文献情報
文献番号
201034009A
報告書区分
総括
研究課題名
医薬品による有害事象の発生における個人差の要因に関する研究
課題番号
H20-医薬・一般-014
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
頭金 正博(国立医薬品食品衛生研究所 医薬安全科学部)
研究分担者(所属機関)
- 杉山 雄一(東京大学大学院薬学系研究科)
- 山本 弘史(国立がん研究センター中央病院)
- 東 雄一郎(国立医薬品食品衛生研究所 医薬安全科学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
6,880,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
医薬品による副作用の発症に個人差が生じる機構を、薬物動態学的観点から解析するとともに、抗がん剤の投与患者での症例情報を用いて副作用に寄与している患者背景因子を明らかにすることを目的とした。
研究方法
医薬品による副作用の発生に関与することが知られている薬物トランスポーターに着目して、副作用の発症における個人差が生じる要因を解析するとともに、トランスポーターが関与する臨床薬物間相互作用の情報を収集し、それらの強度をin vitro試験系の結果から予測する研究を行った。また、抗がん剤のソラフェニブおよびカペシタビンによる副作用の一つである手足症候群の発症と患者背景因子、治療効果、予防・対処方法との関係について、国立がん研究センターでの実診療での症例情報を用いて後方視的に検討した。
結果と考察
医薬品よる副作用の発症における個人差が生じる要因を薬物トランスポーターに着目して解析した。まず、トランスポーターが関与する臨床薬物間相互作用の情報を収集し、それらの強度をin vitro試験系の結果から予測する研究を行い、相互作用の強度を半定量的に予測可能な手法を開発した。また、P-糖タンパク質の甲状腺ホルモンによる遺伝子転写調節機構を解析し、甲状腺ホルモン受容体による発現誘導に必須の新たな制御領域を遺伝子転写調節領域で発見した。さらに、抗がん剤のソラフェニブおよびカペシタビンについて、国立がん研究センターでの実診療での症例情報を用いて副作用としての手足症候群と関連するデータ集積を行い、副作用の発生状況と治療効果について後方視的に検討したところ、カペシタビンによる手足症候群発症に影響を及ぼす患者背景因子は確認できなかったが、カペシタビンの治療効果と手足症候群の発症との間に関連性が示唆された。また、ソラフェニブによる手足症候群の発症は開始投与量の違いと相関することが示唆された。
結論
医薬品による副作用の発生に関与することが知られている薬物トランスポーターに着目して、副作用の発症における個人差が生じる要因を解析し、薬物間相互作用の発生を予測することが可能であることを示した。抗がん剤の服用患者での診療記録データを用いて副作用に関連するデータ集積を行い、副作用発症と関連する患者背景因子を探索する調査方法を確立した。
公開日・更新日
公開日
2011-05-26
更新日
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