アラキドン酸補給の安全性に関する研究

文献情報

文献番号
201033030A
報告書区分
総括
研究課題名
アラキドン酸補給の安全性に関する研究
課題番号
H22-食品・一般-002
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
浜崎 智仁(富山大学 和漢医薬学総合研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 奥山 治美(金城学院大学 脂質栄養オープンリサーチセンター)
  • 大原 直樹(金城学院大学 薬学部)
  • 内藤 由紀子(国立循環器病研究センター 病態ゲノム医学部)
  • 螺良 愛郎(関西医科大学 医学部)
  • 小林 哲幸(お茶の水女子大学大学院 人間文化創生科学研究科)
  • 永田 伴子((財)食品薬品安全センター秦野研究所 )
  • 橋本 道男(島根大学 医学部)
  • 守口 徹(麻布大学 生命・環境科学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
13,230,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
過去半世紀の間のリノール酸(アラキドン酸(ARA)前駆体)の摂取増に伴い、ARAカスケードを抑える医薬品が有効な疾患が増えてきた。このような食環境で、ARAを補給することが安全かどうかを評価することを目的とする。
研究方法
以下の研究を行う。
1.ARA補給の安全性に関する研究(総括、浜崎・奥山)。
2.脳卒中易発症高血圧自然発症ラット(SHRSP) の病態進行に対するARA投与の影響の検討(大原)。
3.脂質メタボローム解析法を用いたラット炎症病態と必須脂肪酸バランスの解析(小林)。
4.ARA補給の炎症への影響の評価(内藤)。
5.胎仔期のARA投与が乳がん発症に及ぼす影響の評価(螺良)。
6.発がんプロモーション過程への影響評価(永田)。
7.加齢ラットの空間認知機能に及ぼすアラキドン酸長期投与の影響(橋本)。
8.老若マウスの脳機能に及ぼすARAの比較検討(守口)。
9.我国の女子学生及び中高年女性の食生活と血液中のアラキドン酸等多価不飽和脂肪酸の割合について(鈴木)。
結果と考察
1.前川論文(BBRC 2010;402:431)では、ARAで小眼症が見られたことから、研究を進める事になった。
2.投与第6週までの観察ではARA投与の影響は認められていない。13週間投与後の結果これから検討する。
3. ω6系列脂肪酸に富む経腸栄養剤は炎症を増悪する分子群が多くなることが、裏付けられた。
4.ARA補給は炎症性大腸炎を増悪させなかった。今後、病理学的検査、血液学的検査、血液生化学的検査、大腸炎の指標を調べる。
5. ARA添加食群では、他群に比べて腫瘍塊の体積が有意に大きかった。
6.投与24週間の観察終了後に全身の器官を組織学的に検索し、ARAの発癌促進作用の有無を評価する。
7. ARA投与ラットではすべての報酬餌をとりきるに要した時間(摂取所要時間)がコントロール群に比べて有意に低値を示した。
8. n-3系脂肪酸欠乏マウスのARA投与群では、 ロータロッド試験で顕著な運動機能の低下が特徴的に観察された。
9.血漿および血球のARAについては、地域差が見られなかった。中高年女性では、農村地域よりも漁村地域の方が、ARA、EPAおよびDHAが高い傾向にあった。
結論
上記をまとめると、ARAはがん、炎症、運動量など全てにわたって、活発化させるようである。特に、運動量増加は、n-3系欠乏時には、落ち着きをなくすとも考えられる。動物実験で安全性に問題があり、ヒトへの投与は恐らく勧められない。

公開日・更新日

公開日
2011-05-27
更新日
-

収支報告書

文献番号
201033030Z