妊婦及び授乳婦に係る臨床及び非臨床のデータに基づき、医薬品の催奇形性リスクの評価見直しに関する研究

文献情報

文献番号
201034008A
報告書区分
総括
研究課題名
妊婦及び授乳婦に係る臨床及び非臨床のデータに基づき、医薬品の催奇形性リスクの評価見直しに関する研究
課題番号
H20-医薬・一般-013
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
吉川 裕之(筑波大学 大学院人間総合科学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 江馬 眞(産業技術総合研究所 安全科学研究部門)
  • 三橋 直樹(順天堂大学医学部附属静岡病院 産婦人科)
  • 生水 真紀夫(千葉大学大学院 生殖機能病態学)
  • 北川 浩明(虎の門病院 産婦人科)
  • 村島 温子(国立成育医療研究センター 母性医療診療部)
  • 濱田 洋実(筑波大学 大学院人間総合科学研究科 )
  • 林 昌洋(虎の門病院 薬剤部)
  • 佐藤 信範(千葉大学大学院薬学研究院)
  • 水上 尚典(北海道大学 大学院医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
12,040,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究の最終目的は、妊産婦・授乳婦に使用される医薬品の臨床及び非臨床データから催奇形性のリスクの評価見直しに関して検討すること、医薬品の添付文書における記載等の情報提供の指針ともなり、さらに臨床的対応の原則的指針に結びつくような日本版薬剤胎児危険度分類基準を確立することである。この目的達成のために、分類法としてSEA-U分類を確立すること。
研究方法
 今年度も製薬企業の協力を得て、本分類作成に関わっていない第三者として自社医薬品のSEA分類試行をしていただき、結果について討議を行った。さらに、妊娠女性に対するその薬剤のUtilityの分類(U分類)の構築、およびSEA分類に基づく薬剤の総合評価基準について検討を行った。その際、研究班を構成する班員とともに、わが国の本研究領域における有識者を交えて討議を重ねた。これらを通じて、昨年度までの研究の結果抽出されている問題点の解決を試みた。
結果と考察
 研究の結果、それ以前までの研究で抽出され、SEA分類およびSEA分類の手引き(平成22年2月9日版)では完全には解決されていなかった問題点について解決策を提示することができた。Utility(U)分類を加え、SEA-U分類として完成させた。妊娠女性に対するその薬剤のUtilityの分類(U分類)およびSEA分類に基づく薬剤の総合評価基準(SEA-U分類)をそれぞれ構築することができた。SEA-U分類は、研究結果も臨床経験も同等に重視した分類であり、さらに動物実験データも加味し、従来のFDA分類やオーストラリア分類の欠点を克服するものである。また、単なるリスクカテゴリーのグレードを示したものではなく、その根拠を記号化して明示したものであり、ある医薬品についてリスクカテゴリーが一人歩きする危険性が少ない。
結論
  SEA-U分類(最終版)を完成させることができた。さらに、本SEA分類(最終版)にガイドライン化に向けた分類の手引きを添えることで、今後の普及を見据えた内容とすることができた。
 本SEA-U分類(最終版)は、新たな日本版薬剤胎児危険度分類基準として今後の普及が望まれる。

