輸血副作用把握体制の確立-特に免疫学的副作用の実態把握とその対応-

文献情報

文献番号
201034006A
報告書区分
総括
研究課題名
輸血副作用把握体制の確立-特に免疫学的副作用の実態把握とその対応-
課題番号
H20-医薬・一般-009
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
高本 滋(愛知医科大学医学部 輸血部)
研究分担者(所属機関)
  • 倉田 義之(四天王寺大学 人間福祉学科)
  • 半田 誠(慶應義塾大学医学部 輸血・細胞療法部)
  • 岡崎 仁(日本赤十字社 血液事業本部 中央血液研究所 研究開発部)
  • 飯島 毅彦(杏林大学医学部 麻酔科)
  • 平山 文也(日本赤十字社 大阪府赤十字血液センター 研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
7,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
全国的な輸血副作用報告体制の確立及び輸血関連急性肺障害(TRALI)等の免疫学的副作用の実態把握、対応策の追求を目的とする。
研究方法
1.全国423施設における副作用(バッグ当り、含重症例)の調査
2.特定6施設における副作用(バッグ及び患者当り、含重症例、初回例、性差)の調査
3.血小板副作用に対する血漿減量、洗浄の検討
4.TRALIに関する検討
1)動物モデルの作製
2)非溶血性副作用におけるSiglec-14抗体の有用性
3)血小板濃厚液による呼吸機能への影響
結果と考察
1.回収率65%:1)副作用:バッグ当り頻度は平均1.5%(RCC0.9%、FFP1.1%、PC3.8%)、種類は発疹・蕁麻疹、掻痒感・かゆみ、発熱の順。2)重症例:発生率は0.02%、内訳では重症アレルギーが80%を占め、TRALI、TACO、感染症が続いた。
2.特定6施設:1)副作用:バッグ当り頻度は平均1.1%(RCC0.5%、FFP1%、PC2.6%)、実患者当り頻度は平均4.4%(RCC2.5%、FFP3.8%、PC10.1%)。種類は全国と同様の順。2)重症例:発生率は0.02%(全実患者中0.1%)、内訳では重症アレルギーが91%を占めた。初回輸血患者は実輸血患者の約半数を占め、副作用頻度は2.4%であり、種類についても特徴はなかった。性別については未だ明確ではなく、更なる検討を要する。
3.成人血液例に対し血漿減量の有効性は洗浄に比べ不十分であった。小児例に対し洗浄血小板は未処理血小板に比べ著明な副作用予防作用を示した。
4.TRALI:1)ミニブタを用いたTRALIの動物モデル作製に成功し、発症機序解明、治療法改善への応用が期待される。2)Siglec-14抗体がTRALIの一因となり得る。3)検索例(64例)では明らかな因子は抽出されず、更なる検討が必要である。
結論
輸血副作用はバッグ当り1.1-1.5%、製剤別ではRCC、FFP、PCの順に頻度が上昇する。実患者当りでは約4倍、PCでは10.1%、種類では発疹・蕁麻疹、掻痒感・かゆみ、発熱の順であった。重症例はバッグ当り0.02%、大部分が重症アレルギーであった。血小板副作用対策として血漿減量の有効性は限定的であり、洗浄は著効を示した。TRALIの原因究明は困難であるが、ミニブタの動物モデルが作製され、発症機序解明、治療法改善への応用が期待される。

