我が国における新規ヒトレトロウイルスXMRVの検査法確立等に関する研究

文献情報

文献番号
201034072A
報告書区分
総括
研究課題名
我が国における新規ヒトレトロウイルスXMRVの検査法確立等に関する研究
課題番号
H22-医薬・指定-029
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
浜口 功(国立感染症研究所 血液・安全性研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 岡田 義昭(国立感染症研究所 血液・安全性研究部 )
  • 古田 里佳(大阪赤十字血液センター 研究部)
  • 冨田 善彦(山形大学 医学部)
  • 宮沢 孝幸(京都大学 ウイルス研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
6,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
これまでに新規レトロウイルスXMRVと前立腺癌、慢性疲労症候群との関連が報告されている。本邦においては、XMRVは未だ分離されていないが、安全な血液供給の観点から検査体制の確立が急がれる。そこで本邦におけるXMRVの感染状況把握と血液を介する感染の危険性を考慮に入れた迅速な血液のスクリーニング検査法の確立を目指す。
研究方法
(1)既知分子クローンを用いたEIA用抗原の開発
 研究利用が認められているXMRV分子クローンVP62-pcDNA3.1を鋳型にして、PCR法にてXMRV血清学検査用抗原(Gag、Pol、およびEnv)発現ベクターを構築する。発現ベクターを遺伝子導入し、遺伝子産物であるウイルスタンパク質を回収精製しXMRV抗体陽性血清およびポリクローナル抗体で評価する。良好な抗体反応性が得られた抗原発現系を選び出し、EIA抗原候補とする。
(2)核酸増幅検査法の開発
 XMRVゲノムを高感度に検出する核酸増幅検査法を確立する。XMRVが持続感染している細胞株の培養上清を用い、ウイルスに感受性の高い細胞株に感染させ、感染の成立した細胞より核酸を抽出し、複数のプライマーを用いて核酸増幅法を行い、非特異的な反応が生じなく、且つ高感度の核酸増幅法による検出系を確立する。
結果と考察
血球系(T、B、単球)、神経系、前立腺癌細胞株等、感染させた全ての細胞株からXMRVの遺伝子が、核酸増幅法によって検出できた。また、活性化した末梢血由来のT細胞にも感染が成立した。一方XMRV Gag capsid proteinに対する抗体検出法の開発を行った。今後Env抗体検出のためのさらなる改良が必要である。
さらにRT-PCRキットの品質評価を行った結果、一部の市販のキットにenMLV由来のRNAが混入していることを確認した。汚染原は添加されているモノクローナル抗体にenMLVのRNAが混入していたものと推察された。(Retrovirology 7, 110, 2010.)
結論
XMRVを検出するための核酸増幅法を開発した。それを用いることによって血液や細胞からのXMRV遺伝子の検出が可能になった。また、この検出系を用いて感受性を有する細胞株および活性化した末梢血由来のT細胞を検討したところ、血液系の細胞株以外に広範な細胞株に感染が成立することが明らかになった。

公開日・更新日

公開日
2011-05-10
更新日
-

収支報告書

文献番号
201034072Z