地方都市におけるエイズ対策についての医療機関、医療行政および関係諸機関との連携に関する研究

文献情報

文献番号
199700885A
報告書区分
総括
研究課題名
地方都市におけるエイズ対策についての医療機関、医療行政および関係諸機関との連携に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
西尾 信宏(関西医科大学衛生学教室)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生科学研究費補助金 先端的厚生科学研究分野 エイズ対策研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
-
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我が国においては、現在までエイズ問題総合対策大綱にもとづき、全国的なエイズ対策が推進されており、都道府県等によるエイズ対策促進事業も併せて行なわれている。各地域内における医療体制の整備・診療経験の補強・医療情報の迅速な伝達に加え、今後各地域の実情に適応した地元各機関相互のきめ細かな連携により、さらに市民各層を対象とした多面的なエイズ対策が実現されるものと考えられる。 本研究では、以上のような観点から、都道府県レベルよりも、さらに細やかなエイズ対策を推進していくため、エイズ診療の拠点病院の存するモデル地方都市を選定し地域内の医療機関・医療行政・医療関係者から構成される、地域におけるエイズ対策に関する評価・検討委員会を設置する。委員会の定期的な開催により、各機関の日常活動より浮かび上がってくる問題点を整理し、解決策を探ることにより、それぞれの機能を生かしながら他の機関との連携および情報交換を活発に行ない、地域に密着したより効果的なエイズ対策の実現を図るものである。
研究方法
1)現在まで協力を打診しているエイズ拠点病院の存する複数の地方都市より、調査対象都市を選定する。2)医療機関・医療行政・医療関係者から構成される同地域におけるエイズ対策に関する「連絡検討委員会」を設置する。3)連絡検討委員会を年度内に随時開催し、地域のエイズ対策に関する問題点を整理し解決策を検討する。またその他諸機関との連携を図り、ボランティア活動等の支援を行なう。4)医療機関・医療行政・医療関係者の連携により解決策を試行する。5)連絡検討委員会においては、所属する都道府県との連携、および隣接する他地域の諸機関とも連携を図る。6) 連絡検討委員会において定期的に解決策の施行の成果を評価する。
結果と考察
1)エイズ拠点病院の存する調査対象都市として、地元行政・医療関係者の協力を得て長崎県佐世保市を選定した。2) 佐世保市内医療機関代表者、佐世保市医療行政担当者・医療関係者および主任研究者から構成される佐世保市を中核とするエイズ対策に関する「連絡検討委員会」を設置した。連絡検討委員会においては、エイズに関する広範な情報収集を図り、専門家、学識経験者を招いてのレクチャーを受けるほか、個々の委員会構成員が積極的に教育的行事等に参加することにより、佐世保市地域のエイズ対策についての問題点の洗い出しに努めた。3)正式な連絡検討委員会の他に、後述する教育的シンポジウムの準備会等も含めて年度内に検討会を十数回行い、佐世保市地域のエイズ対策に関する問題点を整理して解決策を検討した。その他関係諸機関との連携を図り、ボランティア活動等の支援等を行った。具体的には市民各層を対象としたエイズに関するシンポジウムをボランティア団体と共催した。4) 佐世保市内医療機関・佐世保市医療行政担当者・医療関係者の連携により解決策を試行した。具体的には連絡検討委員会において問題点として指摘された、ア)エイズに関する一般市民の意識向上、および、A)エイズ患者および感染者のカウンセリングに関する関係者の知識の習得の必要性、の解決策として一般市民および医療関係者を対象とした)エイズ全般に関する教育的なシンポジウム(ボランティア団体と共催:上述)、およびB)エイズ患者および感染者のカウンセリングに関する教育的なシンポジウムを発案、開催した。5) 連絡検討委員会においては、佐世保市の所属する長崎県との連携をはかり、および隣接する他地域の諸機関とも連携を図った。その結果4)で述べたカウンセリングに関する教育的シンポジウムの開催にあたって長崎県との共催が実現し、長崎県全域からのシンポジウム参加者を
得、あわせて佐世保市地域と長崎県内他地域関係者間の交流を実現することができた。6)連絡検討委員会において上記解決策の施行の成果を評価し、佐世保市地域のエイズ対策推進にあたり、一定の成果を得たと判定した。全国的増勢が続くエイズ患者・感染者に適切な医療を提供する目的で現在まで47都道府県に、350以上のエイズ拠点病院が選定され、公表されたが、現在も診療施設の設備面や診療機能のほか、エイズ臨床経験などには地域間格差があると考えられる。今後は地域間格差解消とともにエイズ医療水準全般の向上が期待されている。都道府県レベルにおいては、エイズ対策推進議会等の設置により、関係各機関の連携が図られている。地元に密着したよりきめ細やかなエイズ対策の実現のためには、地方都市レベルにおいても、地域の実情に精通した地域内の医療機関、医療行政医療関係者相互の連携を強化して、市民各層を対象とした多面的なエイズ対策の実現をはかる必要があると考えられるが、そのような研究は殆ど前例をみず、本研究の成果は貴重なものと考えられる。
結論
地域における医療機関・医療行政・医療関係者から構成される連絡検討委員会を設置および定期的な開催により、各機関の連携および情報交換が活発となり、地域のエイズ対策の問題点およびその解決策が具体的に検討された。エイズ対策の問題点解決策として、一般市民および医療関係者を対象とした1)エイズ全般に関する教育的なシンポジウム、および2)エイズ患者および感染者のカウンセリングに関する教育的なシンポジウムを開催し、一定の成果を得た。都道府県レベルよりも、さらに細やかな、より地域に密着した、効果的なエイズ対策の実現を図る上での連絡検討委員会の設置および定期的な開催の有効性が示された。

公開日・更新日

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