気候変動に対応した飲料水管理手法の開発に関する研究 | 厚生労働科学研究成果データベース

文献情報

文献番号

201036012A

報告書区分

総括

研究課題名

気候変動に対応した飲料水管理手法の開発に関する研究

課題番号

H21-健危・一般-007

研究年度

平成22(2010)年度

研究代表者(所属機関)

秋葉　道宏(国立保健医療科学院　水道工学部)

研究分担者(所属機関)

増田　貴則(鳥取大学大学院　工学研究科)
山田　俊郎(岐阜大学　工学部)
伊藤　雅喜(国立保健医療科学院　水道工学部)
国包　章一(静岡県立大学　環境科学研究所)
藤本　尚志(東京農業大学　応用生物科学部)
柳橋　泰生(福岡女子大学　国際文理学部)
小坂　浩司(国立保健医療科学院　水道工学部)

研究区分

厚生労働科学研究費補助金健康安全確保総合研究分野健康安全・危機管理対策総合研究

研究開始年度

平成21(2009)年度

研究終了予定年度

平成23(2011)年度

研究費

4,707,000円

研究者交替、所属機関変更

-

研究報告書（概要版）

研究目的

気候変動は水資源への様々な影響が現れると指摘されており、水資源の量および質ともに直接影響を受ける飲料水供給の分野においても、気候変動への適応策を講じることが急務である。本研究は、気候変動に対応する飲料水水質および飲料水供給施設の管理手法の開発により、気候変動に適応する有効な飲料水危機管理体制のあり方を提示することを目的としている。

研究方法

気候変動に係わる水道システムへの危害・危害原因事象と対応を整理した。水資源機構管理の貯水池を対象に、近年における濁水長期化の事例を調査し、その際の水質データの解析と対応について整理した。湖水やそれを水源とする浄水場の工程水を対象に、ピコシアノバクテリアの群集構造について解析した。河川表流水を原水とする規模の異なる3浄水場の水質・運転データから、高濁時の適切な水質管理のための因子について検討した。GISにより、気候変動時の流量低減・渇水を考慮し、原水の汚染リスクを計算し、リスクマップとして表示するGIS上の手続き手法を検討した。

結果と考察

11水道事業体の水安全計画を活用し、洪水・渇水に係わる危害・危害原因事象、それらのリスクレベルと現状での対策について取りまとめた。濁水が頻発する貯水池について、選択取水設備の効果による放流水の濁水の低減状況を明らかにした。草木湖の真核ピコ植物プランクトンのうち、年間を通じて高い割合を占めるクリプト藻綱に近縁な種は主要な真核ピコ植物プランクトンであり、相模湖、宮ヶ瀬湖での主要なピコプランクトンはピコシアノバクテリアであることが示された。浄水場の原水とろ過水で多く検出される藻類種が異なり、ピコ植物プランクトン種の違いで凝集沈殿・砂ろ過の処理特性が異なることが示唆された。重回帰分析により、高濁度処理において、PAC注入率や沈澱水濁度は原水濁度に大きく影響されることが予測された。統計情報・地図情報を用い、任意の河道区間、表流水取水位置における病原微生物濃度をGIS上の一連の手続きとして計算し、リスクマップとして表示した。

結論

気候変動による飲料水に係わる危害・危害原因事象やその対応について整理した。水源の水質や生物相の長期的な変化、および濁度に対する水源や浄水処理プロセスでの対応について解析、評価することができた。また、GISを活用して飲料水管理の脆弱性について示すことができた。