中枢神経系の発達に及ぼす化学物質の影響に関する試験法の開発に関する研究

文献情報

文献番号
201035030A
報告書区分
総括
研究課題名
中枢神経系の発達に及ぼす化学物質の影響に関する試験法の開発に関する研究
課題番号
H22-化学・若手-009
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
藤岡 宏樹(東京慈恵会医科大学 総合医科学研究センター・DNA医学研究所・分子細胞生物学研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 馬目 佳信(東京慈恵会医科大学 総合医科学研究センター・DNA医学研究所・共用研究施設 )
  • 星野 昭芳(東京慈恵会医科大学 医用エンジニアリング研究室)
  • 花田 三四郎(国立国際医療研究センター 研究所・山本副所長室)
  • 叶谷 文秀(国立国際医療研究センター 研究所・山本副所長室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
3,470,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究は化学物質、特にナノマテリアルの中枢神経に与える毒性学的な影響を「細胞を使った評価」・「脳スライス培養法(ex vivo)での評価」・「動物個体での評価」の3つの評価法を関連付けることで「細胞・ex vivoの評価から、個体での中枢神経への影響を簡易かつ高精度に予測できる試験法」を開発することを目的とするものである。
 近年、加工技術の発達により、カーボンナノチューブなど種々のナノマテリアルが、工業的に大量生産できるようになった。しかしながら、その安全性については検討の段階にあり、健康に影響を与えると予測される濃度や長期的な影響など、明らかになっていない点は多い。
 一方、現行の手法を用いて、生体へのナノ毒性について検討を行うためには、多数の動物を用い、多額な費用と長時間の労力をかけることが必要になる。このため、事業者レベルでの評価は困難を極めている。そこで、我々は、特に中枢神経に与える毒性学的影響を標的として、精度良く簡便に評価できる手法の開発を行う。
研究方法
 本年度は、細胞を使った評価と動物個体でのナノ粒子の影響を中心に解析を行った。細胞では、特にヒト神経幹細胞株、及び血液脳関門モデルを用いて、ナノ粒子(QD)の影響を検討した。動物個体では、ナノ粒子が脳のどの部位に移行するかを検証するため、2つの経路でナノ粒子(QD)を投与して、生体内挙動を比較した。
結果と考察
 ヒト神経幹細胞株を使った検討からは、ナノ粒子の取込み能力があること、また、高濃度共培養時に分化に影響を与える可能性があることが示唆された。血液脳関門モデルでは、わずかながらにナノ粒子が通過することが示唆された。更に、免疫機構への影響を予測するために行ったマクロファージ細胞株での評価では、結晶質シリカ粒子での線維化マーカーの上昇や、シリカ粒子でのサイズ依存性の細胞毒性が見られた。
 動物個体を用いた検討からは、腹腔内からナノ粒子を投与されたマウスにおいて、静脈内投与と異なり、ナノ粒子が脳実質組織内へと移行したことを確認した。
 現在、中枢神経への標準的な安全性評価法を構築するため、国内外の研究者との連携を進めている。
結論
 細胞レベル・動物個体での評価は進んでおり、中枢神経系における分子レベルでの毒性や動物における脳への蓄積について、データが集まっている。次年度から、脳スライス培養での評価との比較を行い、簡便に評価できる方法の構築に向け、研究を推進する。

公開日・更新日

公開日
2011-05-20
更新日
-

収支報告書

文献番号
201035030Z