、国及び地方自治体の女性支援策の現状分析を行い、女性支援政策の効果的展開に資する政策提言を行うことを目的とする。23年度は研究事業最終年であり、研究チーム全員が参加する「連携研究」を中心に調査研究を行い、研究の集約と統合に努めた。
研究方法
第一に、全国47都道府県の婦人相談所一時保護所の運営と支援および利用者の実態について郵送によるアンケート調査を行い、公的な支援体制改善の方向および被害者支援方策を検討した。第二に、東日本大震災被災地(岩手・宮城)における女性支援の現状と課題を把握するために現地ヒアリング調査を実施した。第三に、韓国調査を行い、多文化家族支援と単親家族支援事業の現状、およびDV法改正動向を把握して日本の政策への参照可能性を検討した。さらに、外国籍被害女性支援について、官民双方の支援機関の専門家との意見交換を行った。
結果と考察
婦人相談所一時保護所の運営体制については、職員構成の偏りと地域間格差、疾病や障害のある女性への利用制限が一般的なことが顕著であった。支援についても地域間格差が著しく、とくに利用者の生活支援、同伴児保育・学習支援プログラム実施率が低かった。分析の結果、原因として、支援のナショナル・スタンダードや専門性の欠如、一時保護制度そのもの限界などを指摘し、制度改革の必要性を提言した。また、利用者調査からは、暴力加害者の多様性と被害者の抱える困難の複合性が明らかになった。公営シェルターと民間シェルターとの比較では、民間は短期と中期を併せ持つ支援機能を果たしている一方、公営は一時保護期間が短く多様なニーズを持つ利用者の混在で困難に直面している。被災地調査では、仮設住宅移転後、DV相談が増加し始め、避難生活の長期化に伴う被害の増加・深刻化が懸念された。他方で、人員不足や諸機関の連携の欠如など支援体制は十分ではなく、被災後の独自の支援体制の必要性が明らかになった。韓国調査では、外国人政策が多文化家族支援政策へシフトしていることが明らかになり、多文化家族支援は家族単位の限定的な社会統合政策であることを指摘した。
結論
本研究結果は、公営シェルターの運営支援体制・内容の改善、制度改革のために有効な政策委提言を行うとともに、支援者の研修プログラムなどに活用できる。

公開日・更新日

公開日
2012-10-31
更新日
-

文献情報

文献番号
201101005B
報告書区分
総合
研究課題名
DV対策など、女性支援施策の効果的展開に関する調査研究
課題番号
H21-政策・一般-011
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
戒能 民江(お茶の水女子大学 ジェンダー研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 湯澤 直美(立教大学コミュニティ福祉学部)
  • 堀 千鶴子(城西国際大学福祉総合学部)
  • 吉田 容子(立命館大学法科大学院)
  • 齋藤 百合子(明治学院大学国際学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
2001年DV法の制定から10年経過した。被害の顕在化や安全確保の充実など、一定の前進がみられる一方で、不十分な一時保護機能、進まない自立支援、市町の支援体制の不十分さ、関係諸機関の連携の遅れなど、被害者支援システムの未整備が明らかになってきた。本研究では、以上の課題を踏まえ、支援の現状と課題を明らかにし、支援モデルを構築することによって、支援現場での喫緊の課題の解決をめざして政策提言を行うことを目的とする。
研究方法
第一に、全国の地方自治体および民間団体の事例調査を通じて、地域における支援政策および関係諸機関の連携の現状と問題点を明らかにした。次に、3班の連携事業として、全国の民間シェルターおよび公営シェルターの利用者調査を行い、DV等の被害実態と被害者の生活課題を明らかにして、支援政策改善の基礎資料を得た。公営シェルターについては、その組織体制と運営についても調査を行い、支援体制の改善の方向を検討した。さらに、研修モデルの検討や国内外の先進的な好事例を収集・検討した。
結果と考察
民間シェルターでは入所期間が比較的長く、継続的な支援を行っている。また、官民シェルターの共通課題として、暴力被害の多様性、生活課題の複合性や子どもの暴力被害の深刻さが浮き彫りになった。公営シェルターでは、入所時の精神疾患の多さ、男児や車いすの人などの入所制限も多く、職員体制や専門性の確保、支援プログラムの整備による地域間格差の是正が課題である。地方自治体のDV対策の促進には、民間との連携強化や独自の支援事業、外国籍女性支援事業など好事例の共有が望まれる。外国籍女性支援については、韓国の多文化家族支援政策が参照可能である。効果的な女性支援を行うためには、DV法改正にとどまらず、婦人保護事業の根本的見直しと現代型女性支援事業の構築が焦眉の課題である。
結論
本研究結果は、公営シェルターにおける支援のナショナル・スタンダードの設定、DVセンターおよび相談員の専門性の明確化、一時保護所での支援内容の改善、生活支援・自立支援のためのソーシャルワーク(多文化含む)など、国の女性支援政策転換に有効な政策提言を行うとともに、外国籍女性への支援者研修プログラムなどに活用できる。また、好事例や官民連携モデルの提示によって、生活再建の受け皿である地方自治体のDV被害者支援政策展開のための基礎的情報となることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2012-10-31
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2013-03-06
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201101005C