公開日・更新日

公開日
2011-05-23
更新日
-

文献情報

文献番号
201034006B
報告書区分
総合
研究課題名
輸血副作用把握体制の確立-特に免疫学的副作用の実態把握とその対応-
課題番号
H20-医薬・一般-009
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
高本 滋(愛知医科大学医学部 輸血部)
研究分担者(所属機関)
  • 倉田 義之(四天王寺大学 人間福祉学科)
  • 半田 誠(慶應義塾大学医学部 輸血・細胞療法部)
  • 岡崎 仁(日本赤十字社 血液事業部 中央血液研究所 研究開発部)
  • 飯島 毅彦(杏林大学医学部 麻酔科)
  • 平山 文也(日本赤十字社 大阪府赤十字血液センター 研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
全国的な輸血副作用報告体制の確立及び輸血関連急性肺障害(TRALI)等の免疫学的副作用の実態把握、対応策の追求を目的とする。
研究方法
1.全国1830施設における輸血管理、副作用報告体制の調査
2.全国430施設における副作用(バッグ当り)の調査
3.特定6施設における副作用(バッグ及び患者当り)の調査
4.血小板副作用に対する予防投薬、血漿減量、洗浄の検討
5.TRALIに関する検討
1)臨床例、抗白血球抗体、動物モデル作製の検討
2)Siglec-14抗体の有用性
3)手術例における血液製剤の呼吸機能への影響
結果と考察
1.製剤一元管理、輸血療法委員会、副作用報告体制、100%報告率など、4年前に比べ管理、報告体制が改善。
2.全国施設:副作用:バッグ当り頻度は平均1.6%(RCC<FFP<PC)、種類は発疹・蕁麻疹、掻痒感・かゆみ、発熱の順。重症例:発生率は0.02%、内訳では重症アレルギーが80%を占め、続いてTRALI、TACO、感染症。
3.特定施設:副作用:バッグ当り頻度は平均1.4%(RCC<FFP<PC)、実患者当りでは平均4.8%、特にPCでは12.2%と高率。種類、重症例は全国調査と同様。
4.成人例に対し予防投薬、血漿減量の効果は洗浄に比べ不十分、小児例に対しても洗浄は著明な予防効果を示す。
5.TRALI:1)臨床例:過去3年間のTRALI確診、偽診例は46、45例、内ドナーの白血球抗体陽性率は約4割。抗HLA抗体陽性率:献血者727人中、女性の20、30代で5%、40代20%、50代10%、男性では3%以下。動物モデル:ミニブタを用いたTRALIのモデル作製に成功。2)白血球上Siglec-14(シアル酸受容体)に対する抗体のTRALIへの関与を示唆。3)FFPを男性由来と男性+女性由来の2群に分けた結果、後者が有意に呼吸障害(P/F<300)を発症。PCによる呼吸障害を検索したが有意な因子は抽出されず。
結論
輸血副作用はバッグ当り1.5%、製剤別ではRCC、FFP、PCの順に頻度が上昇する。実患者当りでは約3倍、PCでは10%強と高率であった。重症例はバッグ当り0.02%、大部分が重症アレルギーであった。血小板副作用に対し洗浄が著効を示した。TRALIに関しミニブタの動物モデルが作製され、発症機序解明、治療法改善への応用が期待される。女性由来製剤の排除導入には更なる検討の必要がある。

公開日・更新日

公開日
2011-05-23
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201034006C

成果

専門的・学術的観点からの成果
輸血副作用の全国的報告体制確立のため、症状項目中心の一次、診断項目を含めた二次報告表を作成し、全国的な普及を進めている。全国1830施設に対する輸血管理、副作用報告の調査では製剤一元管理、輸血療法委員会、責任医任命、副作用報告体制、100%報告率など4年前の調査に比べ明らかに回答率が上昇しており、全国医療施設におけるヘモビジランスへの認識が高まっている。過去3年間のバッグ当りの副作用発生率は全国(275施設)では1.6%、特定6施設では1.4%とほぼ近似した値を示すようになってきている。
臨床的観点からの成果
副作用頻度はバッグ当りで約1.5%であったが、実患者当りでは4.8%と高く、特に血小板製剤(バッグ当り3.42%)では12.2%と高率であった。副作用対策として洗浄血小板の有用性が明らかになっており、特に重症例にはその使用が必要と考えられる。致死的な副作用、輸血関連急性肺障害(TRALI)についてはミニブタの動物モデルが作製され、今後発症機序解明、治療法改善への応用が期待される。また、手術例では女性由来製剤による呼吸障害が示されており、更に症例を拡大しTRALIとの相関を検討する必要がある。
ガイドライン等の開発
輸血副作用の全国的報告体制確立のため、症状項目中心の一次、診断項目を含めた二次報告表を作成し、2010年11月には日本輸血・細胞治療学会のホームページの基準/ガイドライン項目に「輸血副作用の症状項目ならびに診断項目表」を公開し、全国的な普及を進めている。
その他行政的観点からの成果
輸血副作用の全国的な報告体制の確立に向けて、浜口班との協力の下、オンライン報告を進め、従来の大学及び中小病院の計12施設を、2010年より31大学病院を加えた43施設に拡大している。また、血小板副作用に対する洗浄血小板の有用性が明らかになっており、特に重症例に対し日赤に供給を要望して行く必要がある。一方、TRALIに関し女性由来製剤による術後呼吸障害が示されているが、更に症例を蓄積する必要があり、女性由来製剤の排除導入には、我国での低発症率、ドナー数減少などを考慮に入れた慎重な検討を要する。
その他のインパクト
特記事項は無し。

発表件数

原著論文(和文)
8件
原著論文(英文等)
8件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
2件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2018-06-21
更新日
-

収支報告書

文献番号
201034006Z