食品を介するBSEリスクの解明等に関する研究

文献情報

文献番号
201033007A
報告書区分
総括
研究課題名
食品を介するBSEリスクの解明等に関する研究
課題番号
H20-食品・一般-008
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
佐多 徹太郎(国立感染症研究所 感染病理部)
研究分担者(所属機関)
  • 福田 茂夫(北海道立総合研究機構畜産試験場 畜産工学グループ)
  • 石黒 直隆(岐阜大学 応用生物学部)
  • 萩原 健一(国立感染症研究所 細胞化学部)
  • 堀内 基広(北海道大学大学院 獣医学研究科)
  • 堂浦 克美(東北大学大学院 医学系研究科)
  • 古岡 秀文(国立大学法人帯広畜産大学 基礎獣医学研究部門)
  • 小川 晴子(国立大学法人帯広畜産大学 畜産衛生学研究部門)
  • 横山 隆(独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究所 プリオン病研究センター)
  • 柴田 宏昭(独立行政法人医薬基盤研究所 霊長類医科学研究センター)
  • 北本 哲之(東北大学大学院 医学系研究科)
  • 村山 裕一(独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究所)
  • 新 竜一郎(長崎大学 医歯薬学総合研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
110,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究班では、1)定型および非定型BSEに係わる感染発症機序の解明、2)「種の壁」のメカニズムの解明、3)食肉検査における高感度検出法の開発、4)食用となるシカのCWDリスク評価、を中心として研究を行う。

研究方法
詳細は研究報告書に譲る。
結果と考察
脳内接種による種々の動物伝達試験では、非定型BSEは定型BSEに比べて潜伏期間が短いことが明かとなった。非定型BSEは近交系マウスには盲継代してもまた他の小動物にも伝達しなかったが、牛や牛プリオン遺伝子組換えマウスや初回接種のサルは、定型BSE例と比べても半分の潜伏期間で発症し、ヒトvCJDでみられた花弁状プリオン斑は定型BSE接種サルに、非定型BSE接種サルではsCJD様のプリオン沈着がみられた。非定型BSEはキメラマウスの実験でも定型BSEと異なる宿主感受性を示した。また腸管でのリンパ系細胞から神経系細胞へのプリオンの伝播は低率ながら起きることが示唆された。プリオンの取り込みに関与する宿主因子Peripherinを同定し、Peripherin過剰発現遺伝子組換えマウスへのBSE由来プリオン接種実験では病期の短縮が認められた。プリオン産生に影響する宿主因子としていくつか同定し特異性を確認した。高感度検出法として、PMCA法では非定型BSEプリオンの増幅が可能となり、また定型BSEプリオン接種したサル由来のプリオンも十分増殖でき、髄液や血液といった生前の検体からでも検出できるようになった。Realtime QUIC法では定型BSEプリオン増殖が可能となった。北海道の鹿専用の簡易と殺場でシカ延髄の採材を行うためのマニュアルを作製し、CWDのサーベイランスを実施したところ、道内で捕獲された70頭のエゾシカは全例陰性で、PrP遺伝子多型はみられなかった。

結論
非定型BSEプリオンが定型BSEとは生化学的そして伝達試験においても性状が異なり、潜伏期間が短く、病変が高度であることから、病原性が高いことが考えられた。脳内接種したサルは定型BSE例はヒトvCJDと類似する所見であった。PMCA法で非定型BSEプリオンも増幅でき、また定型BSEプリオン接種サル由来のプリオンは髄液や血液検体で検出でき、生前診断が可能となった。ほかの研究分担者の成果も予定通り得られた。成果については各分担報告を参照されたい。

公開日・更新日

公開日
2011-05-26
更新日
-

文献情報

文献番号
201033007B
報告書区分
総合
研究課題名
食品を介するBSEリスクの解明等に関する研究
課題番号
H20-食品・一般-008
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
佐多 徹太郎(国立感染症研究所 感染病理部)
研究分担者(所属機関)
  • 福田 茂夫(北海道立総合研究機構畜産試験場 畜産工学グループ)
  • 石黒 直隆(岐阜大学 応用生物学部)
  • 萩原 健一(国立感染症研究所 細胞化学部)
  • 堀内 基広(北海道大学大学院 獣医学研究科)
  • 堂浦 克美(東北大学大学院 医学系研究科)
  • 古岡 秀文(国立大学法人帯広畜産大学 基礎獣医学研究部門)
  • 小川 晴子(国立大学法人帯広畜産大学 畜産衛生学研究部門)
  • 横山 隆(独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究所 プリオン病研究センター)
  • 柴田 宏昭(独立行政法人医薬基盤研究所 霊長類医科学研究センター)
  • 北本 哲之(東北大学大学院 医学系研究科)
  • 村山 裕一(独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究所)
  • 新 竜一郎(長崎大学 医歯薬学総合研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究班では、1)定型および非定型BSEに係わる感染発症機序の解明、2)「種の壁」のメカニズムの解明、3)食肉検査における高感度検出法の開発、4)食用となるシカのCWDリスク評価、を中心として研究を行う。

