胎児への食品汚染物質曝露による性未成熟のインプリンティングとその評価法開発

文献情報

文献番号
201035016A
報告書区分
総括
研究課題名
胎児への食品汚染物質曝露による性未成熟のインプリンティングとその評価法開発
課題番号
H21-化学・一般-005
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
山田 英之(九州大学 大学院 薬学研究院)
研究分担者(所属機関)
  • 石井 祐次(九州大学 大学院 薬学研究院)
  • 武田 知起(九州大学 大学院 薬学研究院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
18,540,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ダイオキシン等の内分泌撹乱物質の次世代への影響とその機構を解析するため、研究を行った。動物の性成熟や脳分化には胎児期後期から出生直後にかけての時期(周産期)に性ステロイドの刺激を受ける必要がある。そこで、最強毒性のダイオキシンである2,3,7,8-tetrachlorodibenzo-p-dioxin (TCDD)、並びに他の内分泌撹乱物質が周産期の性ステロイド合成を障害するか否かを検討した。また、性ステロイド合成への影響の機構や成長後の遺伝子発現に及ぼす影響についても解析した。
研究方法
内分泌撹乱物質を投与した妊娠Wistarラットの胎児および出生児につき、脳下垂体ゴナドトロピンと性腺ステロイド合成系遺伝子の発現状況を調べた。成長後の遺伝子発現変動はマイクロアレイ法で解析した。
結果と考察
1. TCDDによる脳下垂体-性腺系への影響およびそれが性成熟に及ぼす影響
 妊娠15日目にTCDD (1 μg/kg x 1、経口)を与えた母ラットの児を解析した結果、ゴナドトロピンと精巣ステロイド合成系は、胎児期後期から出生直後にかけて一過性に低下することが判明した。培養脳下垂体を用いた解析から、TCDDは胎児脳下垂体に直接作用してゴナドトロピンを抑制し得ることが示唆された。TCDD曝露母から出生した生後70日の児でも、視床下部や脳下垂体の多くの遺伝子に発現変動が認められ、その中には交尾行動の誘起に必要な遺伝子も含まれていた。

2. 内分泌撹乱物質による胎児脳下垂体-性腺系への影響
 ダイオキシンと同様な機構で次世代への影響を引き起こすものを検索するため、鉛、カドミウム、殺虫剤、可塑剤および難燃剤等の6種の物質について検討した。その結果、フタル酸エステルのみが母体曝露による胎児・性腺ステロイド合成系を低下させた。しかし、本物質はゴナドトロピン抑制は惹起せず、ダイオキシンとは作用機構が異なると考えられた。
結論
1. TCDDは脳下垂体ゴナドトロピン抑制を起点として、周産期の児に一過性の性ステロイドホルモン低下を引き起こし、これにより成長後にまで固着する遺伝子障害を引き起こすと推定された。

2. フタル酸エステルは胎児の性ステロイド合成に影響するが、その機構はダイオキシンと異なることが示唆された。

公開日・更新日

公開日
2011-06-01
更新日
-

収支報告書

文献番号
201035016Z