水道の配水過程における水質変化の制御および管理に関する研究

文献情報

文献番号
201036005A
報告書区分
総括
研究課題名
水道の配水過程における水質変化の制御および管理に関する研究
課題番号
H20-健危・一般-006
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
島崎 大(国立保健医療科学院 水道工学部)
研究分担者(所属機関)
  • 国包 章一(静岡県立大学 環境科学研究所)
  • 伊藤 禎彦(京都大学大学院 工学研究科)
  • 大瀧 雅寛(お茶の水女子大学大学院 人間文化創成科学研究科)
  • 伊藤 竜生(北海道大学大学院 工学研究院)
  • 春日 郁朗(東京大学大学院 工学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
6,100,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
水道水質の安全性および快適性のさらなる向上のため、水道水の配水過程における化学的および微生物学的な水質変化を最小限に抑えるための水質管理や管路の維持管理のあり方、また、それを確保する上で必要となる浄水水質や浄水処理システムの要件について明らかにする事を目的とする。
研究方法
諸外国の水道における浄水処理、残塩保持及び配水水質管理の現状に関する調査、高度処理における微生物再増殖に関わる栄養源の低減条件の検討、消毒処理による微生物再増殖の制御方法の検討、残留塩素濃度を低減した水道システムにおける微生物再増殖管理、及び、モデルシミュレーションによる配水過程における微生物再増殖性と汚染事故発生時の健康リスク評価を行った。
結果と考察
各国の事例分析から、給配水過程に起因する水系感染症流行のリスク要因としてクロスコネクションや消毒の不備が重要であることを示した。生物活性炭処理における栄養塩除去機構の解明をめざし、生物活性炭の処理能力を評価する上で有用となる微生物の知見を得た。塩素消毒および紫外線消毒における各種細菌の損傷レベルの相違を明らかとし、細菌への損傷レベルのマトリックスを作成した。痕跡程度の残留塩素存在環境で微生物再増殖を抑止するためには、AOC濃度を約11μgC/Lまで低減する必要性があることを回分培養試験により示した。給配水系を配管網として計算を行い、また塩素の消費速度に関する有機物との反応モデルを組み入れた改良シミュレーションモデルを構築し実測値をよく再現できた。
結論
消毒副生成物やカルキ臭生成の抑制の面から、水道の配水過程において残留塩素を低減する意義は大きいものの、同時に微生物学的な安全性や快適性を確保することが不可欠である。水道水の安全性および快適性のさらなる向上のためには、残留塩素の適正な保持のみならず、配水系統における衛生状態の確保の要件や配水系統内微生物の迅速モニタリング手法の確立、ならびに前段の浄水処理における微生物の効率的な不活化手法や栄養源となる物質の効果的な除去手法といった点を明らかにする必要がある。当該研究期間において得られた上記課題に対する成果は、微生物制御を軸とした水道システムの運転管理や維持管理を推進するにあたり、将来的な管理指針の作成などにおいて、基礎的な知見として活用できるものと期待される。

公開日・更新日

公開日
2011-07-22
更新日
-

文献情報

文献番号
201036005B
報告書区分
総合
研究課題名
水道の配水過程における水質変化の制御および管理に関する研究
課題番号
H20-健危・一般-006
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
島崎 大(国立保健医療科学院 水道工学部)
研究分担者(所属機関)
  • 国包 章一(静岡県立大学 環境科学研究所)
  • 船水 尚行(北海道大学大学院 工学研究院)
  • 伊藤 禎彦(京都大学大学院 工学研究科)
  • 大瀧 雅寛(お茶の水女子大学大学院 人間文化創成科学研究科)
  • 伊藤 竜生(北海道大学大学院 工学研究院)
  • 春日 郁朗(東京大学大学院 工学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
水道水質の安全性および快適性のさらなる向上のため、水道水の配水過程における化学的および微生物学的な水質変化を最小限に抑えるための水質管理や管路の維持管理のあり方、また、それを確保する上で必要となる浄水水質や浄水処理システムの要件について明らかにする事を目的とする。
研究方法
諸外国の水道における浄水処理、残塩保持及び配水水質管理の現状に関する調査、高度処理における微生物再増殖に関わる栄養源の低減条件の検討、消毒処理による微生物再増殖の制御方法の検討、残留塩素濃度を低減した水道システムにおける微生物再増殖管理、及び、モデルシミュレーションによる配水過程における微生物再増殖性と汚染事故発生時の健康リスク評価を行った。
結果と考察
配水管壁面上の生物膜形成の状況及びそれに伴う微生物学的リスクの所在、また、国内外の配水過程における衛生管理の現状などについて調査し、配水過程における配水水質管理の必要性を検討した。安定同位体プロービング法を用いた生物活性炭の低級カルボン酸の除去に関与する細菌群の比較および系統解析を行い、ギ酸、酢酸、シュウ酸をすべて同化できる細菌群の存在を明らかとした。T-RFLP法と培養法との組み合わせにより、塩素消毒および紫外線消毒において複数種の細菌の不活化耐性および再増殖性の一斉評価法を検討し、DNA抽出やPCRなど各ステップにおけるバイアスなどの理由から、定量的な議論に結び付けることは難しいことを示した。残留塩素低減環境におけるNF処理水の微生物学的安定性を各種実験により検討し、NF処理単独では十分な微生物学的安定性維持効果は得られないものの、残留塩素の最小化を進める上では重要な処理技術であると評価された。給配水系を配管網として計算を行い、塩素の消費速度に関する有機物との反応モデルを組み入れた改良シミュレーションモデルを構築し、微生物の再増殖について浄水中の残留塩素濃度と給水栓における微生物濃度の関係を明らかにした。
結論
水道水質の安全性および快適性のさらなる向上のためには、水道水の配水過程における化学的および微生物学的な水質変化を最小限に抑えるための水質管理や管路の維持管理のあり方について明確にする事が必要である。本研究により得られた上記課題に対する成果は、微生物制御を軸とした水道システムの運転管理や維持管理を推進するにあたり、将来的な管理指針の作成などにおいて、基礎的な知見として活用できるものと期待される。

