母乳のダイオキシン類汚染の実態調査と乳幼児の発達への影響に関する研究

文献情報

文献番号
201033046A
報告書区分
総括
研究課題名
母乳のダイオキシン類汚染の実態調査と乳幼児の発達への影響に関する研究
課題番号
H22-食品・一般-018
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
岡 明(杏林大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 多田 裕(東邦大学 医学部)
  • 中村 好一(自治医科大学 医学部)
  • 近藤 直実(岐阜大学 医学部)
  • 板橋 家頭夫(昭和大学 医学部)
  • 河野 由美(自治医科大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
13,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
母乳哺育児は耐用一日摂取量の約20倍のダイオキシン類を摂取しており、その安全性を確保するためにも母乳を介したダイオキシン類の人体汚染の評価を継続することが必要な状況である。本研究では1997年より継年的に母乳中のダイオキシン類等の濃度を測定評価してきており、主に以下の2点を調査する。(1)母体に蓄積したダイオキシン類は母乳中に高濃度の分泌されるため、人体汚染の指標として母乳中のダイオキシン類濃度の経年的な変化を調べる。(2)母乳から摂取したダイオキシン類等が乳児の発育発達に与える影響を長期的に調査検討する。
研究方法
産後1ヶ月の母乳の提供を受けダイオキシン類等の濃度を測定する。濃度測定した母乳で哺育された乳児の健康状態を1歳時に検査すると共に、一部の児では1歳時点での児の血中の濃度も測定する。アレルギー性疾患と診断された1歳児での血中ダイオキシン濃度の測定を行い疾患とダイオキシンの関連について検討する。さらに、過去にダイオキシン濃度を測定した児に対する質問紙による追跡調査を行う。
結果と考察
初産婦の産後1か月の母乳中のダイオキシン濃度(PCDDs+PCDFs+Co-PCBsの合計)は、平均13.0 pg-TEQ/g-fatであり漸減傾向を示していた。長期的経過では、1997年から2009年までの間、母乳中のダイオキシン類の濃度は有意に低下していた。1歳時の評価では、生後1か月時点の母乳中のダイオキシン類濃度が高いほど乳児期の体重の低下することが示されたが、成長に対する影響は軽微なものと考えられた。児の1歳での精神発達の指標とダイオキシン類摂取量とに有害な関連は認めず、乳児では明かな発育発達への影響は認められなかった。総PCBについても検討を行い、総PCBもダイオキシン類と同様に母乳を介して乳児が汚染されると推定された。例数は少ないがアレルギー性疾患を有する児でのダイオキシン類濃度には一定の傾向を認めず、影響は認められなかった。
結論
母乳を哺乳している児はいまだに耐用一日摂取量をはるかに越えるダイオキシン類を摂取しており重大な問題であるが、ダイオキシン対策の効果によりダイオキシンの人体汚染の状況は改善傾向にあることが示された。また、乳児の発育発達やアレルギー疾患発症への影響については、1歳時では明かな問題は認めらなかった。今後さらに行動面など長期的な追跡が必要と考えられる。

公開日・更新日

公開日
2011-05-18
更新日
-

収支報告書

文献番号
201033046Z