食品添加物等における遺伝毒性・発がん性の短期包括的試験法の開発に関する研究

文献情報

文献番号
201033025A
報告書区分
総括
研究課題名
食品添加物等における遺伝毒性・発がん性の短期包括的試験法の開発に関する研究
課題番号
H21-食品・一般-011
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
鰐渕 英機(大阪市立大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 今井田 克己(香川大学 医学部)
  • 辻内 俊文(近畿大学 理工学部)
  • 魏 民(大阪市立大学 大学院医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
25,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、がんの一次予防を最終目標とし、食品中の化学物質、特に食品添加物等の遺伝毒性と発がん性を短期的かつ包括的に検出できる新しい発がんリスク評価法の開発を目的とする。
研究方法
被検物質としてラット肝発がん物質であるダンマル樹脂、IQおよびコウジ酸を用いて、それらの発がん性およびin vivo変異原性についてgpt deltaラットを用いた18週間多臓器発がん性試験により評価した。さらに、B6C3F1マウスを用いた新規マウス発がんリスク評価試験法の開発を行った。ラット腎発がんおよびマウス肺発がんの新規前がん病変マーカーの同定も行った。
結果と考察
gpt deltaラットを用いた18週間多臓器発がん性試験では、ダンマル樹脂の肝発がん促進作用が認められ、2年間発がん性試験と一致した。さらに、ダンマル樹脂は肝臓において変異原性を示さないことが明らかとなった。一方、遺伝毒性発がん物質であるIQは変異原性を有することが確認された。これらの結果は、この2物質の変異原性に関するこれまでの報告と一致していた。また、遺伝毒性の有無が明らかでないコウジ酸を検討した結果、変異原性を有しない可能性が強く示唆された。以上より、gpt deltaラットを用いた本試験法は発がん性と変異原性の包括的評価に有用であることが明らかとなった。
B6C3F1マウスを用いた肝二段階発がん性試験では、肝部分切除後DENを単回腹腔投与し、その後IQを投与することでIQの肝発がん促進作用が認められ、新規マウス発がんリスク評価試験法の開発に成功した。
腎腫瘍のプロテオーム解析結果より、新規腎発がんの前がん病変マーカーとしてS100A11の同定に成功した。マウス肺扁平上皮がんモデルにおいて、扁平上皮化生が生じるより以前に、気管支肺胞幹細胞が増加することが明らかとなった。肺扁平上皮がんの発生に関与する幹細胞が存在する可能性が示唆され、がん幹細胞説の観点から、前がん病変マーカーの同定につながりうると期待される。これらの結果、新しい発がんリスク評価法の開発に寄与すると考えられる。
結論
本試験法では、食品添加物等の発がん性の評価とin vivo変異原性の検討を合わせて実施できると同時に、化学食品添加物の発がん性に対する遺伝毒性の寄与についても検討すること可能で、新しい発がんリスク評価法であると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-

収支報告書

文献番号
201033025Z