林業従事者における蜂刺され症例の研究

文献情報

文献番号
201032019A
報告書区分
総括
研究課題名
林業従事者における蜂刺され症例の研究
課題番号
H21-労働・若手-007
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
平田 博国(獨協医科大学 内科学(呼吸器・アレルギー))
研究分担者(所属機関)
  • 福島 康次(獨協医科大学 内科学(呼吸器・アレルギー))
  • 杉山 公美弥(獨協医科大学 内科学(呼吸器・アレルギー))
  • 林 ゆめ子(獨協医科大学 内科学(呼吸器・アレルギー))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
1,579,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
林野事業に関連する職員におけるハチアレルギー体質者の頻度は不明である。また、経過から明らかにハチアレルギー体質と考えられる人の中で、スズメバチまたはアシナガバチ特異的IgE抗体陰性者が多く存在する。本研究では、山間部で作業することの多い森林組合員、都市部から山間部で作業することの多い電気設備事業従事者、対照としてハチ刺傷を経験することが少ないこれらの事務職員に分類し、3群間におけるハチアレルギー体質者の頻度を明らかにする。同時に、血清スズメバチ特異的IgE抗体陰性者におけるハチアレルギー体質者を決定する新たな因子として、スズメバチ特異的IgG4抗体の測定意義についても検討した。
研究方法
民間森林組合員999名、電気設備事業従事者354名、事務職員365名に対し、ハチ刺傷におけるアンケート調査と血清スズメバチ特異的IgE抗体を測定した。また、ハチ刺傷歴のある409名に対し、スズメバチ特異的IgG4抗体を測定した。
結果と考察
民間森林組合員の210名(23.0%)、電気設備事業従事者の51名(17.4%)、事務職員39名(13.2%)に全身症状出現歴を認めた。また、スズメバチ特異的IgE抗体クラス2以上の陽性者は、森林組合員で424名(42.4%)、電気設備事業従事者で103名(29.0%)、事務職員で55名(15.1%)に認められた。特異的IgG4値は、刺傷経験数が多い者ほど有意に高値を示した。しかし、IgG4値とハチ刺傷における全身症状の重症度には、有意な相関は認められなかった。更に、特異的IgG4値とIgE値との関係はIgG4陽性IgE陽性204名(49.9%)、IgG4陰性IgE陰性73名(17.8%)、IgG4陰性IgE陽性55名(13.4%)、IgG4陽性IgE陰性77名(18.8%)だった。今回の調査から、山間部で作業することの多い森林組合員の40%以上がハチアレルギー体質者であり、事務職員に比べ約3倍も多く存在することが明らかになった。また、経過からハチアレルギー体質者と考えられるが、特異的IgE抗体が陰性の場合、特異的IgG4抗体を測定することで、その診断に役立つ可能性が考えられた。
結論
林野事業に関連した職員はハチアレルギー体質者が非常に多く存在し、刺傷によりアナフィラキシーショックを起こす危険性が高い。また、ハチ特異的IgG4抗体の測定もアレルギーの診断に有用であることが考えられた。

