化粧品及び医薬部外品中の不純物濃度の実態調査に関する研究

文献情報

文献番号
201034081A
報告書区分
総括
研究課題名
化粧品及び医薬部外品中の不純物濃度の実態調査に関する研究
課題番号
H22-医薬・指定-036
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
五十嵐 良明(国立医薬品食品衛生研究所 生活衛生化学部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
2,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
鉛は金属を含有する原料あるいは製造工程で化粧品に不純物として混入することが知られている。日本、米国、欧州連合、カナダによる化粧品規制協力国際会議(ICCR)は化粧品中の微量汚染物質を検討するワーキンググループ(Trace-WG)を設け、製品中の微量汚染物の制限値について議論している。規制値はリスクアセスメントを基にするものであるが、技術的に可能な範囲で下げるべき、あるいは実態調査した上で考えるべきとされている。本研究では、日本で入手できる種々の化粧品及び医薬部外品中の鉛の分析調査を行い、これらの議論とその対応に資することを目的とした。
研究方法
標準材料を用いて適切なマイクロウェーブ分解条件を検討した。日本で入手できる口紅やファンデーションなどのメイクアップ製品、及びハミガキや洗口液などオーラルケア製品など種々の化粧品及び医薬部外品を対象試料とした。試料は硝酸及びフッ化水素酸を加え高温加圧下でマイクロウェーブ照射して分解した。分解液は誘導結合プラズマ質量分析計を用いて分析し、試料中の鉛の濃度(ppm)を求めた。
結果と考察
口紅、リップグロス、リップライナー等を試験した結果、いずれも鉛は10 ppm未満であった。ファンデーション1品及びフェイスパウダー2品に10 ppm以上の鉛を検出し、うちフェイスパウダー1品は20 ppm以上であった。ほお紅についてはいずれも一定量の鉛が定量された。アイシャドウについては1品が非常に高い値を示した。ほとんど鉱物や顔料から成る製品に鉛が多く定量される傾向が認められた。口腔化粧品のうち液体ハミガキ及び洗口液に鉛はほとんど検出されなかった。練りハミガキの2品が1 ppm以上の値を示した。現状の化粧品の鉛量はリスクアセスメントでも十分安全域にあることがわかった。Trace-WGによる提案がなされた場合、企業の品質管理という面では十分対応可能な範囲であるものの、製品で管理すると言う点ではこれまでの日本における原料規制の考え方とは異なるため注意が必要と思われる。
結論
市販化粧品の鉛量を調査した。試料は硝酸及びフッ化水素酸を用いてマイクロウェーブ分解し、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)を用いて定量した。唇用化粧品に関して10 ppmを超える鉛を含む製品はなかった。パウダータイプファンデーション1製品に10 ppm以上の鉛を検出し、フェイスパウダーやアイシャドウで20 ppm以上の値を示す製品があった。口腔化粧品について鉛濃度が1 ppmを超えたのは、練り歯磨き2品だけであった。現状のほとんどの化粧品の鉛量は、科学的に安全と想定されるレベルにあることがわかった。

公開日・更新日

公開日
2011-06-06
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201034081C

成果

専門的・学術的観点からの成果
日本で入手できる市販化粧品及び医薬部外品の鉛の含有量を調査した。試料は硝酸及びフッ化水素酸を用いてマイクロウェーブオーブンで分解処理し、ICP-MSで定量した。口紅等唇用化粧品に関して鉛が10 ppmを超える製品はなかった。ファンデーションに10 ppm以上、フェイスパウダーやアイシャドウに20 ppm以上の値を示す製品があった。ハミガキ、洗口剤では練りハミガキ2品中の鉛が1 ppmを超えていた。現状ほとんどの製品は鉛が10 ppm以下となっていることがわかった。
臨床的観点からの成果
鉛の健康リスクとしては神経系に対する毒性が危惧されており、化粧品や医薬部外品については経皮暴露が主となるが口紅のように一定量を経口摂取することもある。小児の神経系に対する影響濃度と暴露状況からリスクアセスメントした結果では、口腔用を除く化粧品中の20 ppmの鉛は許容耐容濃度以上であり安全とされている。実態調査の結果、メイクアップ製品のほとんどは安全性に問題となるレベルにないと判断できた。
ガイドライン等の開発
医薬部外品原料について重金属が試験されているが、鉛を単独で定量する方法は規定されていない。国が医薬部外品及び化粧品といった製品について、鉛を含めた重金属のガイドラインを設定する予定はない。今後業界は自己責任で製品の鉛量を制限するため製品あるいは原料の鉛を定量することが求められ、本成果は多くの製品に適用できる方法であることを示した。
その他行政的観点からの成果
化粧品規制協力国際会議(ICCR)は米国、欧州連合、カナダ及び日本の化粧品規制当局ならびに化粧品工業会からなる国際的な化粧品の安全性を確保するための情報交換の場で、微量汚染物質(Trace)ワーキンググループでは製品中の鉛限度量が議論されている。本成果は日本の化粧品の現状を示すとともに、推奨値の決定根拠として活用された。また、本提案に対する日本の対応と施策の資料として活用する。
その他のインパクト
特になし。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-06-29
更新日
-

収支報告書

文献番号
201034081Z