自家産米摂取によってカドミウム曝露を受けた農家に対する砒素と鉛の複合曝露とその健康の影響

文献情報

文献番号
201033042A
報告書区分
総括
研究課題名
自家産米摂取によってカドミウム曝露を受けた農家に対する砒素と鉛の複合曝露とその健康の影響
課題番号
H22-食品・一般-014
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
香山 不二雄(自治医科大学 薬理学講座 環境毒性学部門)
研究分担者(所属機関)
  • 堀口 兵剛(自治医科大学 薬理学講座 環境毒性学部門 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
16,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
東北地方の或る農村地域では、比較的高濃度のカドミウム(Cd)を含む自家産米を食べ続け、そのために高度のCdの腎臓への蓄積とそれによる腎機能への影響を認める農家が存在する。しかし近年、米中Cd濃度を低減するために稲の出穂期前後に田に水をはる湛水管理という方法が行われるようになってきた。ところが一方で湛水管理により米中砒素濃度が高くなるという可能性も指摘されている。この研究では高度の経口Cd曝露を受けた農家の集団において健康診断を実施し、砒素や鉛等の環境汚染金属の複合曝露の程度とその健康影響について明らかにする。
研究方法
 上記の地域において4カ所の部落を選択し、40歳以上の農家を対象に健康診断を実施した。採血、採尿などを行い、血液中Cd・鉛濃度、尿中Cd・砒素濃度を測定した。腎機能への影響の指標として尿中α1ミクログロブリン・β2ミクログロブリン濃度を測定した。また、農家の自家産米中のCd・砒素濃度も測定した。
結果と考察
 対象者548人中406人が健康診断を受診した(受診率74.1%)。基準値以上のCd濃度の米は見られなかったため、湛水管理の徹底により近年のこの地域の農家の経口曝露量は低下していると考えられた。また米中砒素濃度も日本の他の地域のものと比較して高くはなかったため、湛水管理による米からの砒素の曝露量の増加はほとんどないものと推測された。しかし、血中・尿中Cdともに高齢者で高い値を示していたために、過去に曝露されたCdが体内に高度に蓄積していると考えられた。また血中鉛濃度と尿中砒素濃度は健康影響を引き起こす程の高い値は見られなかった。血中・尿中Cd濃度は腎機能への影響と有意の相関を示したが、血中鉛と尿中砒素には腎機能との相関は認められなかった。そして 70歳を超える高齢者の中にはCdによる腎機能障害が疑われる方が数人見つかった。
結論
この地域では湛水管理は米中Cd濃度を低減するための非常に効果的な手段であると考えられるため、若い世代における新たなCd曝露を予防するために今後も継続して湛水管理を行う必要がある。しかし、過去に高度のCd曝露を受けてしまった高齢者の中には腎機能障害が発症する恐れがあるため、今後とも経過観察が必要である。

公開日・更新日

公開日
2011-05-31
更新日
-

収支報告書

文献番号
201033042Z