公開日・更新日

公開日
2011-09-06
更新日
-

文献情報

文献番号
201032019B
報告書区分
総合
研究課題名
林業従事者における蜂刺され症例の研究
課題番号
H21-労働・若手-007
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
平田 博国(獨協医科大学 内科学(呼吸器・アレルギー))
研究分担者(所属機関)
  • 福島 康次(獨協医科大学 内科学(呼吸器・アレルギー) )
  • 杉山 公美弥(獨協医科大学 内科学(呼吸器・アレルギー) )
  • 林 ゆめ子(獨協医科大学 内科学(呼吸器・アレルギー) )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ハチ刺傷による死亡者数は毎年20-30名と報告されている。死亡原因の多くは、ハチ毒に対するIgE抗体を介したアナフィラキシーショックである。一般にハチ刺傷後、約20%の人が特異的IgE抗体を産生し、再刺傷によりアレルギー反応を起こすと考えられている。ハチと同じ生活環境で作業する林野事業に関連する職員において、ハチアレルギー体質者が多く存在することが予想されるが、その頻度は不明である。また、ハチ刺傷によるアナフィラキシーショックの対策として、携帯用アドレナリン自己注射製剤がある。本研究では、林野事業に関連した職員に対するハチアレルギー体質と、携帯用アドレナリン自己注射製剤の処方や使用状況について調査・検討した。
研究方法
2009年6月-9月の間、山間部で作業することの多い森林組合員999名、都市部から山間部で作業することの多い電気設備事業従事者354名、対照としてこれらの事務職員365名 計1718名に対し、ハチ刺傷によるアンケート調査と、血清アシナガバチおよびスズメバチ特異的IgE抗体を測定した。
結果と考察
森林組合員の210名(23.0%)、電気設備事業従事者の51名(17.4%)、事務職員39名(13.2%)に全身症状出現歴を認めた。アシナガバチおよびスズメバチ特異的IgE抗体クラス2以上の陽性者は、其々民間森林組合員で413名(41.5%)と424名(42.4%)、電気設備事業従事者で111名(31.3%)と103名(29.0%)、事務職員で65名(18.1%)と55名(15.1%)に認められた。また、携帯用アドレナリン自己注射製剤を配布されたことのある者は172名(11.4%)で、その使用経験者は僅か7名だった。以上より、林野事業に関連した職員の中で、森林組合員や電気設備事業従事者の多くは、ハチ刺傷によるアナフィラキシーショックを起こす危険性が非常に高い。しかしその対策として、唯一の緊急治療薬である携帯用アドレナリン自己注射製剤が、殆どのハチアレルギー体質者に対し、配布・使用されてないことが明らかになった。
結論
ハチ刺傷による死亡者を無くすためには、携帯用アドレナリン自己注射製剤の配布を徹底・指導する必要性がある。このため、各民間森林組合や電気設備事業の代表者は、所轄の産業医または医療機関を指定し、年に1度程度従業員を受診させることが、必要であると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2011-09-06
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2012-03-21
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201032019C

成果

専門的・学術的観点からの成果
Antigen5はハチ毒の主要componentであり、スズメバチアレルギー患者の92.6%に感作されている(Allergol Int,2015)。更に、臨床上スズメバチアレルギーと診断された患者に対し、従来のImmunoCap法とAntigen5を加えた改良法で比較検討した。スズメバチ特異的IgE(≧Class1, N=41)陽性者は改良法で92.7%、従来法で80.5%だった。改良法はハチ特異的IgEの検出感度を向上させることが示唆された(Allergol Int, 2015.)。
臨床的観点からの成果
臨床上、ハチ毒アレルギーが強く疑われる患者の中で、従来のImmunoCAP法を用いてハチ特異的IgE抗体を測定しても、検出されない(測定感度以下)ことがある。このため、改良ImmunnoCAP法を用いて測定したところ、従来法に比べハチ特異的IgE抗体の検出率が増加した。このことから、改良ImmunoCAP法を用いた測定方法は、ハチ毒アレルギーの診断向上に、役立つ可能性が示唆された。
ガイドライン等の開発
我が国におけるアナフィラキシーのガイドラインが未だない。このため、日本アレルギー学会において、平成25年2月15日にAnaphylaxis対策特別委員会を設置し、研究代表者はアナフィラキシー(ハチ毒)に関するガイドラインの作成委員に選出された。平成26年度には、日本アレルギー学会が監修し、Anaphylaxis対策特別委員会により、アナフィラキシーガイドラインを編集(本研究結果も記載)、発行(2014年11月1日)された。
その他行政的観点からの成果
特記事項なし。
その他のインパクト
特記事項なし。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
2件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
2件
①アレルギー疾患をもつ従業員と職業環境; 蜂刺し. 第45回日本職業・環境アレルギー学会 総会・学術大会。②ハチ毒アレルギーにおける対策について. 産業衛生学会学術総会(ランチョンセミナー).
学会発表(国際学会等)
3件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
平成27年2月6日、林業・木材製造業労働災害防止協会栃木支部に対し、「蜂刺され症例の研究成果と今後の蜂刺されの予防と対策」という演題でセミナーを行った。

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2023-05-25
更新日
-

収支報告書

文献番号
201032019Z