研究方法
詳細は研究報告書に譲る。
結果と考察
脳内接種による種々の動物伝達試験では、非定型BSEは定型BSEに比べて潜伏期間が短いことが明かとなった。非定型BSEは近交系マウスには盲継代してもまた他の小動物にも伝達しなかったが、牛や牛プリオン遺伝子組換えマウスや初回接種のサルは、定型BSE例と比べても半分の潜伏期間で発症し、しかも異なる病理所見を示した。つまりヒトvCJDでみられた花弁状プリオン斑は定型BSE接種サルにはみられたが、非定型BSE接種サルではsCJD様のシナプス型のプリオン沈着がみられた。非定型BSEはキメラマウスの実験でも定型BSEと異なる宿主感受性を示した。脳内発現サイトカインの役割はプリオン病の病態においてきわめて限定的であった。また牛回腸ループに投与した組換えマウスプリオンタンパク質はM細胞のドームや粘膜下組織で樹状細胞やマクロファージに取り込まれた。腸管でのリンパ系細胞から神経系細胞へのプリオンの伝播は低率ながら起きることが示唆された。プリオンの取り込みに関与する宿主因子Peripherinを同定し、細胞内へのプリオン取り込みを増強させること、またPeripherin過剰発現遺伝子組換えマウスへのBSEプリオン接種実験で病期の短縮がみられた。またプリオン産生に影響する宿主因子としてLRP1ほか、いくつかを同定した。高感度検出法として、PMCA法では非定型BSEプリオンの増幅が可能となり、また定型BSEプリオンを接種したサル由来のプリオンも十分増殖でき、髄液や血液といった生前の検体からでも検出できるようになった。Realtime QUIC法を開発し、定型BSEプリオン増殖が可能となった。vCJDプリオンをヒト型129V/Vノックインマウスに腹腔内投与しても脾臓に沈着はみられなかったが、脳内投与では高率に感染しプリオン沈着がみられた。北海道の鹿専用の簡易と殺場で延髄の採材を行うためのマニュアルを作製し、CWDのサーベイランスを実施したところ、道内で捕獲された計70頭のエゾシカは全例陰性で、PrP遺伝子多型はみられなかった。

結論
初期の研究目的をほぼ達することができた。

公開日・更新日

公開日
2011-05-26
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201033007C

成果

専門的・学術的観点からの成果
わが国で発見された非定型BSEの性状解析の結果、定型BSEとの違いが明らかとなった。PMCA法等の高感度検出系が開発され、実験動物で生前の髄液や血液からもプリオンが検出できるようになった。プリオンの取り込みや産生と関連する宿主因子がいくつか発見された。腸管でのプリオンの取り込みに関する成績がえられた。これらは全体で3年間に116編の論文として発表された。
臨床的観点からの成果
定型および非定型BSEの動物への伝達実験で、種々の実験動物で発症が確認され、ウシやサルでも実験動物モデルとして利用可能になりつつある。特にサルで発症がみられたことから、今後、前臨床試験のみならず、種々の目的で利用できる実験動物モデルとなろう。また、感染動物の生前の血液からプリオンが検出できたのは大変大きな成果である。

ガイドライン等の開発
特になし。
その他行政的観点からの成果
非定型BSEの性状が明らかとなったので今後のBSE対策に役立てられる。検出にはまだ時間を要するがPMCA法等は今後利用が期待できる。現在北海道で増えているエゾシカにおいてCWD検査は陰性であったが、発生動向調査をこれからも続けていく基盤ができた。

その他のインパクト
研究成果はまとめて、研究代表者が2010年2月12日に「BSEと健康被害」と題して食品衛生協会主催で平成21年度食品の安心・安全確保推進研究シンポジウムで講演し、また2011年1月18日に食肉衛生技術研修会において獣医師を対象に「BSEとvCJDの現状」と題して講演した。ほか研究分担者もいくつか講演等を行ってきた。

