文献情報
文献番号
201034001A
報告書区分
総括
研究課題名
ナノ物質等を配合した化粧品及び医薬品部外品の安全性及び品質確保に係わる試験法に関する研究
課題番号
H20-医薬・一般-001
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
五十嵐 良明(国立医薬品食品衛生研究所 生活衛生化学部)
研究分担者(所属機関)
- 杉林 堅次(城西大学 薬学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
7,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
ファンデーションの体質顔料として使われている種々のシリカの各種媒体中における粒度分布を測定し、製剤中での存在状態を予測する。ナノ物質の皮膚吸収の有無を明らかにするため、モデルナノ粒子を用いて健常皮膚モデル、角層剥離皮膚モデル、カミソリで皮膚を傷つけた皮膚モデル及び注射針で貫通孔をあけた皮膚モデルに対する皮膚透過性を評価した。角層下に存在する生細胞(ヒト真皮繊維芽細胞とヒト表皮角化細胞)に対する酸化チタン粒子の細胞障害性及遺伝毒性を評価した。ナノ物質に対する抗原認識反応に対する影響をヒト単球由来細胞を用いて検討した。
研究方法
試薬及び化粧品原料グレードのシリカ粒子または懸濁液を生理食塩水等で希釈したときの粒度分布を測定した。THP-1細胞に各ナノ物質を添加して培養し、ATP量から細胞生存率(%)を求めた。培養上清中の炎症性サイトカイン及びケモカインをビーズアレイ法で測定した。ヘアレスラットの皮膚を採取し傷害処理を行い、蛍光ポリスチレンビーズまたはFITC-dextranの皮膚透過量を求めた。酸化チタンのヒト表皮角化細胞及び真皮線維芽細胞に対する障害性をMTT 染色、LDH放出量、IL-1α産生量、及びDNA障害性をBrdU取り込み及びcomet assayで評価した。
結果と考察
試薬のシリカ粒子はナノサイズで単分散していているが、化粧品原料シリカは安定した凝集体で存在した。シリカ粒子のヒト単球由来細胞に対する細胞毒性は酸化チタンに比べてやや強く、平均粒子径が小さい方が強く表れた。シリカ自体の皮膚感作性は認めなかったが、IL-8を産生して他の物質の免疫反応性に関与する可能性が示唆された。蛍光ポリスチレンビーズはいずれの皮膚についても透過せず表面にのみ観察された。皮膚を貫通した細孔ルートが存在する場合はナノ粒子の透過は認められるものの、貫通していない場合は、細孔壁面にとどまると考えられた。損傷皮膚に対しては酸化チタンの細胞障害性に注意が必要であるが、適切な結晶形と表面にコーティングで軽減した。
結論
シリカには特性の異なる種々の粒子があることからキャラクタライゼーションし、その生体影響との関係を評価することが必要と思われた。酸化チタンのように皮膚に溶解しない物質は、角層を介して皮内に侵入する可能性は低いことが示された。損傷皮膚に酸化チタンを使用する際は細胞障害性があり注意が必要であるが、適切な結晶形を選択し、表面にコーティングを施すことで毒性は軽減した。
公開日・更新日
公開日
2011-06-06
更新日
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