過去の血漿分画製剤に対する核酸増幅法によるHCV遺伝子検査に関する研究

文献情報

文献番号
201034078A
報告書区分
総括
研究課題名
過去の血漿分画製剤に対する核酸増幅法によるHCV遺伝子検査に関する研究
課題番号
H22-医薬・指定-032
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
岡田 義昭(国立感染症研究所 血液 安全性研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 浜口 功(国立感染症研究所 血液 安全性研究部)
  • 野島 清子(国立感染症研究所 血液 安全性研究部)
  • 楠 英樹(国立感染症研究所 血液 安全性研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
4,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
過去に製造された血漿分画製剤によるHCV感染のリスクについて調査が実施されているが、原料血漿への核酸増幅検査(NAT)導入以前の血漿分画製剤に対して核酸増幅検査(NAT)によるHCV遺伝子の検査の必要性が指摘された。本研究班では、製造所から提供された古い血漿分画製剤からHCV遺伝子の有無を検討し、各製剤のHCV混入状況を解析した。
研究方法
製造工程等でウイルスが除去及び不活化されており、最終製品まで混入していたとしても極微量であると推定された。そのため、通常の血漿で実施されている核酸増幅法では検出できないと考え、抽出は5mLの血漿又は製剤から核酸を抽出できる市販キットと、検出はHCVスクリーニング法として汎用されている市販キットとを組み合わせたHCV測定系を構築した。血漿と血漿分画製剤の中で生物学的組織接着剤を構成するフィブリノゲンの濃度が90mg/mLと最も高く粘稠性も高かったため、この2つを用いて感度評価を実施した。評価のためのHCVは、HCV国内標準品を希釈して用いた。古い製剤の測定を実施する際には、市販されている同等の製剤に希釈したHCVを添加し、各測定毎の精度管理を行なった。HCV遺伝子の検出を行なった製剤は、1994年から2005年に製造されたトロンビン33ロット、第8因子6ロット、第9因子12ロット、生物学的組織接着剤14ロットの計65ロットである。
結果と考察
血漿とフィブリノゲンでのHCV検出感度は、ともに3IU/5mLであり、差は認められなかった。この検出感度は通常のHCVのNAT法の約100倍の高感度であった。市販されているトロンビン、第8因子、第9因子にHCVを添加して感度を評価したが、製剤間に著明な感度の差は認められなかった。本測定法を用いて古い製剤を検査したところ、インターナルコントロールが陰性となり判定不能な7ロットを除いた58ロットからは、HCV遺伝子は検出できなかった。判定不能な製剤は生物学的組織接着剤のフィブリノゲンであり、製剤中に界面活性剤が添加されており、抽出時にインターナルコントロールが効率良く抽出できないためと推定された。なお、生物学的組織接着剤のトロンビンは14ロットとも全てHCV陰性であった。
結論
古い血漿分画製剤からHCV遺伝子を高感度核酸増幅法を用いて測定したが、試験が成立した58ロットからHCVは検出できなかった。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201034078C

成果

専門的・学術的観点からの成果
血漿分画製品からのHCV遺伝子の検出は、製剤の性状の影響を受け、血漿よりも検出感度は低下する傾向がある。また、一般的に製造工程中にウイルス量が減少することから大容量から抽出し、高感度な検出法を用いないと検出できない。本研究の成果として5mLという大容量の製剤から製剤の種類を問わず高感度にHCV遺伝子を検出できる方法を構築した。この方法は、血漿分画製剤だけでなく血漿からも微量な病原体遺伝子の検出に有効であると考えられた。
臨床的観点からの成果
特記すべきことなし
ガイドライン等の開発
特記すべきことなし
その他行政的観点からの成果
平成23年3月8日に開催された薬事食品衛生審議会血液事業部会安全技術調査会及び医薬品等安全対策部会安全対策調査会の合同委員会において検査結果を報告した。この合同委員会は、HCV感染の救済が実施されている製剤以外の血液製剤によるHCV感染のリスクを評価するために開催され、企業からの肝炎発生の報告や製法からリスクを審査した。本研究の成果は、科学的に古い製剤でのHCVの混入状況を調べた資料としてHCV感染リスク評価に使用された。
その他のインパクト
特記すべきことなし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2014-06-09
更新日
2017-05-30

収支報告書

文献番号
201034078Z