成果

専門的・学術的観点からの成果
DVを中心とした女性への暴力の実態と生活再建の困難について、はじめて全国データから現状を明らかにして分析した結果、暴力被害の複合的構造を提示した。さらに、婦人保護事業の問題点の抽出を通じて、従来周縁化されてきた女性支援領域を中核とした独立の学問領域「女性福祉学」確立へ向けて土台を構築した。また、グローバル化の進行に伴い増加している外国籍女性特有の脆弱性と支援の現状を分析することで、移住女性研究に貢献するとともに、外国人女性を含めた女性支援の枠組みの必要性を提示した。
臨床的観点からの成果
全国の公営シェルターの運営・支援体制および支援プログラムを調査・分析した結果、組織体制や支援内容の地域間格差、組織構成の偏り、職員の専門性の弱さ、支援の基準や運営指針の欠落などを指摘し、女性支援の周縁化と支援政策の枠組みの欠如を要因として指摘した。また、地域間格差の改善のために、自治体独自のDV政策や民間と行政との連携、および外国籍被害者支援政策における好事例を抽出した。さらに、シェルター利用者の被害実態と生活課題を明らかにしたことで、被害者のニーズに応じた支援方法を提示した。
ガイドライン等の開発
婦人相談所の基礎資料である「事業概要」調査を実施した結果、記載項目が不統一であった。各地域の被害および支援の実態を明らかにし、その社会的役割を周知するために、「事業概要」へ記載すべき基本的項目を提示した。また、自治体における外国籍女性支援者のための研修プログラムを開発した。
その他行政的観点からの成果
すべての都道府県婦人相談所一時保護所(公営シェルター)の運営・支援体制を調査分析し、疾病や障害のある場合などの利用制限の詳細な状況、同伴児の支援プログラム実施率の低さ、利用者の困難な状況および職員の要望・意見等をデータとして示したことで、人員、専門性の確保、支援プログラムの充実などの予算要求策定の基礎資料として活用できる。また、婦人保護事業の制度改善のための基礎資料として活用予定である。
その他のインパクト
本研究成果は22年度、23年度の2回にわたってシンポジウムを開催して専門家および市民に周知し、その結果は新聞報道された。また、国の主催する相談員・管理職研修の企画に反映させると同時に講演し、また、自治体での研修・講演も行い、支援スタッフや行政の担当者へ成果を還元した。さらに、自治体のDV基本計画策定にも中心的に参画して地域のDV政策に研究成果を反映させた。

発表件数

原著論文(和文)
17件
原著論文(英文等)
3件
その他論文(和文)
3件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
1件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
該当せず
その他成果(施策への反映)
6件
2014-16年にかけ、厚生労働省「婦人相談所ガイドライン」2014年3月(戒能民江)等3件の作成に参加。
その他成果(普及・啓発活動)
9件
シンポジウム「女性支援政策の現状と課題-DV対策を中心に」「DV法から10年-女性支援政策の現状と課題」

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
戒能民江
DV防止法
講座ジェンダーと法第4巻  (2012)
原著論文2
堀千鶴子
婦人相談所における相談支援体制の実態と課題
人間学研究論集 ,  (1) , 35-45  (2011)
原著論文3
戒能民江
危機をのりこえる女たち-DV法10年、支援の新地平へ
単編著書  (2013)
原著論文4
戒能民江
複合的な生活困難の連鎖を断ち切る-女性の人権保障をめざして
日本の 科学者 ,  (50) , 12-17  (2015)
原著論文5
戒能民江
パートナー関係と暴力
比較家族史学会編『現代家族ペディア』 , 218-220  (2015)
原著論文6
戒能民江
被害者とはだれか―「女性に対する暴力」と被害者学
被害者学研究 ,  (26) , 4-14  (2016)

公開日・更新日

公開日
2016-05-26
更新日
-

収支報告書

文献番号
201101005Z