ナノマテリアルの健康影響評価手法の総合的開発および体内動態を含む基礎的有害性情報の集積に関する研究

文献情報

文献番号
201035019A
報告書区分
総括
研究課題名
ナノマテリアルの健康影響評価手法の総合的開発および体内動態を含む基礎的有害性情報の集積に関する研究
課題番号
H21-化学・一般-008
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
広瀬 明彦(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 総合評価研究室)
研究分担者(所属機関)
  • 菅野 純(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 毒性部)
  • 津田 洋幸(名古屋市立大学 津田特任教授研究室)
  • 西村 哲治(国立医薬品食品衛生研究所 生活衛生化学部 )
  • 本間 正充(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 変異遺伝部)
  • 樋野 興夫(順天堂大学 医学部)
  • 佐藤 薫(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 薬理部 )
  • 奥  直人(静岡県立大学 薬学部 医薬生命化学教室)
  • 最上 知子(国立医薬品食品衛生研究所 機能生化学部)
  • 宮澤 薫一(物質・材料研究機構 ナノテクノロジー基盤萌芽ラボ フラーレン工学グループ)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
52,060,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では産業用ナノマテリアルの慢性影響を標的とした評価法開発研究と、国際貢献としてのOECDスポンサーシッププログラム(SP)に対応するための基礎的な有害性情報収集の実施を行うことを目的としている。
研究方法
22年度は、昨年度に引き続き、繊維状粒子による慢性影響としての中皮腫誘発の形状依存性と発がんプロモーション作用に関する研究を行った。基礎的有害性情報の収集としては、フラーレン(C60)の体内動態解析、カーボンナノチューブ(CNT)とC60の皮膚刺激性試験と皮膚感作性試験、多層CNT(MWCNT)の遺伝毒性試験を行うと共に、繊維状粒子のin vitro試験系に及ぼす影響について検討した。
結果と考察
慢性影響研究としては、焼結型のC60ナノウィスカを作成し、単回腹腔内投与による慢性試験に着手した。一方、MitsuiMWCNT-7とNikkisoMWCNTによるラット中皮腫誘発性には、本質的な差が認められなかった。また、メソセリンを検出するマウスのELISA系の開発に成功した。C60の腹腔内投与による病理学的腎障害については、メチルセルロースとの複合作用の可能性について確認試験を継続中である。MWCNTの気管内投与による明確な発がんプロモーション作用は認められなかったが、酸化亜鉛においては間質性肺炎と肺発がん促進作用と、単独投与による終末細気管支過形成がみられた。基礎的有害性情報の収集に関しては、CNTとC60 について共に皮膚刺激性と皮膚感作性が陰性である結果を得た。体内動態解析研究としてC60静脈内投与後の腎臓と脳からの減少速度が顕著であることを明らかにした。遺伝毒性試験において、比較的外径の大きいタイプのMWCNTにIn vitroでの染色体倍数性を誘発する傾向のあることが示唆されたが、C60のin vivo 投与では血液細胞のPig-A遺伝子突然変異を誘発しなかった。また、MWCNT暴露マクロファージではIL-1βの産生が亢進することや、CNT懸濁液の超音波処理上清には神経系細胞等に対する細胞毒性作用のあることが示された。
結論
CNTの繊維長に依存する中皮腫誘発性の検証を行う準備が整うと共に、OECD_SPに向けた予定の基礎的情報がほぼ整った。また、in vitro研究における注意点を明らかにすると共に、慢性影響を見据えた体内動態研究やin vitro試験法の有用性についても示唆が得られた。

公開日・更新日

公開日
2011-05-25
更新日
-

収支報告書

文献番号
201035019Z