結核菌ATP測定による迅速薬剤感受性試験法の開発に関する研究

文献情報

文献番号
199700866A
報告書区分
総括
研究課題名
結核菌ATP測定による迅速薬剤感受性試験法の開発に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
山崎 利雄(国立感染症研究所)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生科学研究費補助金 先端的厚生科学研究分野 新興・再興感染症研究事業
研究開始年度
平成8(1996)年度
研究終了予定年度
-
研究費
1,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
1%小川培地を用いている現行の結核菌の薬剤感受性試験法は,時間がかかり,また,判定にも技術者の熟練を要し,人差が出やすい。さらに,判定時期を遅らせると耐性と判定され易いなどの問題がある。生きている微生物の数は,微生物のもっているAdenosine triphosphate(ATP)量を測定することにより知ることができる。近年,螢のルシフェラーゼを用いた生物発光によるATP測定キットが数社から発売され,食品製造現場や厨房などでの衛生管理等に使われている。この,生菌の指標としてのATP測定を結核菌の薬剤感受性試験に応用し,結核菌薬剤感受性試験の時間短縮,測定方法の自動化,数値化による客観的な判定が行え得る薬剤感受性試験法の確立を目的とした。
研究方法
供試菌液:結核菌 H37Rv の小川培地3週間培養菌よりMiddlebrook 7H9 液体培地にて懸濁液を作り,必用濃度に調整した。また,調整済み懸濁液を新しい培地5mlに加え,37℃で4~7日培養し,必用濃度に希釈した。さらに,-80℃に保存した菌液も用いた。ATP測定:菌液100μlに抽出試薬100μl加えてATPを抽出した。この100μlに25mMHEPES 緩衝液100μlを加え,ルシフェリン・ルシフェラーゼ(キッコーマン社)100μlを加え直ちにルミテスターK200(キッコーマン社)にて発光量(RLU)を測定した。薬剤感受性試験:Rifampicin (RFP), Isoniazid (INH), Ethambutol (EB), Streptomycin(SM), Kanamycin (KM) の5薬剤をMiddlebrook 7H9 液体培地5mlに含有させ,Middlebrook 7H9 液体培地にて結核菌 H37Rv 株の菌液を作り,その0.1mlを接種し各薬剤の使用濃度および判定日の検討を行った。薬剤含有菌液のRLU値を対照培地菌液のRLU値で割った割合(RLU ratio)が≦0.5あるいは≦0.3に到達した日を判定日とした。得られた結果を,現行法と比較検討した。
結果と考察
ATP抽出条件の検討:結核菌 H37Rv 株の菌液を用いてATP抽出液,抽出温度,抽出時間の検討をし,薬剤感受性試験に応用可能な結核菌ATP抽出条件を決定した。薬剤感受性試験法の検討:主要5薬剤について結核菌 H37Rv による接種菌量と判定可能日の検討では,MacFarland#0.5~2.5濃度の範囲内では,判定日に大差はなかった。ちなみにRFP, INH, SM,KMは培養5日で,EBは7日以内に判定が可能であった。
生菌の指標として生物発光を用いたATP測定法により,結核菌の薬剤感受性試験法に応用可能であることがわかった。しかし,今回用いた結核菌は,研究室にて継代された参照株を使っているので,発育速度が遅い臨床分離株を用いた場合の判定基準作りが必要がある。また,用いた薬剤濃度は,完全に参照株を抑制する濃度であるので,株数を増やして薬剤感受性試験に最も適した濃度を決定する必要がある。また,バイオハザード対策のとられた測定装置の開発も含めて今後の課題である。この方法は,菌接種後7日以内に判定可能で、ルミノメーターにより、RLUを測定しRLU ratioを計算し判定するので判定に個人差がでない。さらに,薬剤感受性試験検査の自動化にもつながる有用な方法と考える。
結論
生物発光を用いたATP測定法を応用して結核菌の迅速薬剤感受性試験を行うことが可能である。

公開日・更新日

公開日
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更新日
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研究報告書(紙媒体)