発表件数

原著論文(和文)
3件
原著論文(英文等)
105件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
70件
学会発表(国際学会等)
55件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計3件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Fukuda S, Hagiwara K, Yokoyama T et al.
Accumulation of L-type bovine prions in peripheral nerve tissues.
Emerg Infect Dis , 16 (7) , 1151-1154  (2010)
原著論文2
Furuoka H, Horiuchi M, Sata T et al.
Predominant involvement of the cerebellum in guinea pigs infected with bovine spongiform encephalopathy (BSE).
J Comp Pathol , 144 (4) , 269-276  (2011)
原著論文3
Ono F, Hagiwara K,Sata T et al.
Atypical L-type bovine spongiform encephalopathy (L-BSE) transmission to Cynomolgus macaques, a non-human primate.
Jpn J Infect Dis , 64 , 81-84  (2011)
原著論文4
Ono F, Hagiwara K,Sata T et al.
Experimental transmission of bovine spongiform encephalopathy (BSE) to Cynomolgus macaques, a non-human primate.
Jpn J Infect Dis , 64 , 50-54  (2011)
原著論文5
Tanaka M, Hara H, Hagiwara K et al.
An improved method for cell-to-cell transmission of infectious prion.
Biochem Biophys Res Commun , 397 , 505-508  (2010)
原著論文6
Shinkai-Ouchi F, Yamakawa Y, Hagiwara K et al.
Identification and structural analysis of C-terminally truncated collapsin response mediator protein-2 in a murine model of prion diseases.
Proteome Sci , 8 , 53-  (2010)
原著論文7
Yoshioka Y, Ishiguro N, Inoshima Y
Proteasome activity and biological properties of normal prion protein : a comparison between young and aged cattle.
J Vet Med Sci , 72 , 1583-1587  (2010)
原著論文8
Elmonir W, Inoshima Y, Ishiguro N et al.
Intron 1 mediated regulation of bovine prion protein gene expression : Role of donor splicing sites, sequences with potential enhancer and suppressor activities.
Biochem Biophys Res Commun , 397 , 706-710  (2010)
原著論文9
Sassa Y, Kataoka N, Ishiguro N et al.
Anti-PrP antibodies detected at terminal stage of prion-affected mouse.
Cell Immunol , 263 , 212-218  (2010)
原著論文10
Sassa Y, Inoshima Y, Ishiguro N
Bovine macrophage degration of scrapie and BSE PrPSc.
Vet Immunol Immunopathol , 133 , 33-39  (2010)
原著論文11
Kobayashi A, Sakuma N ,Kitamoto T et al.
Experimental verification of a traceback phenomenon in prion infection.
J Virol , 84 (7) , 3230-3238  (2010)
原著論文12
Hizume M, Kobayashi A, Kitamoto T et al.
Amino acid conditions near the GPI anchor attachment site of prion protein for the conversion and the GPI anchoring.
Biochem Biophys Res Commun , 391 (4) , 1681-1686  (2010)
原著論文13
Okada H, Sata T ,Yokoyama T et al.
Antigen Retrieval Using Sodium Hydroxide for Prion Immunohistochemistry in Bovine Spongiform Encephalopathy and Scrapie.
J Comp Pathol , 144 (4) , 251-256  (2010)
原著論文14
Atarashi R, Satoh K, Sano K et al.
Ultrasensitive human prion detection in cerebrospinal fluid by real-time quaking-induced conversion.
Nature Medicine , 17 (2) , 175-178  (2011)
原著論文15
Kimura T, Sata T, Doh-ura K et al.
GABAA receptor subunit β1 is involved in the formation of protease-resistant prion protein in prion-infected neuroblastoma cells.
FEBS Lett , 584 (6) , 1193-1198  (2010)
原著論文16
Hamanaka T, Sakasegawa Y, Doh-ura K et al.
Anti-prion activity of protein-bound polysaccharide K in prion-infected cells and animals.
Biochem Biophys Res Commun , 465 (2) , 285-290  (2011)
原著論文17
Teruya K, Nishizawa K, Doh-ura K
Semisynthesis of a protein with cholesterol at the C-terminal, targeted to the cell membrane of live cells.
Protein J , 29 (7) , 493-500  (2010)

公開日・更新日

公開日
2014-06-02
更新日
-

収支報告書

文献番号
201033007Z