公開日・更新日

公開日
2011-05-31
更新日
-

文献情報

文献番号
201034008B
報告書区分
総合
研究課題名
妊婦及び授乳婦に係る臨床及び非臨床のデータに基づき、医薬品の催奇形性リスクの評価見直しに関する研究
課題番号
H20-医薬・一般-013
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
吉川 裕之(筑波大学 大学院人間総合科学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 江馬 眞(産業技術総合研究所 安全科学研究部門)
  • 三橋 直樹 (順天堂大学医学部附属静岡病院 産婦人科)
  • 生水 真紀夫(千葉大学大学院 生殖機能病態学)
  • 北川 浩明(虎の門病院 産婦人科)
  • 村島 温子 (国立成育医療研究センター 母性医療診療部)
  • 濱田 洋実(筑波大学 大学院人間総合科学研究科)
  • 林 昌洋(虎の門病院 薬剤部)
  • 佐藤 信範(千葉大学 大学院薬学研究院)
  • 水上 尚典(北海道大学大学院医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究の目的は、妊産婦・授乳婦に使用される医薬品の臨床及び非臨床データから催奇形性のリスクの評価見直しに関して検討すること、医薬品の添付文書における記載等の情報提供の指針ともなり、さらに臨床的対応の指針に結びつくような日本版薬剤胎児危険度分類基準を確立することである。この目的達成のために、分類法としてSEA-U分類を確立すること。
研究方法
 20年度からはSEA分類作成にかかり、研究分担者において実際に分類を行った。20, 21年度は製薬企業の協力を得て、本分類作成に関わっていない第三者として自社医薬品のSEA分類試行をしていただき、結果について討議を行った。さらに、22年度には妊娠女性に対するその薬剤のUtilityの分類(U分類)の構築、およびSEA分類に基づく薬剤の総合評価基準について検討を行った。その際、研究班を構成する班員とともに、わが国の本研究領域における有識者を交えて討議を重ねた。これらを通じて、20-22年度において問題点の解決をめざした。
結果と考察
 S(Study)分類、E(Experience)分類、A(Animal Experiment)分類の3要素から分類するSEA分類の確立のために班員および協力企業により、実際に分類しながら改訂を進めてきた。これに有用性として、U(Utility)分類を加え、SEA-U分類として完成させた。妊娠女性に対するその薬剤の総合評価基準(SEA-U分類)を構築することができた。SEA-U分類は、研究結果も臨床経験も同等に重視した分類であり、さらに動物実験データも加味し、従来のFDA分類やオーストラリア分類の欠点を克服するものである。また、単なるリスクカテゴリーのグレードを示したものではなく、その根拠を記号化して明示しており、ある医薬品についてリスクカテゴリーが一人歩きする危険性が少ない。
結論
 SEA-U分類(最終版)を完成させることができた。さらに、本SEA分類(最終版)にガイドライン化に向けた分類の手引きを添えることで、今後の普及を見据えた内容とすることができた。本SEA-U分類(最終版)は、新たな日本版薬剤胎児危険度分類基準として今後の普及が望まれる。ただし、ガイドライン作成中における改訂はありうる。

