文献情報
文献番号
201035020A
報告書区分
総括
研究課題名
家庭用品に由来する化学物質の多経路暴露評価手法の開発に関する研究
課題番号
H21-化学・一般-009
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
神野 透人(国立医薬品食品衛生研究所 生活衛生化学部第一室)
研究分担者(所属機関)
- 野﨑 淳夫(東北文化学園大学大学院 健康システム研究科)
- 伊佐間 和郎(国立医薬品食品衛生研究所 生活衛生化学部第四室 )
- 酒井 康行(東京大学 生産技術研究所 物質・環境系部門)
- 杉林 堅次(城西大学 薬学部)
- 埴岡 伸光(岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科)
- 香川 聡子(国立医薬品食品衛生研究所 生活衛生化学部第一室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
19,190,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
家庭用品から室内環境中へ放出される化学物質、特に準揮発性有機化合物 (SVOC)と呼ばれる沸点260-380℃の化学物質を主要なターゲットとして、複数の経路 (経気道、経皮及び経口)からの暴露を総合的に評価するための手法を開発・確立する目的で以下の課題について検討を行った。
研究方法
(1) 家庭用品から室内環境へのSVOC負荷量を迅速かつ定量的に評価し (2) 室内環境媒体 (空気及び粒子)間のSVOC分配を予測するための手法、(3) 家庭用品への直接的な接触によるSVOC皮膚移行の評価方法、(4) 経気道あるいは (5) 経皮暴露された化学物質の生物学的利用率を推定するためのin vitro評価手法、並びに (6) 暴露経路依存的な初回通過代謝の評価方法について一連の研究を実施した。また、対象SVOCの選定やシミュレーションモデルの妥当性の検証に必要な実測データの収集を目的として、(7) 家庭用品に由来する室内環境化学物質の網羅的な解析手法についても検討を行った。
結果と考察
SVOC負荷量の評価(1)では、SVOC放散速度の迅速な評価法を確立し、家庭用品からのSVOC放散速度を測定した。室内環境媒体間の分配に関する課題(2)では、リン酸トリエステル類及びフタル酸エステル類について密度汎関数法/COSMO-RS法による物理化学的パラメーターの予測を行い、実測値及び定量的構造活性相関に基づく推定値との比較を行った。SVOCの皮膚移行 (3)に関しては、PVCシートから皮膚へのフタル酸エステル類の移行量を実測し、5倍を超える個人差が存在することを明らかにした。生物学的利用率の評価(4及び5)ではそれぞれ培養肺胞モデル、Side-by-Side型拡散セルによる透過性のin vitro評価を行い、その結果を基に数理モデルを構築した。初回通過代謝(6)では、ヒト肝ミクロゾームによるフタル酸エステル類の加水分解反応について速度論的に解析し、種差及び個体差について考察した。また、室内環境中のSVOCの網羅的な解析(7)ではハウスダストを介したリン酸トリエステル類の暴露について調査を行い、Tris(2-butoxyethyl) Phosphateが高濃度で検出されることを明らかにした。
結論
本研究では家庭用品から室内環境へのSVOC負荷量の評価から暴露経路依存的な生物学的利用率や初回通過代謝の評価について一連の手法を開発・確立した。今後、SVOCをはじめとする室内環境中の多種多様な化学物質に本法を適用することによって、主要な暴露経路や多経路暴露量の予測が可能になるものと期待される。
公開日・更新日
公開日
2011-05-30
更新日
-