文献情報
文献番号
201035007A
報告書区分
総括
研究課題名
ナノマテリアルの遺伝毒性及び発がん性に関する研究
課題番号
H20-化学・一般-007
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
戸塚 ゆ加里(独立行政法人 国立がん研究センター研究所 がん予防基礎研究プロジェクト)
研究分担者(所属機関)
- 葛西 宏(産業医科大学 職業性腫瘍学)
- 渡邉 昌俊(横浜国立大学大学院 工学研究院医工学)
- 中江 大(東京都健康安全研究センター 環境保健部 )
- 増田 修一(静岡県立大学 食品栄養科学部 )
- 川西 優喜(大阪府立大学産学官連携機構・先端科学イノベーションセンター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
32,740,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
化粧品や商業用品等に頻繁に用いられている種々のナノマテリアル(フラーレン、カオリン、カーボンブラック、酸化チタン、マグネタイト等)および将来的に商業用品等への応用が期待されるナノマテリアル(カーボンナノチューブ)の遺伝毒性や発がん性についてin vitro及びin vivo実験系を用いて検討した。
研究方法
細胞における各種ナノ粒子曝露の影響について、in vitro系で遺伝子発現解析及び各種DNA修復系欠損株のナノマテリアルに対する感受性について検討した。ナノマテリアルを気管内投与されたマウス肺組織における酸化ストレス由来のDNA付加体の生成を調べた。また、産地の異なるカオリンの肺における DNA 損傷性をコメットアッセイを用いて評価した。多層カーボンナノチューブ(MWCNT)及びマグネタイトの遺伝毒性を、トランスジェニックマウスを用いて検討した。さらに、マグネタイトの単回気管内スプレー投与によるラットの急性毒性試験を行った。
結果と考察
ある種のナノマテリアルではヒト細胞の種類により細胞傷害の程度に違いがあり、抗酸化、修復にかかわる遺伝子発現の変化が影響するものと考えられた。塩基除去修復と非相同末端結合欠損株は野性株に比べ MWCNT に感受性であり、細胞に塩基損傷や DNA 二重鎖切断を誘発することを示唆した。ナノマテリアルをマウスの気管内に投与すると、8-oxo-dG、HεdA などの DNA 付加体量が増加した。産地の異なるカオリンでは、コメットアッセイによるDNA 損傷性に差があることがわかった。マグネタイトをラットに気管内スプレーにより反復投与して慢性毒性試験を行い、その結果、肺の炎症反応・Ⅱ型肺胞上皮の腫大・肉芽形成・細気管支/肺胞上皮の過形成などが認められ、最大無毒性量(NOAEL)が雌雄とも0.2 mg/kg体重であった。
結論
ナノマテリアルにより遺伝子発現変化をともなう酸化ストレスおよび炎症反応が惹起され、 ROSなどの内因性の活性種が DNA 損傷を生じることで遺伝毒性を誘発している可能性が示唆された。
公開日・更新日
公開日
2011-08-03
更新日
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