公開日・更新日

公開日
2011-07-22
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201036005C

成果

専門的・学術的観点からの成果
水道水の安全性や快適性のさらなる向上の為には、残留塩素の保持のみならず、配水系統における衛生状態の確保の要件や配水系統内微生物の迅速モニタリング手法の確立、及び、前段の浄水処理における微生物の効率的不活化手法や栄養源物質の効果的除去手法といった点を明らかにする必要がある。本研究では、痕跡程度の残留塩素存在環境下において微生物再増殖を抑止するために要求される生物同化性有機炭素濃度を明らかにしたことなど、上記課題に対して意義のある成果を得た。
臨床的観点からの成果
本研究の成果は必ずしも臨床的観点と直接結びつくものではないものの、水道の配水過程における微物学的な水質変化は水系感染症の集団発生と関連がある可能性が想定されることから、今後はこのような観点からの諸外国の状況を含めた情報の収集と解析も行う必要があると考えられた。
ガイドライン等の開発
本研究において、特に配水管路での微生物再増殖の抑制と管理、また、消毒及び生物処理等による浄水水質のさらなる向上を中心的な研究課題として得られた成果は、微生物制御や微生物学的リスク低減を軸とした水道システムの運転管理や維持管理をさらに推進するにあたり、将来的な管理指針の作成などにおいて基礎的な知見として活用できる。
その他行政的観点からの成果
本研究による成果は、水道水の消毒副生成物や臭気を低減すると同時に配水系統における微生物再増殖を抑制するための、浄水水質の確保及び配水系統における衛生状態の確保という統合的な水質管理の方策を提示する上で中心となるべき知見を提供しており、水道行政における波及効果が大きいと考えられる。また、厚生労働省健康局水道課『新水道ビジョン』に掲げられる「安全な水道」のうち、「適切な浄水処理、管路内及び給水装置における水質保持」に資するものであり、水道の利用者に対する信頼性を大いに高めるものと期待できる。
その他のインパクト
本研究にて取り扱った水道の配水過程における水質管理は、世界保健機構(WHO) の担当部局も注目しており、WHO飲料水水質ガイドライン第5版の改訂において検討課題の一つとなる見込みである。平成23年7月には当該トピックを取り扱うWHO主催の技術会合が開催され、本研究代表者も専門家として参加し、本研究の成果を含めた情報提供を行った。さらに、同会合の参加者を中心として、水道実務者を対象とした「配水過程水質管理リファレンスツール」の開発を行い、平成26年6月に公開された。

発表件数

原著論文(和文)
4件
原著論文(英文等)
7件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
27件
学会発表(国際学会等)
15件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Yumiko Ohkouchi, Bich Thuy Ly, and Sadahiko Itoh
Detection of bacterial regrowth in water distribution system using endtoxin as an alternative indicator
Advances in Asian Environmental Engineering , 8 (1) , 13-19  (2009)
原著論文2
Myriam Ben Said , Otaki Masahiro and Abdennaceur Hassen
Detection of viable but non cultivable Escherichia coli after UV irradiation using a lytic Qβphage
Annals of Microbiology , 60 (1)  (2010)
原著論文3
Myriam Ben Said , Kazama Shinobu, Otaki Masahiro et al.
Detection of active Escherichia coli after irradiation by pulsed UV light using a Qβ phage
African Journal of Microbiology Research , 4 (11) , 1128-1134  (2010)
原著論文4
I. Kasuga, H. Nakagaki, H. Furumai et al.
Abundance and diversity of ammonia-oxidizing archaea and bacteria on biological activated carbon in a pilot-scale drinking water treatment plant with different treatment processes
Water Science and Technology , 61 (12) , 3070-3077  (2010)
原著論文5
I. Kasuga, H. Nakagaki, H. Furumai et al.
Predominance of Ammonia-Oxidizing Archaea on Granular Activated Carbon Used in a Full-scale Advanced Drinking Water Treatment Plant
Water Research , 44 (17) , 5039-5049  (2010)
原著論文6
伊藤禎彦
定量的感染リスク評価の感度分析における非加熱飲料水消費量データの影響
用水と廃水 , 52 (8) , 55-65  (2010)
原著論文7
浅田安廣、大河内由美子、伊藤禎彦
ブロモデオキシウリジン修飾DNA 量に基づいた浄水中の従属栄養細菌数迅速推定法の開発
環境工学研究論文集 , 47 , 119-126  (2010)
原著論文8
伊藤禎彦
オランダにおける塩素を使用しない水道システムの管理
水道協会雑誌 , 79 (10) , 12-22  (2010)
原著論文9
島﨑大
EU諸国における配水過程の残留消毒剤保持に係る規定および大腸菌の検出状況
水道協会雑誌 , 79 (12) , 21-25  (2010)
原著論文10
S. Soonglerdsongpha, I. Kasuga, H. Furumai et al.
Comparison of assimilable organic carbon removal by biological activated carbon in different advanced drinking water treatment plants
Sustainable Environment Research , 21 (1) , 59-64  (2011)
原著論文11
Yumiko Ohkouchi, Bich Thuy Ly, Sadahiko Itoh et al.
A survey on levels and seasonal changes of assimilable organic carbon (AOC) and its precursors in drinking water
Environmental Technology  (2011)

公開日・更新日

公開日
2017-08-03
更新日
-

収支報告書

文献番号
201036005Z