食品中の自然毒のリスク管理に関する研究

文献情報

文献番号
201033039A
報告書区分
総括
研究課題名
食品中の自然毒のリスク管理に関する研究
課題番号
H22-食品・一般-011
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
長島 裕二(東京海洋大学 海洋科学部)
研究分担者(所属機関)
  • 荒川 修(鹿児島大学 水産学部)
  • 塩見 一雄(東京海洋大学 海洋科学部)
  • 近藤 一成(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 佐竹 元吉(富山大学 和漢医薬学総合研究所)
  • 紺野 勝弘(富山大学 和漢医薬学総合研究所)
  • 登田 美桜(国立医薬品食品衛生研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
11,250,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
自然毒は食品のリスク要因の中でも最も危険なものの1つとされているが、自然毒食中毒の情報が散在しているため、全体的な問題点やリスク管理の優先順位付けが困難である。加えて近年新たな食中毒も発生している。そこで本研究では、食品中の自然毒のリスク管理手法確立を目的とする。
研究方法
自然毒食中毒のリスク情報収集のため、自然毒食中毒事例を調査した。また、食品中の自然毒に関するリスク管理の現状を把握するため、都道府県等の食品衛生担当部局を対象にアンケート調査を行った。さらに、自然毒の毒性調査と毒成分解明のため、動物性自然毒では、フグ血液によるフグ毒の運搬を調べ、沖縄県西表島で採取した小型巻貝11種37個体のフグ毒をLC/MSで測定した。フィリピンならびに沖縄県からマガキガイを入手して部位別に毒性試験を行った。植物性自然毒では、スギヒラタケから単離した脂肪酸の培養神経細胞に与える影響を調べ、アジサイ葉のシアン化合物とアルカロイドを分析した。アマチャの濃度を変えて試飲し、苦味や健康への影響を調べた。
結果と考察
過去22年間の自然毒食中毒事例をまとめた。アンケートの結果、自然毒食中毒の注意喚起と自然毒の危険性の周知がリスク低減化に有効であることが分かった。フグ毒はトラフグ血漿タンパク質以外にも、フグ毒をもたないアイナメ血漿、ウシ血清アルブミンやα-1酸性タンパク質とも非特異的に結合した。小型巻貝のコブムシロとチャイロヨフバイから新たにフグ毒が検出された。フィリピン産と沖縄産のマガキガイは毒性を示したが、鰓下腺だけが有毒で、鰓下腺抽出液を経口投与した場合には毒性はみられなかった。スギヒラタケから単離したエレオステアリン酸は神経細胞に選択的に作用した。アジサイ葉からシアン化合物は検出されず、嘔吐性アルカイドが検出された。アマチャは濃度が濃い場合に吐気や悪心を催すが、濃度が薄く色が透明なものでは問題なかった。日本の有毒植物の情報を収集・整理し、「日本の有毒植物」を刊行する。
結論
自然毒食中毒については国民への注意喚起と自然毒の危険性の周知がリスク低減下に有効で、情報提供と教育が重要な取り組みであることが示唆された。新たな食中毒の可能性が危惧されたマガキガイについては経口毒性はないことから食品衛生上問題ないこと、アマチャに関しては濃度が薄く色が透明なものでは問題ないことを明らかにした。

公開日・更新日

公開日
2011-05-18
更新日
-

収支報告書

文献番号
201033039Z