公開日・更新日

公開日
2011-05-31
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201034008C

成果

専門的・学術的観点からの成果
医薬品の添付文書には妊娠・授乳期において、必須の薬剤が禁忌であったり、逆に危険性の高い禁忌のものが実際に使われているものが少なくない。添付文書改訂を急ぐ薬剤をガイドラインとして示し、改訂に反映させることができる。
臨床的観点からの成果
医薬品の添付文書には妊娠・授乳期において、必須の薬剤が禁忌であるものとしては臓器移植後の免疫抑制剤があり、危険性の高い禁忌のものが実際に使われているものはアンギオテンシン変換酵素阻害剤(ACD-I)、アンギオテンシン受容体拮抗薬(ARB)のように羊水過少や胎児死亡を起こすものがある。これらの正しい使用が期待できる。
ガイドライン等の開発
1. 禁忌薬でも特定の状況下では妊娠中であっても投与する医薬品は。2. 禁忌薬の中で、妊娠と知らずに投与された場合、そのまま妊娠を継続しても臨床的に有意な胎児リスク上昇はないと判断する医薬品は。3. いわゆる有益性投与の医薬品のうち、妊娠中の投与に際して特に注意が必要な医薬品は。の3つのQ&Aを作成し、産婦人科診療ガイドライン-産科編2014に取り入れられた。
その他行政的観点からの成果
妊娠・授乳期における現在の医療用医薬品添付文書の使用上の注意のより適切な在り方の構築に大きく寄与すると考えられる。
その他のインパクト
また、厚生労働省が行っている「妊娠と薬情報センター」事業を効率よく推進することに寄与する。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
152件
その他論文(和文)
44件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
100件
学会発表(国際学会等)
33件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
林 昌洋
「妊娠中の睡眠薬服用」臨床で役立つ(睡眠薬Q&A)
薬局 , 59 (1) , 93-96  (2008)
原著論文2
林 昌洋
知って安心 妊娠中の薬」NHKテレビテキスト
今日の健康 , 10 , 78-81  (2008)
原著論文3
Obata-Yasuoka M, Yoshikawa H, et al.
Midtrimester termination of pregnancy by using gemeprost in combination with laminaria in women who have previously undergone cesarean section.
J Obstet  Gynecol Res , 35 (5) , 901-905  (2009)
10.1111/j.1447-0756.2009.01044.x.
原著論文4
Ema M, et al.
Fetal malformations and early7 embryonic gene expression response in cynomolgus monkeys maternally exposed to thalidomide.
Reprod Toxicol , 29 (1) , 49-56  (2010)
10.1016/j.reprotox.2009.09.003.
原著論文5
Tanaka T, Murashima A, et al.
Safety of neuraminidase inhibitors against novel influenza A (H1N1) in pregnant and breastfeeding women.
CMAJ , 181 (1) , 55-58  (2009)
10.1503/cmaj.090866.
原著論文6
幸田幸直、濱田洋実、他
「妊娠と薬外来」における薬剤相談の取り組み
Pharmacy Today , 22 (2) , 9-13  (2009)
原著論文7
Ogishima H, Hamada H, Yoshikawa H, Murashima A, et al.
High-dose unfractionated heparin therapy in a pregnant patient with antiphospolipid syndrome: a case report.
International Journal of Rheumatic Diseases , 13 (3) , 32-35  (2010)
10.1111/j.1756-185X.2010.01484.x.
原著論文8
濱田洋実
日本における医薬品添付文書の記載要領と問題点.薬物治療コンサルテーション
妊娠と授乳 , 59-68  (2010)
原著論文9
安部加奈子、濱田洋実
てんかん合併妊娠
周産期医学 , 40 , 243-246  (2010)
原著論文10
村島温子
エビデンスに基づく妊娠中の薬の使い方
日本医師会雑誌 , 139 , 2117-2121  (2011)
原著論文11
Yamada T, Minakami H, et al.
No maternal mortality from pandemic (H1N1) 2009 occurred in Japan.
BMJ  (2010)
原著論文12
吉川裕之
各国が定める妊娠期におけるリスクカテゴリー
月刊薬事(特集)妊娠と薬物療法 , 53 (8) , 93-95  (2011)
原著論文13
Hirata-Koizumi M, Ema M, et al.
Two- generation reproductive toxicity study of aluminium sulfate in rats.
Reprod. Toxicol. , 31 (2) , 219-230  (2011)
10.1016/j.reprotox.2010.11.004.
原著論文14
Hayashi M, Kitagawa H, et al.
Pregnancy outcome of women using Betamethasone : A comparative study,
Congenital Anomalies , 51 (4) , 7-7  (2011)
原著論文15
Yamane R, Hayashi M, Kitagawa H, et al.
Survey of pregnancy outcomes in women who used etizolam
Congenital Anomalies , 51 (4) , 7-7  (2011)
原著論文16
Horiya M, Murashima A, et al.
Efficacy of double vaccination with the 2009 pandemic influenza A (H1N1) vaccine during pregnancy.
Obstetrics and Gynecology , 118 (4) , 887-894  (2011)
10.1097/AOG.0b013e31822e5c02.
原著論文17
吉川裕之
産婦人科診療ガイドライン産科編の理解にあたって
周産期医学 , 43 (10) , 1207-1210  (2013)
原著論文18
Abe K,Hamada H, Minakami H, Yoshikawa H, et al
Impact of planning of pregnancy in women with epilepsy on seizure control during pregnancy and on maternal and neonatal outcomes.
Seizure , 23 (2) , 112-116  (2014)
10.1016/j.seizure.2013.10.003.
原著論文19
村島温子
エビデンスに基づいた妊婦と授乳婦の薬の選択と使いかた
Medecal Practice , 30 (9) , 1500-1506  (2013)
原著論文20
Saito S, Minakami H, et al.
Outcome of infants exposed to oseltamivir or zanamivir in utero 2 during pandemic (H1N1) 2009.
Am J Obstet Gynecol , 209 (2) , e1-9  (2013)
10.1016/j.ajog.2013.04.007.

公開日・更新日

公開日
2015-04-28
更新日
2015-05-25

収支報告書

文献番号
201034008Z