労働災害の発生抑制を目指した,経済学(ゲーム理論)に基づくヒューマンエラー発生確率の定量化手法の開発とそのリスクアセスメントへの導入

文献情報

文献番号
201032021A
報告書区分
総括
研究課題名
労働災害の発生抑制を目指した,経済学(ゲーム理論)に基づくヒューマンエラー発生確率の定量化手法の開発とそのリスクアセスメントへの導入
課題番号
H22-労働・若手-007
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
牧野 良次(独立行政法人産業技術総合研究所 安全科学研究部門)
研究分担者(所属機関)
  • 和田 有司(独立行政法人産業技術総合研究所 安全科学研究部門)
  • 和田 祐典(独立行政法人産業技術総合研究所 安全科学研究部門)
  • 熊崎 美枝子(横浜国立大学大学院 環境情報研究院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
5,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成18年に施行された改正労働安全衛生法は,事業所はリスク評価を行い,必要な対策を実施する努力義務があると定めている.事業者が労働災害のリスクを定量化するには「ヒューマンエラー」の発生確率を推定することが必須となるが,その推定方法は必ずしも十分に確立されていない.そこで本研究では,労働災害による死傷者数の減少に貢献するため,経済学における最重要概念である「インセンティブ」の考え方を理論的基礎として,ヒューマンエラー発生確率の定量化手法を開発する.
研究方法
研究項目①新しい観点からの労働災害事例分析:既存の事故データベースから「ヒューマンファクター」等の検索キーワードで事故事例を抽出し,人的組織的要因およびインセンティブに注目した事故発生原因の分類整理を行った.
研究項目②ヒューマンエラー発生メカニズムの経済学的分析:非正規雇用者は短期間で辞職する等の理由から安全への配慮が低くなるインセンティブが生じ,雇用主側にも同様の理由で非正規雇用者への教育に時間や資金を割かないインセンティブが生じるという仮説を企業ミクロデータを用いて統計的に検証した.
研究項目⑥国内外の政策動向の情報整理:国際機関に所属する専門家等へのインタビューにより労働安全に関する取り組みの国際的な動向を調査した.
結果と考察
研究項目①:事故事例データベースからヒューマンエラーに関連する212件の事故事例を抽出し人的要因に着目した事故分類を行った.次年度以降の研究において「誰の」「どのような行動」に対してインセンティブ設計をすべきなのかを明らかにした.
研究項目②:ヒューマンエラー発生メカニズム分析の一例として,「非正規雇用者は正規雇用者より労災に遭いやすいか?」と題した研究を行い,労働災害において「インセンティブ」という考え方を適用することの有効性を示すことができた.
研究項目⑥:では諸外国の労働安全衛生関連法規等を調査し,各国の法律による規制が安全向上・リスク低減にどう取り組んできたかを検討した.
結論
研究項目①の労働災害事例分析から人的要因および組織要因で発生している事故の典型的パターンを整理することができた.研究項目②では労働災害において経営者や作業者にどのようなインセンティブが働いているか,一例を示すことができた.次年度以降は研究項目①で整理した複数の事故パターンごとにインセンティブ構造を明らかにし,研究項目②で実施したような検証作業を経て,対策提案につなげる.研究項目⑥については,労働安全衛生に関する諸外国の制度の違いを調査した.制度の違いが労働災害の頻度に実際にどう反映されているか分析することが次の課題である.

公開日・更新日

公開日
2011-09-06
更新日
-

収支報告書

文献番号
201032021Z