文献情報
文献番号
201035005A
報告書区分
総括
研究課題名
前向きコホート研究による先天異常モニタリング、特に尿道下裂、停留精巣のリスク要因と環境化学物質に対する感受性の解明
課題番号
H20-化学・一般-005
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
岸 玲子(北海道大学 環境健康科学研究教育センター)
研究分担者(所属機関)
- 水上 尚典(北海道大学 大学院医学研究科 産科・生殖医学)
- 遠藤 俊明(札幌医科大学 産婦人科学)
- 千石 一雄(旭川医科大学 産婦人科学)
- 野々村 克也(北海道大学 大学院医学研究科 腎泌尿器外科学)
- 有賀 正(北海道大学 大学院医学研究科 小児科学)
- 梶原 淳睦(福岡県保健環境研究所 保健科学部生活化学課)
- 松村 徹(いであ株式会社 環境創造研究所)
- 石塚 真由美(北海道大学 大学院獣医学研究科 毒性学)
- 吉岡 英治(北海道大学 大学院医学研究科 公衆衛生学)
- 佐々木 成子(北海道大学 大学院医学研究科 公衆衛生学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
44,960,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
妊婦を対象に,前向きコホート研究で妊娠中の母親への環境化学物質曝露が先天異常、胎児発育や新生児の甲状腺機能、および生後の乳幼児への発達や健康状態に及ぼす影響を解明して,健康障害を予防する方策を明らかにする。
研究方法
北海道内約40産科施設の協力により妊婦を対象に前向きコホートを設定し,産科医が記載した新生児個票から先天異常有病率を調べた。曝露評価のために,甲状腺ホルモンと類似した構造により生体内で甲状腺ホルモンレセプターと結合して残留あるいは甲状腺ホルモン作用をかく乱する可能性があるOH-PCB類およびヒトでの科学的な根拠がこれまでほとんどなかったビスフェノールA(BPA),4-ノニルフェノール(NP)分析法の開発を行った。母体血,母乳中ダイオキシン・PCB類をHRGC/HRMS法で測定し,胎児発育や児の免疫機能への影響を評価した。
結果と考察
(1) 平成22年10月末までに新生児個票が提出された16,878名のうち,先天異常の児総数は318名,マーカー異常228名,その他の異常118名,先天異常を有する児の出産頻度は1.88%であった。また,在胎22週以降の出産16,629件では,先天異常のある児は274名,有病率は1.65%であった。(2) LC/MS/MSを用いてOH-PCB類を誘導体化せずに,微量血液からダイオキシン・PCB,OH-PCB類を一斉に分析する測定法が開発できた。さらに,微量試料中BPAを同位体希釈LC/MS/MS法で迅速処理,高精度で測定する生体試料分析法を開発した。(3)エストロゲン様PCBs,その他のPCBs,非ダイオキシン様PCBs(58異性体),および総PCBs(70異性体)と出生時体格との有意な関連は認められなかったが,初産女児群で,エストロゲン様作用PCBs濃度と出生時身長とに有意な正の関連が認められた。(4)先天異常の原因であり交絡要因となる葉酸の代謝に関与する遺伝子多型では,非喫煙妊婦で5,10-MTHFR遺伝子AC/CC型と比較して喫煙妊婦でAA型 では出生時体重が有意に低下し,男児の低下が女児より大きかった。
結論
本研究により微量血液からダイオキシン・PCB,OH-PCB類の一斉分析ができることから,多種類の化学物質の測定が可能である。汚染実態の解明とともに、先天異常、胎児発育、および生後の乳幼児への発達や健康状態に及ぼす化学物質による暴露影響とリスクが解明できる。また,血中BPAの分析方法を確立できたことから,ヒトでの科学的な根拠がこれまでほとんどなかったBPAの生殖内分泌系、神経系への健康リスク評価が可能となる。
公開日・更新日
公開日
2011-05-30
更新日
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