レセプト等を利用した薬剤疫学データベース作成に関する研究

文献情報

文献番号
201034035A
報告書区分
総括
研究課題名
レセプト等を利用した薬剤疫学データベース作成に関する研究
課題番号
H21-医薬・一般-022
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
椿 広計(情報・システム研究機構 統計数理研究所 データ科学研究系)
研究分担者(所属機関)
  • 藤田 利治(情報・システム研究機構 統計数理研究所 データ科学研究系  (前研究代表者))
  • 岡本 悦司(国立保健医療科学院 経営科学部)
  • 折井 孝男(NTT東日本関東病院 薬剤部)
  • 久保田 潔(東京大学大学院医学系研究科 薬剤疫学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 レセプト等を利用したデータベース作成して薬剤疫学的な検討を実施し、市販後医薬品の恒常的安全対策を支える情報基盤創設の根拠を提供する。
研究方法
 日本医療データセンターから2006年から2009年までの4年間の40歳以上のレセプトデータ(受療者実数は143,852人)の有償提供を受け、統計解析可能な状態に整備して、第1に「内容的な検討」を行った。第2に「方法論的な検討」として、大規模な医療施設において、ハッシュ関数による匿名化識別子を用いたレセプトデータと医療情報データベースを実際に連結した。第3に「諸外国の状況等についての情報収集」については、昨年度の情報更新を行った。
結果と考察
 第1の検討から、異なる医療施設での重複受診に伴う同一薬剤の重複処方は、かなりの頻度であることが明らかになった。睡眠導入剤や抗不安薬の計画性のある重複処方がなされている点が、関連する社会問題を勘案すれば注視する必要がある。併用禁止薬剤の併用処方は、重複処方に比べれば頻度は少ないものの、安全対策において重要な併用禁忌の薬剤組合せが処方されている実態が示された。薬剤と有害事象発生の関連についての探索的検討では、ネステッド・ケース・コントロール研究の実例として、高脂血症用薬使用と横紋筋融解との関連(スタチン製剤の使用者において横紋筋融解の発生リスクが増大)、抗精神病薬使用とパーキンソン病発生との関連(その他の抗精神病薬と比べて、非定型抗精神病薬において明らかなリスク増大)、抗精神病薬使用と糖尿病発生との関連(非定形抗精神病薬と比べて、その他の抗精神病薬において、リスクが増大する傾向)、消化性潰瘍用剤使用と骨折発生との関連(H2受容体拮抗剤・プロトポンプ阻害剤以外の消化性潰瘍用剤使用、および消化性潰瘍用剤併用において、明らかなリスク増大)の検討結果を得た。また、分母情報も用いたシグナル検出の検討を行い、実施可能であることを確認した。

 第2の検討として、大規模医療施設において、そこで発生するレセプトデータと医療情報データベースとを実際に連結し、レセプトデータの妥当性研究を実施するための体制を構築した。平成23年度はレセプトデータの妥当性研究を実施する。

 第3の検討から、わが国では、個人識別子の必要性や、データベースの利用を促すための環境作りが必要であることを認識し、その実現に向けた努力が必要と考えられる。
結論
 医薬品等の安全対策の改善のためにレセプトデータの活用は有望であるとともに、検討すべき技術的課題も多いことが明らかになった。

公開日・更新日

公開日
2011-05-26
更新日
-

収支報告書

文献番号
201034035Z