文献情報
文献番号
201034005A
報告書区分
総括
研究課題名
輸血副作用の原因遺伝子ハプトグロビン欠失アリルの迅速簡便な診断法の確立と輸血前診断への臨床応用
課題番号
H20-医薬・一般-008
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
神田 芳郎(久留米大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
- 佐川 公矯(久留米大学 医学部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
3,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
輸血後アナフィラキシーショックの原因となり得る血漿蛋白欠損のうち日本人を含む東アジア人集団では、ハプトグロビン(Hp)欠損症が最も高頻度である。Hp遺伝子の全長欠失を伴うHp遺伝子欠失アリル(Hpdel)は先天性Hp欠損症の原因遺伝子で、ホモ接合体ではHpが合成されず、輸血等により抗Hp抗体が産生されアナフィラキシーショックを惹起すると考えられる。日本赤十字社による調査では無Hp血症患者は全例Hpdelのホモ接合体であり、輸血前にHpdelの遺伝子検査を実施すれば、無Hp血症に基く重篤な輸血副作用の回避が可能になると考えられる。当該研究計画の目的は、臨床現場で利用可能なHpdel迅速診断法を確立し、より安全な輸血医療の実現を目指すことである。
研究方法
当該年度では、より広い臨床現場における検査の実現を目的とし、専用機器や遺伝子解析専門技術者を必要としない恒温DNA増幅法であるLAMP(Loop-mediated isothermal amplification)法を用いたHpdel検出法を確立した。さらにこれまでに開発した2つのリアルタイムPCR法を用いて、新規に導入したリアルタイムPCR機器(LightCycler 480)を用い、機器間での結果の相同性あるいはソフトウェアの使い勝手等の比較をおこなった。また、リアルタイムPCR法の汎用化に伴い、特徴の異なる反応試薬製品が購入可能となっており、こうした製品を用い既に確立した診断法2法についての最適化と評価をおこなった。
結果と考察
当該年度では輸血前診断を継続し研究期間終了の平成23年3月31日までに5,286名の輸血予定患者について遺伝子診断を実施し、2名のHpdelホモ接合体と180名のヘテロ接合体を認めた。また、さらに広い施設でのHpdel診断を可能にするために、LAMP法による診断法を確立した。鋳型となる血液サンプルの調整法を幾つか比較し、従来この方法で用いられてきた熱変性と遠心を必要としない50 mM NaOHによる希釈のみで検査が可能となり熱変性をおこなう為のブロックインキュベーターや遠心機が不要で必要な機器が恒温槽のみになったことで目的に即した検査法が確立できた。また、他予算により導入されたリアルタイムPCR機器を用いた使用機器の比較、市販の反応試薬を用いた試薬の比較を通じ、更なる診断法の簡便化と最適化を達成することができた。
結論
当該研究期間内に開発をおこなった3つの診断法によって得られた遺伝子型はこれまでに調べた全てのサンプルで一致し、いずれの診断法も信頼に耐えうる方法であることを示すことができた。
公開日・更新日
公開日
2011-05-23
更新日
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