文献情報
文献番号
201035002A
報告書区分
総括
研究課題名
化学物質の子どもへの健康影響に関するエピジェネティクス評価法の開発
課題番号
H20-化学・一般-002
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
牧野 恒久((社)有隣厚生会 東部病院)
研究分担者(所属機関)
- 中澤 裕之(星薬科大学 薬品分析化学教室)
- 塩田 邦郎(東京大学大学院 農学生命化学研究科細胞化学教室)
- 杉野 法広(山口大学 医学部産婦人科学教室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
21,440,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究の目的は、次代の社会の担い手である子どもを取り巻く環境中のどのような化学物質が健康影響を及ぼすか、どの程度の生体暴露量が健康障害に結びつくかなどを評価できる、新しいエピジェネティクス評価法を開発することを目的とした。
研究方法
妊娠37週0日から41週6日までの妊婦に十分なインフォームドコンセントの後、母体血、臍帯血、羊水、母体尿、胎脂を夾雑物が混入しない方法で採取した。最終年度は、有機フッ素系化合物、ポリ臭素化ジフェニルエーテル、フタル酸エステル類、ピレスロイド系農薬、有機リン系農薬、ニコチン、コチニン、19種の重金属類などについて測定分析した。塩田班を中心に暴露量の範囲内での新しい毒性評価法の開発を試みた。すなわちマウスES細胞を用いて、染色体ペリセントロメアのメチル化DNA変化をヘテロクロマチン形成として解析した。さらにCORBA法に従い、化学物質のゲノムワイドDNAメチル化に及ぼす影響を解析した。最終年度として、京都大学から提供を受けた、ヒトiPS細胞においても同様な検討を一部施行した。また母児環境をヒト体外受精の環境まで拡大して、生殖補助技術における培養液、培養プレートなどの化学物質暴露状況も検討した。
結果と考察
分析測定されたそれぞれの化学物質の暴露量は、杉野班へ還元され、行った各症例のアンケート調査の臨床背景と重ね合わせ分析した。一方、塩田班では中澤班からもたらされた暴露量に沿ってDNAメチル化プロファイルの変化から有機リン系農薬の代謝産物DEP,農薬の共力剤S-421,Hg,Se,コチニンをepimutagenとして認定した。これらの化学物質についてはCORBA法により、ゲノムワイドメチル化プロファイルを解析しえた。またヒトiPS細胞では、マウスES細胞と比較し化学物質に対してエピジェネティクス変化に異なる動態を示すことが判明した。生殖補助技術環境については、培養プレートから有意な化学物質の溶出は認められなかった。一方、各種培養液、とくにヒト血清成分を含む胚培養液からは、母体血中濃度の10倍から100倍の高濃度のフタル酸エステル類、ポリ臭素化ジフェニルエーテル、ノニルフェノールなどが検出された。
結論
母児環境における各種試料の化学物質の暴露状況を分析し、信頼しうる暴露量情報を獲得した。
これら微量の暴露量の健康影響を評価する方法として、エピジェネティクス評価法は有用であることが判明した。
これら微量の暴露量の健康影響を評価する方法として、エピジェネティクス評価法は有用であることが判明した。
公開日・更新日
公開日
2011-05-23
更新日
-