文献情報
文献番号
201035004A
報告書区分
総括
研究課題名
男児外陰部異常症および生殖機能障害と化学物質:個体感受性と暴露量に関するゲノム疫学研究
課題番号
H20-化学・一般-004
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
緒方 勤((独)国立成育医療研究センター研究所 分子内分泌研究部)
研究分担者(所属機関)
- 大迫 誠一郎(東京大学大学院医学系研究科 疾患生命工学センター)
- 曽根 秀子(国立環境研究所 環境リスク研究センター)
- 安彦 行人(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター)
- 吉永 淳(東京大学新領域創成科学研究科 環境システム学専攻 環境健康システム学)
- 大矢 幸弘((独)国立成育医療研究センター病院 内科系専門診療部)
- 小島 祥敬(名古屋市立大学大学院医学研究科 腎・泌尿器科学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
27,430,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究の目的は、男児外陰部異常症および生殖機能障害と化学物質の関連性を個体感受性と暴露量の両者の観点から解明することである。その必要性は、その因果関係の解明が環境リスク評価上の重要課題となっていることにある。特に、小児など脆弱な集団を保護する必要性が国際化学物質管理会議で再確認され、個体感受性を勘案した評価スキームの構築が急務となっている。
研究方法
下記の内容を検討した。
結果と考察
主たる成果は以下のとおりである。 (1) ダイオキシン暴露と外陰部異常症の関連の解析:尿道下裂責任遺伝子MAMLD1がテストステロン産生に関与すること、MAMLD1がCYP17A1発現を特異的に調節すること、MAMLD1がダイオキシンによるテストステロン産生低下に関与することが示された。これは、ダイオキシン暴露による外陰部異常症発症機序の解明へと繋がるものと期待される。(2) 尿道下裂患者の包皮組織mRNA発現とDNAメチル化解析:エピジェネティク修飾の観点から暴露レベルと尿道下裂発症との関連性がより明瞭になると思われる。(3) ダイオキシン関連遺伝子群の網羅的相関解析とバイオインフォマティクスによる影響化学物質の推定解析に関する研究:多数のダイオキシンシグナル伝達関連分子の多型と外陰部異常症発症の関連が示された。(4) エストロゲン受容体α遺伝子上の内分泌撹乱化学物質感受性ハプロタイプと絶対連鎖不平衡を示す微小欠失ノックアウトマウス:これにより、ヒトで見いだされたエストロゲン受容体α遺伝子の外陰部異常症感受性ハプロタイプの機能解析が可能となってきた。(5) 各種化学物質の測定と曝露レベルの推定に関する研究:エストロジェン活性、抗アンドロジェン活性を持つことが知られている化学物質の定量が可能となり、これらの物質が、妊婦の尿から検出されたことは、既に、内分泌撹乱化学物質への胎児期暴露が実際に生じていることが示された。(7) 成育コホート集団の検討:妊娠中の食事内容の分析による胎児期暴露量の推定と、5歳児を対象とする採血を開始し、環境化学物質測定のための血清保存を開始した。5歳時点での参加率が約75%と出生コホート研究としてはかなり高い水準に達していることから、今後約2年に亘って収集が続く5歳時点のデータは信頼性の高いものになることが期待される。
結論
これらのデータは、男児外陰部異常症および生殖機能障害と化学物質の関連性を、個体感受性と暴露量の観点から解明する上で重要な情報を与えるものである。
公開日・更新日
公開日
2011-06-07
更新日
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